月販3500台! 2020年登場のニューモデル「日産 キックス」はヒット作か!?
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
2020年も多くの新型車が登場した。日産では10年ぶりの新モデルとなったコンパクトSUV「キックス」が話題の中心だ。同クラスは現在大流行のジャンルで、各社からもニューモデルが相次いで登場している。そんな中でキックスはヒット作といえるのだろうか。ライバルとの比較を交えて検証してみた。
SUVイヤーだった2020年
2020年10月30日、“今年の車”を選出する賞典「2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」のノミネート車全45台が発表された。
イヤーカーは、2019年11月1日から2020年10月31日までに日本国内で発表されたノミネート車の中から選出される。ノミネートの45台中、SUVジャンルに含まれるのは23モデルとほぼ半分を占め、そのうちコンパクトSUVにカテゴライズされるのは16モデル。特に国産勢では、ハリアーを除く7モデルが全てコンパクトSUVだった。2020年がSUVイヤーだったことに改めて気付かされる。
コンパクトSUVの元祖メーカーが2020年に登場させたキックス
アメリカ発祥のSUVは、今や世界的な定番ジャンルとなった。特に近年は日本や欧州などの都市部で、扱いやすいボディサイズのコンパクトSUVが流行している。その先駆けとなった1台が、2010年デビューの日産 ジューク(初代)だった。
2020年6月登場のキックスは、そのジュークの後継モデルとして登場した。NISSAN独自のハイブリッドシステムe-POWERを搭載。先進運転支援機能プロパイロットも採用され、日産の最新トレンドを凝縮した1台となっている。自販連調べによる登場4か月の販売状況は、6月1836台(27位)、7月456台(圏外)、8月1178台(38位)、9月3493台(19位)となっている※1。月平均で1740台という実績だが、9月の伸び幅を見ると、10月の発表も気になるところだ。
※1 自販連:一般社団法人 日本自動車販売協会連合会[( )内は軽自動車を除いた乗用車ブランド通称名別順位ベスト50]
他社のコンパクトSUVと比べてどうだったのか
2019年末から2020年にかけて登場した他社のコンパクトSUVのニューモデルと比べてみよう。
2019年11月発売のトヨタ ライズは、2020年前期(1月~6月度)に1位を獲得し、6か月に58492台(平均9748台)を販売。月販目標4100台を倍以上上回った。2020年8月末発売のトヨタ ヤリスクロスは、自販連データではコンパクトカーのヤリスと合算し9月単月で22066台を売っているが、そのうち3割がヤリスクロスだというから、月販目標4100台は楽々クリアしているようだ。
月販3500台のキックスは「好調な売れ行き」
いっぽうのキックスはグレード展開を絞り、e-POWER専用車として登場。価格は約276万円から287万円と、コンパクトクラスとしては高価な部類に属する。ライバルのヤリスクロスのようにハイブリッド車とガソリン車を併売し、約180万円から281万円の価格幅を持つモデルに比べると不利な条件だ。
また、タイの日産工場で生産される輸入車であるキックスは、船便の都合で月により台数の増減も出てしまうようで、7月度の販売減はその影響が大きい。
日産はここ最近のニューモデルでは月販目標を公表しておらず、月平均の1740台という実績が目標通りなのかも明確ではない。そこで日産自動車の広報部に問い合わせたところ「計画台数はクリアしており、好調な売れ行きです」とのこと。特に9月の約3500台の実績は大きな結果だと話す。
ちなみに目標を公表していない理由についての明確な回答は得られなかった。
急成長のコンパクトSUVジャンルでも“やっちゃえNISSAN”
成長著しいコンパクトSUVカテゴリーに輸入車で挑む日産。9月に3500台を売った実績からして、今後の伸び幅にも期待がかかる。
とはいえヤリスクロスやライズなどの好調ぶりを考えると、なんともじれったい気分にもなる。簡単なことではないだろうが、国内生産に切り替え200万円を切る廉価なモデルを追加したり、欧州専用車となった2代目ジュークや、インドで発表されたマグナイトなどを新たに追加導入すれば、コンパクトSUVジャンルで更なる量販も狙えそうに思えるのだが…。
トヨタ一強の状況を打破してこそ、市場はさらに活性化する。日産では「今のところお伝え出来る情報はない」とつれない返事だが、次なる攻勢にも大いに期待したい。
[筆者:トクダ トオル(MOTA編集部)]
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