新型ヴェゼル爆売れの鍵はホンダお得意の“上級食い”! ユーザーの利点は大きいが収益面では疑問符も

  • 筆者: 鈴木 ケンイチ
  • カメラマン:和田 清志・茂呂 幸正・小林 岳夫・Honda
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2021年4月に発売を開始したホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」が好調だ。発売1ヶ月で3万台を受注し、グレードによっては1年近く納車待ちが発生しているほどの人気ぶりである。そんなヴェゼルがヒットした大きな理由のひとつが、ホンダお得意の“上級車喰い”ではないだろうか。そんな新型ヴェゼルの売れ行きについて、モータージャーナリストの鈴木 ケンイチ氏が分析する。

目次[開く][閉じる]
  1. 新型ヴェゼルは上位クラスSUVにも迫る大きさと広さが特徴だ
  2. 最近ヒットしているホンダのコンパクト・軽はいずれも上級モデルに近いサイズや広さがウリ
  3. メーカー全体のラインアップで見ると、もう少しうまいやり方もあるのでは!?

新型ヴェゼルは上位クラスSUVにも迫る大きさと広さが特徴だ

ホンダの話題の新型モデルであるヴェゼル。ホンダ フィットと同じBセグメントのコンパクトカーのプラットフォームを使って生まれた。いわゆるBセグメントSUVと呼ばれる。

そんなヴェゼルならではの特徴がある。それは先代からも踏襲されているもので、簡単に言えば「ちょっと大きい」のだ。

同クラスどころか上位のCセグメントSUVに迫るサイズ

BセグメントのSUVといえば、トヨタのヤリスクロスやマツダのCX-3などがライバルとなる。それらは、ヤリスクロスが全長4180mm、CX-3が4275mm、日産キックスが4290mm。ところがヴェゼルは4330mmで、ライバルの中で唯一、全長4.3mを超えている。

ちなみに、もう1クラス上のCセグメント・プラットフォームを使うSUVであるトヨタ C-HRは4385mm、マツダ CX-30が4395mmと、同じ4.3m台になる。

つまり、ヴェゼルは同じクラスのSUVとしては最も大きく、もうひとつ上のクラスに近い寸法となっているのだ。これにより、ヴェゼルはライバルよりもちょっと上という雰囲気があり、それも大きな魅力となっている。

この特徴は、先代モデルからの継承で、先代の全長は4295mm。先代モデルの時点で、現在のライバルと比べても最長クラスのサイズを誇っていたのだ。

最近ヒットしているホンダのコンパクト・軽はいずれも上級モデルに近いサイズや広さがウリ

しかし、新型ヴェゼルの「クラスの中で、上級モデルに近い」という特徴は、ライバルに対して有利になるが、逆に欠点もある。それが身内の上位モデルの販売への悪影響だ。

上位クラスとの差が近くなれば、上位クラスから下のクラスを選ぶ人もいるだろう。ヴェゼルは売れるかもしれないが、その上のクラス、ずばりホンダ CR-Vが苦しくなる。

ちなみに現行CR-Vの販売は、相当に苦戦中である。ただし、これはヴェゼルの存在云々というよりも、CR-Vがアメリカ市場に寄りすぎて、日本の顧客にあまり好まれないという側面もあるだろう。また価格設定も上級クラスのトヨタ ハリアーを意識したもので、直接のライバルであるはずのトヨタ RAV4や日産 エクストレイルに比べ割高に感じられる。

上位クラスを完全に喰ってしまった「N-BOX」や「フリード」

そして、最近のホンダは「クラスの中で、上級モデルに近い」ことを得意としている。大ヒットの軽自動車N-BOXも、クラスを超えた広々空間や上質感が魅力となる。そして、そんなヒットによる悪影響もあったことだろう。現行型フィットの売れ行きが不振なのもN-BOXの影響が大きいとみるユーザーの声は大きい。

コンパクトなミニバン、フリードも、“ちょうどよい”をうたったことで、コンパクト向けのユーザーだけでなく、もう少し広いユーザーを獲得できている。ただしフリードがあることで、その上のクラスのステップワゴンの顧客の一部が流れたことは間違いない。

また、ステーションワゴン、ジェイドが短命に終わったのも、クラス下にフィット、シャトルという安くて室内の広い優等生がいたことが理由の一つではないだろうか。

メーカー全体のラインアップで見ると、もう少しうまいやり方もあるのでは!?

ひとつひとつのモデルに注目すれば、「上級モデルに近い」というのは大きなメリットだ。しかし、メーカー全体のラインアップを考えると、デメリットにもなる。そういう意味で、ホンダは不器用なメーカーと言えるのではないだろうか。個々のモデルに注力しすぎて、全体のバランスがおろそかになっているように見えるのだ。

不器用だがフレッシュな印象のホンダと、すみ分けが上手く手堅い商売人のイメージが強いトヨタ

ちなみに、そうしたバランスを得意とするのがトヨタだ。SUVで言えば、下から、ライズ、ヤリスクロス、C-HR、RAV4、ハリアー、ハイラックス、ランドクルーザープラド、ランドクルーザーと並ぶ。どれも個性がはっきりしていて、顧客を奪いあうことが少ないのだ。個々のモデルではなく、ラインアップ全体を統制する力が強いのだろう。やはり、トヨタが強いのは理由があるということだ。

しかし、ラインアップ全体の統制がゆるい(?)からこそ、個性豊かな製品が生まれるという見かたもできる。ホンダの製品から感じられるフレッシュさは、そうした部分にあるのではないだろうか。

[筆者:鈴木 ケンイチ/撮影:和田 清志・茂呂 幸正・小林 岳夫・Honda]

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鈴木 ケンイチ
筆者鈴木 ケンイチ

1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。最近は新技術や環境関係に注目。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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