プジョー 508(2014年12月マイチェンモデル)試乗レポート/渡辺陽一郎(2/2)

プジョー 508(2014年12月マイチェンモデル)試乗レポート/渡辺陽一郎
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十分な動力性能に、バランスの良い足まわり

プジョー 508(2014年12月マイナーチェンジモデル)プジョー 508(2014年12月マイナーチェンジモデル)

そこでプジョー508SWグリフを試乗した。

まずは動力性能だが、ノーマルエンジンでいえば2.5リッタークラス。車両重量が1560kgだから、数値的なバランスは平均的だ。それでも実用回転域の駆動力が高いために扱いやすく、6速ATと相まって吹き上がりも良い。今の1.6リッターターボを搭載した欧州車に多く見られる傾向で、動力性能は十分だろう。

乗り心地は期待したほどではなかった。以前試乗したのは16インチタイヤを履いたセダンだが、今回の試乗車は17インチのSW(ワゴン)になるからだろう。少し硬めの印象であった。

それでも大きめの段差を乗り越えた時など、不快なショックが伝わりにくい。奥が深いというか、「この状態は足まわりにとって辛いだろうな」と思う時に、意外にも平穏を保つ。

走行安定性も同様だ。全幅が1855mmとワイドで、ホイールベースは2815mmに達するから、後輪の接地性が優れている。その代わり17インチタイヤでも機敏に曲がることはないが、長距離移動向けのワゴンとしてはバランスが良い。

プジョー 508(2014年12月マイナーチェンジモデル)
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居住性や積載性は基本的に以前と同じだが、前席は座り心地が絶妙だ。座面の後方と背もたれの下側でしっかりと体を支え、座面の中央から前側、背もたれの両脇は柔軟に体に寄り沿う。この座り心地は、カッチリとしたドイツ車とは明らかに違う。

特に後席は、ドイツ製ワゴンの場合、畳む機能を優先させて座面が沈みにくいタイプが多い。チャイルドシートを装着するなら不満はないが、大人4名で頻繁に乗車するならチェックしたいところだ。

その点で508SWは、後席も柔軟に仕上げた。前後席に4名で乗車して、長距離を移動する使い方に適する。

地味ながら良いクルマ

プジョー 508(2014年12月マイナーチェンジモデル)

508SWの価格は、アリュールが397万8000円、上級のグリフが462万1000円になる。価格差は64万3000円だ。400万円以下に収まり、16インチタイヤが快適なアリュールを推奨したいが、グリフにはフロント&バックソナー、斜め後方の死角に入った並走車両を知らせるブラインドスポットモニターシステムが装着される。ミリ波レーダーやカメラを使った衝突回避の支援機能は選べないが、安全装備は充実させたい。ここが悩みどころだ。

レザーシートなどはグリフ専用で構わないが、前述の安全装備は、8~10万円でセットオプションにすると親切だ。販売台数の少ない輸入車でオプションの対応が難しいなら、全車に標準装着して欲しい。

自動車評論家の渡辺陽一郎さん

プジョー508は、日本で使うにはボディが大柄で、最小回転半径も5.9mに達する。購入するなら狭い道の通行、縦列駐車などを試す必要があるが、そこに不満がなければ、意外に買い得だと思う。

特に「長距離を安全かつ快適に移動できて、しかも愛車で注目を集めたくない」と考えるユーザーは、検討する価値が高い。

地味な良いクルマを見つけるのは難しいが、その期待に応えるのが508だ。昔を思い返すと、プジョーの日本におけるブランドイメージは、まさに地味と快適の共存にあった。508がプジョーの代表車種のように思えてきた。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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