通信5G化で街中の移動手段も激変!? [“モビリティの世界” Vol.10](2/2)

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シェアリング、自動運転などの最先端テクノロジーを搭載

テムザックはモビリティ、医療、災害レスキューといったさまざまなロボットを手掛ける会社です。ロデムはNEDO(ネド:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受け、福祉大国デンマークでNTTドコモとともに約6年間に及ぶ実証実験を行いながら開発されました。

コンセプトは「質の高い生活を、すべての人に」。介助者・被介護者の負担を減らして、誰もが暮らしやすい社会を創りたいというという思いで誕生。屋内用モビリティ(生活防水対応)として開発されました。

2017年11月20日から販売受付を開始。メーカー希望小売価格は98万円(非課税・送料調整費別途)です。車体のサイズは全長1,000mm×全幅690mm×全高400mm(~シート高調整で最大785mmまで)。重量174kg、最高速度6km/h、家庭用100V電源が使用出来て、充電時間は8時間。ちなみに4輪駆動だそうです。

ロデムの操作はWHILL同様にジョイスティックで行います。ブルートゥースでつなげばスマートフォンでも遠隔操作が行えます。例えば普段は部屋の隅に置き、ベッドから降りる際などに近くへロデムを寄せる、といったことが可能です。第1号車は2018年8月28日、滋賀県の草津総合病院に納入されました。

目標は2020年までに街中でのシェリングモデルを実現すること

テムザックやNTTドコモはこの屋内モデルを改良し、屋外でも使えないかと奮闘しています。屋内モデルを屋外モデルへ改良することは非常に高度な技術が必要とされますが、現在改良に改良を重ねているそうです。

将来的な構想もかなり具体的に検討が進んでいます。GPS搭載による自己位置の認識や経路検索、自動運転、衝突回避機能、自動充電、電子キー、搭乗時バイタルデータ検出、多言語翻訳機能・・・ありとあらゆる最先端テクノロジーを搭載させた街の中でのシェアリングモデルを目指します。現在、2020年を目標に定め、段階的に実装実証実験を行っているところです。

テムザックの高本氏は「目的地で乗り捨てると、勝手に充電センターまで走って帰るようにしたい。しかし日本においては法律などの課題があり、現時点ではロデムの自動運転実験が出来ない。法整備などを経て自動運転の実証実験が可能になるまでの間で、それ以外の様々な実験を済ませておきたいと考えている」と非常に野心的です。

近未来のパーソナルモビリティ実現に向け直面する、多くの課題

しかしテムザックが描く、ロデムを活用したシェアリングや自動運転の実現にはまだまだ課題が多いようです。

確かに次世代通信5G化で、データのやり取りは飛躍的にしやすくなります。しかし公道を走行する自動車の自動運転データの蓄積は進んでいますが、歩行者目線のデータの蓄積(段差やガードレールの有無を含む歩道や横断歩道の情報、またビルや駅、役所、病院といった公共施設内の移動経路データ等)はまだまだ圧倒的に少ない現状があります。

また先に述べたように、利用し終わったパーソナルモビリティを自動運転で充電ステーションに戻す実証実験ですら、現段階では日本の公道で行うことも出来ません。超高齢化社会で需要は待ったなしの状態でありながら、国や自治体においても動きが遅く、パーソナルモビリティサービスについて具体的な商用化までの検討も及んでいません。

せっかく高齢者にも優しい理想的な仕組みや機能が実現可能な状態になったとしても、まだまだ課題は多そうです。

日本のパーソナルモビリティは黎明期、だからこそ社会全体でしっかり育てたい

少子高齢化に伴い暮らしや社会が変わる中、免許を返納した人も増え、公共交通が充実していない地域での移動手段の問題も広がっています。そんな中で、パーソナルモビリティの潜在的な需要はますます高まっています。

筆者はモビリティの視察で何度も欧米の街を歩いています。そこで気付かされるのは、日本ではパーソナルモビリティを使う文化、環境、社会の理解が、欧米に比べて育っていない「黎明期」にあるという点です。

人それぞれのニーズ、使う環境やシーンに合わせて選べるように、日本でももっともっと色々なパーソナルモビリティやそのサービスの選択肢を増やしていく必要があるでしょう。また高齢者や障害者の利用が多くなるパーソナルモビリティの安全への配慮は、最優先で行わなければいけません。そのためには、公道での自動運転の検証は大変重要となるでしょう。

企業だけでパーソナルモビリティを育てることは大変です。パーソナルモビリティの必要性を認識して、社会全体で育てる姿勢が大変重要だと筆者は考えています。

[筆者:楠田 悦子/撮影:楠田 悦子]

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楠田 悦子
筆者楠田 悦子

「暮らしや社会をより"心豊か"に」をテーマに、新進気鋭のモビリティジャーナリストとして活躍中。 欧州生活、バックパーカー、NGOなどの経験を基に、クルマ、鉄道、バス、自転車、飛行機‥身近な人やモノの移動やその手段の進化に着目。暮らしや社会の問題を考察したり、新たな価値を提案するなど、具体的にアクションをとることがライフワークになった。自動車業界紙、(株)自動車新聞社の記者出身で、モビリティビジネス情報誌「LIGARE」の初代編集長。国や自治体の検討会委員なども務める。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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