スバル STIコンプリートカー「WRX STI tS TYPE RA」[300台限定] 試乗レポート/マリオ高野(3/4)

  • 筆者: マリオ 高野
  • カメラマン:オートックワン編集部・スバルテクニカインターナショナル[STI]
スバル STIコンプリートカー「WRX STI tS TYPE RA」[300台限定] 試乗レポート/マリオ高野
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WRCカーと同等! 11対1の超クイックステアリングギアボックスを採用

STI(スバルテクニカインターナショナル) 商品開発部 マーケティンググループ 担当部長 森 宏志さんスバル STIコンプリートカー「WRX STI tS TYPE RA」開発メンバーとマリオ高野氏

この、満を持して採用された飛び道具のような「11対1のクイックステアリングギヤボックス」は、実はかなり以前から温められてきたアイデアで、WRCのワークスカーなどでも同じ原理が使われていたようです。

今回の「WRX STI tS TYPE RA」の開発を取りまとめたSTI(スバルテクニカインターナショナル)社の森 宏志氏は、2012年にSTIに出向する前は富士重工業でエンジニアとして活躍。現行型WRX STIの開発PGMを務めた人ですが、大量生産車の製造メーカーでは出来なかったこと、現行型WRX STIの開発でやり残したことをやるためにSTIへ移籍されました。11対1のクイックステアリングギヤボックスを活かし切るシャシー造りは、現状ではSTIコンプリートカーのような手造りの小数生産車でしか実現できないからです。

ただクイックにすりゃあいいってもんじゃあない

スバル STIコンプリートカー「WRX STI tS TYPE RA」試乗レポート2

ステアリングのギア比がクイック化されているといっても、前輪の切れ角度そのものが大きくなっているのではなく、たとえば小径のステアリングに換えることでもギア比だけは同じ効果が得られますが、それだけで鋭利な操舵レスポンスが実現するワケではありません。

わずかなステアリング操作で早く前輪の舵角が増すというのは急ハンドルを切ることと同じなので、普通なら挙動を乱す要因となってしまうもの。前輪で発生したコーナリングフォースが、車体のフレームを介して後輪に伝わる際に車体がよじれると伝達が遅くなり、チグハグな挙動を誘発してします。かといって車体をガチガチの岩のように硬くしてしまうと、逆に車体ヒステリシス(ねじり変形時の相位遅れ)が増して動きが唐突になり、ノンリニアで扱いにくいクルマになってしまうという問題が生じます。

答えは「強くてしなやかなボディ」にあり

スバル STIコンプリートカー「WRX STI tS TYPE RA」

これを解決するのがSTIが得意とする「より強く固めるべき所と、いなす所のバランスを高めた車体造り」。ライン生産から上がったクルマを一台ずつ個体差の調整をしながらフレキシブルパーツ類を装着することなどで実現した「強くてしなやかなボディ」により、11対1の市販車ではありえないクイックなステアリングギア比を活かすことができるのです。

今回の「WRX STI tS TYPE RA」では後輪の接地性を瞬時に高めるため、従来はフロント部分にしか使われなかった「フレキシブルドロースティフナー」をリヤ部分にも追加。サイドフレームとフロント部分から伸びたフレームとの間にテンションをかけることで、前輪から伝わる力を早く、かつリニアに伝えて応答遅れを解消したということでありました。

スバル STIコンプリートカー「WRX STI tS TYPE RA」試乗レポート3

STIでは車体全体をシャシーとして考えているため、ベース車のスペックCに対して、ダンパーの減衰力やスプリングレートについてもある部分は高め、またある部分はしなやかにする方向でセッティング。

バネレートの例を上げると、フロントはより高く、リヤは少し下げ気味に。ダンパーはベース車は伸び側が強めなので、伸び側を少し落として内輪を活かしやすいようにしたということです。ニュルブルクリンクをはじめ、国内外のあらゆる路面で入念な走行テストを行い、クルマ全体がサスペンションとして機能するように仕立てられました。

[次ページへ続く]

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マリオ 高野
筆者マリオ 高野

1973年大阪生まれ。免許取得後にクルマの楽しさに目覚め、ヴィヴィオとインプレッサWRXを立て続けに新車で購入。弱冠ハタチでクルマローン地獄に陥るも、クルマへの愛情や関心は深まるばかりとなり、ホンダの新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、ダイハツ期間工(アンダーボディ組立て)などを経験。2001年に自動車雑誌の編集部員を目指し上京。新車情報誌やアメ車雑誌の編集部員を経てフリーライターとなる。編集プロダクション「フォッケウルフ」での階級は「二等兵」。記事一覧を見る

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