2021年は“自動運転”元年! 実用化を支える最新センサー技術から見えてきたクルマの近未来とは

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2021年春、ホンダが世界初となる自動運転技術を搭載した市販車を遂に発売する。こうした自動運転の実現に欠かせないのが、センサーによる制御技術だ。しかしひと言でセンサーといっても、その用途や種類は様々。自動車の先端技術に精通するジャーナリストの会田 肇氏が、2021年の最新センサー事情から見えてきたクルマの近未来について、詳しくレポートする。

目次[開く][閉じる]
  1. 自動運転技術に必要なセンサーは大きく分けて5種類
  2. 低コスト&小型が進む自動運転の“カナメ”LiDAR(ライダー)
  3. 自動運転の実現にはドライバーの監視も重要

自動運転技術に必要なセンサーは大きく分けて5種類

クルマはもともと多くのセンサーによって制御されてきたが、ここへ来て自動運転システムの実現へ向けたADAS(先進運転支援システム)系のセンサーも加わり、さらに多くのセンサーが搭載されるようになった。ここではそのADAS系センサーでどんなことができるのか、さらにはそのセンサーが今後どんなことをもたらしてくれるのかをレポートしたい。

ADAS(先進運転支援システム)で使われるセンサーとして代表的なものは、「カメラ」「ミリ波レーダー」「準ミリ波レーダー」「超音波センサー」「LiDAR(ライダー)」の5つだ。ADAS普及初期に使われた「赤外線レーザー」は低コストで搭載できる身近なADASとして一時期普及したが、認識できる距離が短いことから作動速度域が低く、今後ADASでは使われなくなる方向にある。

対象物を映像で認識する“カメラ”

これら各センサーにはぞれぞれ得意分野があり、たとえば「カメラ」は撮影した映像から対象物を判別して運転者に警告を発したり、車両を制御するのに役立てられる。判別対象としているのは車両をはじめ、白線、交通標識、歩行者、障害物などで、高い解像度で認識できることを最大の特徴とする。一方で、カメラは人間の眼のように、一定の明るさががあって初めて判別できる。つまり、人間が認識できないような条件下では基本的に判別は難しくなる弱点も持っているのだ。

また、カメラシステムには単眼カメラとステレオカメラがあり、一部でソフトウェアによって単眼でも距離を測れるものもあるが、距離を高精度に測れるのはステレオカメラの方となる。ただ、ステレオカメラでも2つのカメラの幅は車種によって様々で、一概に言えないのかもしれないが、遠方までの測距では幅が広い方が優位となるようだ。

遠くの対象物や悪天候にも強い“ミリ波レーダー/準ミリ波レーダー”

次に「ミリ波レーダー」と「準ミリ波レーダー」について。“ミリ波”はその名の通り、波長がmm単位となる30~300GHz帯の電波を指し、対象物にミリ波を照射してセンシングする(距離を測る)のがミリ波レーダーだ。車載用として使われるのは75GHzと79GHzで、いずれも直進性が強いために遠くまで届きやすく、霧や雨などの影響を受けにくいという特徴を持つ。しかも、波長が短いミリ波だけにアンテナを小さく設計でき、小型化にも有利だ。

ただ、周波数帯を高くしたことで解像度はそれなりに高くはなったものの、それでも対象物の種類を判別できるまでには至らず、特に路上のペイントを判別するのは不可能。そこでカメラと組み合わせ、それぞれの特徴を補完し合いながら使うのが一般的となっている。また、24GHz帯の周波数帯を使うのが「準ミリ波レーダー」だ。車両周辺の物体検知に使われ、たとえば左右のリアバンパー付近に取り付けてドライバーの死角となる斜め後方の検知に役立っている。

すぐ近くの死角の対象物を検知する“超音波センサー”

「超音波センサー」はいわゆる“ソナー”のことで、超音波の反射によって戻ってくるまでの時間を測定して計算することで距離を測る。測定距離は2m前後と短いため、主な用途は車庫入れあるいは駐車の支援での障害物検知が中心となる。音声と連動させておおよその距離をガイドすることも可能だ。また、近年は超音波センサーの検知エリアを広げる技術も進み始めており、それが実現すればドライバーの死角を低コストでサポートできるようになると期待されている。

低コスト&小型が進む自動運転の“カナメ”LiDAR(ライダー)

自動運転の実現へ向け、その能力の高さから期待値が高いのが「LiDAR(ライダー)」。周囲に光を照射して反射光を検出することで、対象物との距離や形状を3次元で認識できるセンシングシステムだ。光源には近赤外線レーザーを使い、遠方から周辺にある物体を一括して検出できる特徴を持つ。これこそLiDARがレベル3以上の自動運転システムに最適なセンサーとされる大きな理由だ。

普及が期待されるMEMS型LiDARとは

ただ、このセンサーは当初、機械的にスキャニングする機構を採用していたこともあって生産性が低く、価格は極めて高価だった。アウディ A8には仏Valeo(ヴァレオ)社製が搭載されて話題になったが、この価格が災いして市販車に広く搭載されるのは一部車両に限られそうだ。代わって今後搭載が期待されているLiDARは、MEMSミラー(電磁式ミラー)でレーザー光を走査する方式。半導体のシリコン基板・ガラス基板・有機材料などにスキャン機能など機械要素部品をひとまとめにしたデバイスとなっている。

現状でこそMEMS型は、機械式に比べて解像度で見劣りすると言われるが、その弱点も着実に解決される方向にあるようだ。すでにBMWが2021年に発売を予定しているiNEXTには、イスラエルのInnoviz Technologies(イノヴィズテクノロジーズ)社製が開発したMEMS型を搭載する予定。LiDARの老舗である米Velodyne Lidar(ベロダインライダー)社も、MEMS型の特徴を活かしたコンパクトかつ価格を100ドルに抑えたデバイスを用意する。日本勢ではパイオニアやソニーなどこのMEMS型の量産を目指しており、この普及が進むことでLiDARのコストは大幅に下がると期待されている。

自動運転レベル3を実現した新型レジェンドにもLiDARを搭載

折しも2021年春頃までに発売されるホンダ 新型レジェンドが、自動運転レベル3の型式認定を世界で初めて取得した。国土交通省の資料によると、新型レジェンドにはLiDARを前後に搭載することが明らかになっている。このLiDARがどのタイプなのか現時点では不明だが、この後にはレベル3に対応した新型車が相次いで登場することが発表されており、それに伴ってLiDARの価格低下が進んでいくのは確実と見ていいだろう。

自動運転の実現にはドライバーの監視も重要

プロパイロット2.0やアイサイトXはドライバーの視線を監視

そして、自動運転のレベル3で新たに搭載されるのが「運転車監視システム」だ。レベル3ではシステムが対応できない状態に陥れば直ちにドライバーが運転を引き継がなければならない。つまり、ドライバーが運転に関わっていない状態でも、いつでも運転できる状態かどうかを監視する必要がある。そのために使われるセンサーが赤外線カメラだ。赤外線を照射するので昼夜を問わず監視が可能という特徴を持つ。何を監視するかは、ソフトウェアの問題となるが、たとえばプロパイロット2.0を搭載したスカイラインや、アイサイトXを搭載したレヴォーグではドライバーの視線監視を司っている。

無くならない幼児置き去りもセンサーで監視

もう一つセンサーが活躍する新たな機能とされているのが「幼児置き去り検知」機能。これは2022年よりユーロNCAPでが試験項目に追加されることに対応するものだ。当初、このセンサーとして考えられていたのがカメラや超音波センサーだった。しかし、就寝中などで動きがないと検出しにくいという問題が生じることがわかり、目下、白羽の矢が立っているのが60GHz帯のミリ波レーダーだという。ただ、現状ではコストが高く付いてしまうため、複数の機能をまとめて持たせられるよう開発が進められている段階にある。

ますますその進化が期待されるADAS! だが過信は禁物

“人は過ちを犯す動物”とは良く言われるが、その過ちが万一危険につながればそれこそ取り返しが付かない事態を招く。自動運転とはいかないまでも、それを防止するためにドライバーをアシストするセンサーが果たす役割は今後ますます大きくなっていくだろう。一方で、センサーが検知する能力には限界があることも確かだ。ADASを過信せず、上手に付き合っていくことが大切である。

[筆者:会田 肇]

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会田 肇
筆者会田 肇

1956年生まれ。ホリデーオート編集部員を経て、カーAVを中心とした評論活動に従事。先進安全車(ASV)を含むITSへの取材も積極的に行う。読み手の立場に立った分かりやすいリポートを行うことをモットーにする。趣味は国内外の風景を撮影すること。日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る

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