ポルシェ 911GT3 海外試乗レポート(2/3)

  • 筆者: 河村 康彦
  • カメラマン:ポルシェ・ジャパン
ポルシェ 911GT3 海外試乗レポート
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サーキット走行に適した理想的な空理記性能と圧倒的なパワー

「カレラ4用のコアとカレラ用のエクステリアをベースとしたボディを採用」とポルシェ自らが説明するのが新型GT3。プロポーション上ではカレラと同様の"幅狭タイプ"のボディを採用したこのモデルのスタイリング・ディテールは、やはり明らかに既存のどの997型911よりも強く"レーシー"な雰囲気を漂わせるものに仕上げられている。そうなった主な要因はもちろんまず、サーキット走行にも適したより理想的な空力性能を得るために様々なエアロパーツ類を採用した点にある。

先代モデルの0.30を凌ぐ0.29というカレラと全く変わらない優れたCd値をキープしつつ、「全車速域でダウンフォースを生み出す」というポテンシャルを達成させた陰には、ボックス型リアスポイラーのウイングレットやその下に設けられたガーニーフラップも少なからずの貢献を果たしているという。カレラ・シリーズには見られなかったフロントフード前端部のスリット状のアウトレットは、センターラジエーターを通過した温風の排気の役を担うもの。こうして、下から取り入れた空気を上に逃がすという流れを作る事でフロントアクスルにかかる揚力を抑える効果も現れたという。ちなみに、リアスポイラーは「サーキット走行の機会に備え」、3°もしくは6°の調整を可能とした構造だ。

今や3.8Lという排気量をもバリエーション中に揃えるのが911シリーズではあるが、「所期の性能はこの排気量で十分に達成出来る」という理由から今回のGT3も従来通りの3.6Lという排気量を採用する。ただし、そんなカレラ同様の排気量を持つGT3用のユニットはまた、構造的には「カレラ・シリーズ用とは全くの別モノ」であるのが大きな特徴。従来型をベースとした新型GT3用のエンジンは、今回も左右のシリンダー・ユニットごとにブロック、ヘッド、カムシャフト・ハウジングをひとつのユニットとしてまとめる事でねじれ剛性の大幅向上を狙うという基本デザインを採用。カレラ用とは異なりブロックとクランクケースのハーフパーツを一体構造としていないのは、「モータースポーツのホモロゲーションに合わせて、排気量クラスの変更を素早く行えるようにするため」というのがその理由になる。

さらに、高回転高出力型という特性をより高めるために可動部分の質量低減やバリオカムの調整範囲の拡大、各種のバタフライ制御による吸排気効率の向上や圧縮比のアップ等々のリファインが図られた結果、この心臓が発する最高出力は従来型の381psを大幅に上回る415psを達成。排気量当たりの出力にして115.3ps/Lというこのデータは「自然吸気エンジンとしては世界最高」を誇る。

こうして、まずはどうしてもその心臓ばかりに目が向いてしまうGT3ではあるが、もちろんそうした鮮烈パワーを受けとめるシャシーのリファインにも抜かりはない。

カレラ・シリーズに対して足回りのセッティングが全般にハード化されたのは、車両のキャラクターからも当然の成り行き。が、今回のモデルでのトピックはそこに"PASM"が採用された事。「GT3固有の要求に合わせてチューニングされた」というこの可変減衰力ダンパー・システムは、「基本設定が従来型GT3の特性にほぼ相当し、スポーツモードでは『路面がフラットであれば』より高い俊敏性と一段と高度なステアリング精度を実現させる」という。ただし、こちらのモードを使用中でも路面の凹凸をわずかにでも検出すると、接地性改善のために「瞬時に"余り硬くない特性"へと切り換えを行う」とされている。

ハード化をしつつもしなやかな接地性を追い求めた脚――どうやら今度のGT3のサスペンションの狙いどころは、そのあたりにあるようだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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