本当に雪道は走れるのか? オールシーズンタイヤ ミシュラン クロスクライメート 試乗レビュー【冬編】

  • 筆者: 松田 タクヤ
  • カメラマン:松田 タクヤ/土屋 勇人

「雪も走れる夏タイヤ」ミシュラン クロスクライメートを本格的な雪道で試す!

毎年冬の時期になると非降雪地帯の自動車ユーザーを悩ませる問題のひとつとして「冬用タイヤを用意するか」が挙げられるのではないだろうか。

民間調査会社である「GfKジャパン」の調査によると、非降雪地帯の冬用タイヤ保有率は40%と言う結果が出ている。

非降雪地帯でこれほど冬用タイヤが所有されていない背景としては、「雪がほとんど降らないから」「そもそも置く場所が無いから」等が挙げられるが、いざ非降雪地帯で大雪が降ってしまうと、量販店から冬用タイヤの在庫が無くなってしまう事が事実として起きている。このことから、非降雪地帯の自動車ユーザーでも冬用タイヤの必要性は薄々と感じているという事になる。

ドライ・ウェット路面で夏タイヤと同等の走行性能を有し、雪道での走行も十分可能な夏タイヤがあったらどんなに素敵な事か…。と誰もが思うところだろう。

そんな要望に答える為に開発されたタイヤが、今回試乗テストを行う「雪も走れる夏タイヤ」”MICHELIN CROSS CLIMATE(ミシュラン クロスクライメート)”だ。

>>ミシュラン クロスクライメートのオフィシャルサイトはコチラ

夏タイヤとしての性能は試乗会で実証済み!では、肝心の冬性能は…?

「雪も走れる夏タイヤ」のキャッチフレーズが印象的なミシュランのクロスクライメートは、ミシュランではあくまでも夏タイヤとしてカテゴライズされているタイヤだ。しかし、一般的にはオールシーズンタイヤのジャンルに分類されるだろう。

タイヤの側面にはM+Sとスリーピークマウンテン・スノーフレークマーク(3PMSF)が付いており、欧州では冬用タイヤとして正式に認められたタイヤであることが確認できる。

2018年から一部量販店で先行販売されていたクロスクライメートだが、この度、2019年2月5日からついに全国販売される運びとなった。

全国販売の前に開催されたテストコースの試乗会では、紛れもなく夏タイヤ同等の性能を有していることが実証されており、クロスクライメートの実力の高さが多くの報道陣に知れ渡る事となった。その試乗会の模様は以下のリンクから確認してみてほしい。

>>冬でも履けるミシュランの夏タイヤ『クロスクライメート』をクローズドコースで試乗テスト!

リンク内の記事を読んでいただければ分かると思うが、クロスクライメートの夏タイヤとしての性能は十分。それどころか、多くの人の期待をいい意味で裏切るほどの夏タイヤ性能を実現していることが良く分かる。

「夏タイヤとしての性能の高さは良く分かった、では肝心の冬性能はどうか?」今回はこの疑問を解決するべく、全国販売より以前から履いていたクロスクライメートを装着したクルマで、筆者が冬性能のテストを行ってきた。

冬性能のテストを行ったのは、スキーシーズン真っただ中の長野県白馬の一般道。さて、「雪も走れる夏タイヤ」のキャッチフレーズは本当だったのか…?

長野県白馬のゲレンデ周辺は、夏タイヤでは走行不可能な雪道

筆者はクロスクライメート+を装着したレガシィツーリングワゴンで既に3000キロほどを走行しているが、本格的な雪道へ持ち込んでその性能を試すのは今回が初となる。

テストの日は東京を出発し、長野県にある栂池高原スキー場を目指す。関越自動車道から上信越道へと進んでいき、高速を降りた後は一般道をひた進む。ちなみに、クロスクライメートは見た目のゴツさとうらはらに、タイヤのノイズがとても静かで乗り心地も良いことを付け加えておく。

長野白馬有料道路を超えると、辺りに雪景色が広がってくる。ついに雪国へ来たんだな、と気分も高まるが、このタイヤで大丈夫かな? という思いも次第に強くなってくる。

栂池高原スキー場の辺りまで来ると、道路の周辺はもちろん路面までびっしりと雪に覆われていた。試しに車を降りて路面を確認してみると、靴がツルツルと滑って上手に歩けないほどの路面であることが確認できた。

斜度9%のハーフアイスの登り坂でもグイグイ登るクロスクライメート!

そんな路面状況で、クロスクライメートを履いたクルマは安全に走ることができたのか。結論から言ってしまうと、「全く問題なかった」と言える。

停止状態からの加速は路面を蹴るようなグリップを感じ、ホイールスピンをしてしまう感覚がまるで無い。走り出したあと、コーナーで一定の速度からステアリングを切り込んでいっても、しっかりとしたステアリングインフォメーションを感じながら狙った通りのラインをトレースして走ることができる。そこからさらに拳ひとつ分ステアリングを切り足しても、ヨーがしっかりと追従してくるのだ。

この日の宿泊先はゲレンデの中腹あたりにあるロッジ。ここに行くまでの坂が斜度9%の登り坂になっていて(iPhoneのアプリで計測)、路面もゲレンデ周辺と違いハーフアイスの状況だった。

「さすがにここは登れないか?」と思いながら恐る恐る登り坂に突入したものの、驚くほどタイヤが”滑らない”ことをすぐに実感した。滑らないとはいえ、かなりギリギリのところでグリップしているのでは?と思い、2速だったギアを1速に落として、敢えてアクセルを強く踏み込んで加給圧を0.4kpaほどかけてみた。

しかし、滑らない…。もちろん滑らないことは大いに良いことなのだが、クロスクライメートがハーフアイスの登り坂でここまでグリップするとは、まるで想定外だったのでビックリしてしまった。

下り坂でもしっかりとしたステアリングフィールとブレーキ性能を発揮

上まで登りきった後は、同じ道を下ってブレーキング性能を試してみることにした。ギアを2速に入れ、エンジンブレーキを使いながら軽くブレーキペダルを踏んで坂を下っていく。

時速15キロほどで坂を下ってみるが、ステアリングの感覚が無くなる事も無く、ブレーキをかけても制動Gを感じるほどにしっかりと止まる。停止した後はもう一度速度を上げ、今度はあえて滑るように強めのブレーキをかけてみた。

すると、時おりABSが作動するものの、「ツーッと」滑る感覚も無くクルマが止まってくれた。もう一度走り出し、ABSが効いた状態から少しだけ踏力を抜くとすぐABSが収まる。クルマが横を向いてしまうこともなくきちんと停止するのだ。

通常の夏タイヤであれば、まず間違いなく登れない・止まれないはずのハーフアイスの坂。ミシュランでは、クロスクライメートにアイス性能は無いと謳っているが、このテストで予想だにしないアイス性能を実証することができた。

この日のテストはここまでにして、筆者は宿で休むことにした。

積雪40センチの本格的な圧雪路面!クロスクライメートはどこまで走れる?

翌日の朝、起きて宿の外に出てみると、クルマが雪に埋まっていた。この日一晩での積雪は40センチとなっており、クルマの屋根はもちろんタイヤの周りにもこんもりと雪が積もっている。

クルマに乗り込み、ドアを開けるとフロアのスレスレまで雪が積もっている。「これはさすがにマズイか? 駐車場から出られるのだろうか…」

そんなことを思いながらエンジンをかけ、ギアをリバースに入れてクラッチを繋ぐ。すると、クルマは動かない。しかし、タイヤがスリップして動かないのではなく、タイヤの後ろに積もった厚い雪が邪魔をして動かないのだ。

少し回転数を上げ、強めのクラッチワークでクルマを動かすと、すんなりと駐車場を出る事ができた。駐車場を出てクルマを降りてみると、タイヤが通った後の路面にはクロスクライメートのV字パターンの痕がキレイに刻まれていた。

雪を踏み固め、固まった雪を引っかくようにしてトラクション効果を得る

クルマに装着されているクロスクライメートのサイズは、215/45R17というやや扁平ぎみのサイズだ。タイヤが完全に隠れてしまっているような積雪状況だが、こんな状態でもクルマはグイグイと進んでくれる。

圧雪路を実際にドライブしてみると、タイヤに若干の抵抗を感じながらもクルマが進み、雪をギュッと踏み固めていることがドライバーに良く伝わってくる。

ふわふわの雪をタイヤが踏み固め、V字の溝が固まった雪を引っかくようにして強力なトラクションを発生させているのだと感じた。

昨日下った坂道はすっかり圧雪路になっているが、ブレーキの効きは昨日テストしたハーフアイスの路面以上に良く効く。その効き具合はスタッドレスタイヤと同等と感じるほどだ。

このことから、クロスクライメートは本格的な圧雪路面に対してもバツグンの走行性能を有していることが分かった。

クロスクライメートのキャッチフレーズ「雪も走れる夏タイヤ」はホンモノだ!

今回の雪上テストは終始常識的な速度で走行していたが、走った全ての路面に於いて「想像を遥かに超える雪上走行性能」を実感することができた。

筆者も実際の雪道を走るまではクロスクライメートの性能に半信半疑だったが、今では自信を持ってこのタイヤをオススメできる。

ちなみにクロスクライメートはハーフアイスの路面では十分走行できたが、アイス路面を走行する方や本格的な降雪地帯に住んでいる方は、きちんとスタッドレスタイヤを装着していただきたい。

ミシュラン クロスクライメートは、殆ど雪が降らない首都圏に住んでいるが、突然の雪でも安心してクルマに乗りたい方。マンションやアパートに住んでいて、スタッドレスタイヤを置く場所を用意するのが困難な方。オールシーズンタイヤは気になるが、夏タイヤの性能は犠牲にしたくないと思っている方などにオススメだ。

さらにクロスクライメートは、ミシュランの夏タイヤであるエナジーセーバー+よりもロングライフという特徴も持っているから、おサイフにも優しいタイヤだと言える。

「オールシーズンタイヤなんて、リンスインシャンプーみたいに中途半端なものなんでしょ」こんな風に思っている方の印象を根本から覆す夏タイヤ、ミシュラン クロスクライメート。

夏タイヤの履き替えシーズンとなるこれから、あなたのタイヤ選びの選択肢の一つとして、ミシュラン クロスクライメートを候補に入れるのは間違いではなさそうだ。

[Text:松田 タクヤ Photo:松田 タクヤ/土屋 勇人]

>>【夏編】夏タイヤ同等の性能は本当か? オールシーズンタイヤ ミシュラン クロスクライメート試乗レビュー

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ミシュラン クロスクライメートを夏タイヤと性能比較

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筆者松田 タクヤ
MOTA編集部
監修者MOTA編集部

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