アルトワークスの復活はあるか!? スズキの回答はいかに。鍵はライバル「ミライースGR SPORT」の本気度
- 筆者: 岡本 幸一郎
アルトワークスの復活は実現するのか? モータージャーナリスト岡本 幸一郎氏が、スズキ広報への取材と、鍵を握るライバル「ミライースGR SPORT」の動向から、ファン待望の復活シナリオを徹底分析。令和の軽ハッチ頂上決戦の行方に迫ります。
絶大な支持を集めた「軽自動車の異端児」
軽自動車の世界に、時として現れ時代を熱狂させる「異端児」が存在する。アルトワークスは、その代表格の一つとして、販売面でも人気を博してきた。あの刺激的な走りの記憶を持つファンにとって、その名は特別な響きを持つはずだ。
初代アルトワークスが登場したのは1987年のこと。圧倒的な動力性能とアグレッシブなルックスは世に大きな衝撃を与え、走りを求めるユーザーから絶大な支持を集めた。
その成功を目の当たりにしたライバルメーカーも黙ってはおらず、すぐさま対抗馬を市場に投入。ダイハツ ミラTR-XXや三菱 ミニカ ダンガン、スバル ヴィヴィオなど軽自動車界では一気に速さ比べが激化した。
しかし、その熱狂もやがて落ち着きを見せ、4世代続いたアルトワークスは2000年、惜しまれつつも一度その歴史に幕を下ろすこととなる。
ファンの熱望に応えた「本物のワークス」復活劇とは
それから14年以上のブランクを経た2015年3月、スズキは久々となるターボエンジン搭載モデル「アルト ターボRS」を発売。「ワークスの再来か」と多くのファンが色めき立った。
しかし、そこにファンが渇望した3ペダルのMTはなく、トランスミッションはセミATの「AGS(オートギアシフト)」のみの設定。この一点から、ターボRSの発売直後より、3ペダルのMT車と本当の「ワークス」の復活を望む声が、メーカーの予想を上回る勢いで噴出した。
その熱い要望に応えるべく、スズキは「ワークス」の名を冠するにふさわしいモデルの開発に着手。すでに「ターボRS」という優れたベースが存在したことで開発はスピーディに進み、同年秋の東京モーターショーで5代目となる新型アルトワークスがベールを脱ぐと、会場は再び熱狂の渦に包まれた。
5代目アルトワークスが愛された理由
満を持して登場した5代目アルトワークスは、ファンの期待を真正面から受け止めたモデルだった。
熱望された5速MTがAGSと並んでラインアップされ、駆動方式も2WDと4WDから選択可能。さらに、軽自動車のタイトな室内に合わせて専用設計されたRECARO(レカロ)製フロントシートが標準装備されるというニュースは、多くのクルマ好きの心を鷲掴みにした。
レースシーンでも絶大な信頼を誇る名門ブランドのRECAROシートが与えられたことは、このクルマが「本気」であることの何よりの証だった。
走りのほうも期待に応えるべく突き詰められていて、小さくても本格的な仕上がりだった。専用チューニングが施されたエンジンはレスポンスが鋭く、5速MTのシフトフィールは「カチッ」とした節度感に満ちていた。少し硬めに引き締められたスパルタンな足回りも、「これぞワークス」と思わせるに十分な説得力があった。
これだけの専用装備とチューニングを施しながら、価格はターボRSの約20万円高に抑えられたこともあり人気も上々。2021年12月の現行アルト(9代目)の発売により生産終了を迎えるまでに、販売台数はターボRSと合わせて累計4万台以上ともいわれている。この種の趣味性の高いモデルとしては異例のヒットだった。
アルトワークス次期型はどうなる? スズキ広報の回答
そんなアルトワークスが絶版となってから、まもなく4年。スズキ広報に次期型の可能性を問い合わせたところ、残念ながら「現時点でニューモデルを出す予定はない」との回答だった。そういえば、兄貴分であるスイフトスポーツの新型もまだその姿を現していない。
現行の9代目アルトは、人々の暮らしに寄り添うという原点に立ち返り、何よりも環境性能を最優先に開発されたモデルだ。事実、マイルドハイブリッドを主軸としたパワートレインとCVTの組み合わせにより、ガソリン・ハイブリッド軽自動車クラスでトップの低燃費(2025年6月の一部仕様変更でWLTCモード燃費28.2km/L)を実現している。
また、先代アルトでは多様なニーズを考慮してCVT、AGS、MTが用意されていたが、現行アルトはマイルドハイブリッドを主軸に組み立てられている。環境性能を最優先してエンジンやトランスミッションを検討した結果、「CVT」一本という選択に至った。それゆえアルトワークスのようなスポーツモデルは現時点では考えていないそうだ。
ただし、スズキ広報によると「他社の動向や自動車業界を取り巻く環境は随時変化するので、将来的にはどうなるかはわからない」とのことで、ファンの期待を完全に断ち切るものではなかった。
ダイハツから放たれた新たなる刺客「ミライースGR SPORT」
そんな中に、気になるクルマが出現した。ダイハツ「ミライースGR SPORT」だ。ベースモデルにはないターボエンジンと5速MTを搭載した車両で、すでに全日本ラリーのオープンクラスにワークス体制で参戦している。さらに2025年1月の「東京オートサロン2025」では、市販化を前提としたコンセプトカーが公開され話題となったのを覚えている人は多いことだろう。
カナードやリップスポイラーなどのエアロパーツを備えた専用バンパーや、16インチBBS製鍛造ホイールと高性能タイヤの「ポテンザRE050A」を履き、車内はRECARO製スポーツシートやGR仕様のトリムなど、多数の専用アイテムが備わりながら、市販化される際には200万円をだいぶ下回る価格で、2025年内の秋頃に発売されると予想されている。
ベーシックな軽自動車をベースに、走りのために徹底的に磨き上げる。このコンセプトは、まさしくアルトワークスと同じ思想だ。
小さくて軽い車体でターボエンジンにMTとなれば、乗って楽しくないわけがない。もとが普通だからこそ、より特別感を味わうこともできるし、小排気量で限界の低い軽自動車だからこそ、すべてを手の内で操れる感覚を味わうことだってできる。そこには高価で大柄な高性能車とはまったく違ったドライビングプレジャーがある。
スズキよ、奮い立て! 令和の「軽ハッチ頂上決戦」はあるか!?
維持費が安く、誰もが気軽に楽しめる軽自動車ゆえに、こうした尖ったモデルの存在意義は大きい。ミライースGR SPORTが実際に発売されれば、それなりに人気を博すのは間違いない。その時、軽ホットハッチの本家であるスズキが沈黙を続ければ、その市場をすべてライバルに明け渡すことになる。
「本家のスズキがアルトワークスを出さなくてどうするんだ!? 現に10年前だってスズキはユーザーの声に応えようとワークスを出してくれたじゃないか!」と、いちファンとしては鼻息を荒くしながら期待して待つことにしたい。
そしていつの日か、2台が揃い踏みとなり、かつて世界のラリーシーンを舞台に激闘を繰り広げた、三菱 ランサーエボリューション vs スバル インプレッサWRXのように、互いを高め合いながらガチンコの勝負を繰り広げる日が来ることを、願ってやまない。
愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!
-
一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?
これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。
-
一括査定は本当に高く売れるの?
これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は最短3時間後、最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。

















