日産 スカイラインクロスオーバー 試乗レポート/岡本幸一郎(3/3)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
単なる派生モデルではないぞ!
走りは、まず「スカイラインの中で最良」という乗り心地のよさが印象的だった。一般的にクロスオーバーSUVというと、バネ下は重く、重心は高いので、ベース車に対してネガティブ要素が目立つ=乗り心地は悪化するものだ。しかしこのクルマは、後席も含め非常に乗り心地がよく仕上がっていた。タイヤの厚みもよい方向に作用しているのではと思う。
このルックスからも想像がつくが、一般的なSUVに比べると、圧倒的に重心が低いおかげで、運動性能も乗用車並みに高くなっている。直進性もライントレース性も素晴らしく、大きく重いクルマながら、挙動が乱れにくく、かつ収束性も高い。このあたりはデュアルフローパスショックアブソーバーも効いているのだろう。
ハンドリングには一体感があり、いたずらにスポーティさが強調されていないので、リラックスして乗れるところもいい。いたって上質で快適な乗り味である。
VVELを採用したVQ37VHRユニットは、相変わらず全域にわたって力強い。組み合わされる7速ATは、Z34以来の傑作品だが、その出来が非常によいこともあらためて実感した。ダイレクト感がありつつもスムーズで、いかにも効率がよさそうだ。惜しいのはパドルシフトの設定がないこと。なんでだろう・・・?
2WD車と4WD車の車重差は120kg。ちなみに4WD車ではフロント80kg増、リア40kg増となる。2WD車の方が全体的に軽快で、ノーズも向きを変えやすい。4WDの方が車重増に合わせて足まわりが固められているので、乗り味としては4WDの方がスポーティに感じられる。好みでいうと、微妙に2WD車に軍配だったのだが、いざ買うとなったら、悪条件下でのオールマイティさを取って、4WDを選びそうな気もする。
そもそもスカイライン クロスオーバーは価格もそれなりに高いので、販売台数はそれほど多くは見込めないだろうが、このクルマに乗ることのカッコよさを理解できる「見る目」のある人が、はたしてどのくらいいるだろうか?
ポイントはクーペ+αの心構えなのではないだろうかと思う。セダンではつまらないから、本当はクーペに興味があるのだけど実用性の面で踏み切れないという人へ、こういう選択肢もあるということを是非感じとってもらいたい。
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