人気軽オープン「S660」の本当の燃費を測ってみた/vol.1 高速道路編(1/2)

人気軽オープン「S660」の本当の燃費を測ってみた/vol.1 高速道路編
ホンダ S660 走行イメージ ホンダ S660 パーキングエリアにて ホンダ S660 パーキングエリアにて ホンダ S660 海ほたるにて ホンダ S660 茂原長南インターにて ホンダ S660 ロールトップ ホンダ S660 リアイメージ ホンダ S660 MT メーター ホンダ S660 高速道路における燃費は「23.2km/L」 ホンダ S660 透過イメージ 本田技術研究所 四輪R&Dセンター ・ラージ・プロジェクト・リーダー 椋本陵 氏 画像ギャラリーはこちら

国産スポーツモデルの“当たり年”となった2015年

ホンダ ビート

今年は4代目モデルとなる「マツダ ロードスター」、親しみやすいところでは「スズキ アルトターボRS」が登場し、日本の自動車業界にとっては久々にスポーツモデルの当たり年となった。

そして2015年3月に「2015年生まれのスポーツモデルの一員」としてデビューした「ホンダ S660」は、バブル期に登場した「スズキ カプチーノ」「オートザム AZ-1」とともに平成ABCトリオを形成した「ホンダ ビート」を彷彿とさせる、エンジンをキャビンと後輪の間に積むミッドシップレイアウトを採る軽オープン2シータースポーツカーである。

S660は車そのもの以上に“誕生の過程”がユニークであるため、ここで紹介したい。

異例づくしで誕生したS660

本田技術研究所 四輪R&Dセンター ・ラージ・プロジェクト・リーダー 椋本陵 氏東京モーターショー2013にて「S660コンセプト」

S660誕生のきっかけは、本田技研工業(株)とは別会社でホンダ車を開発している(株)本田技術研究所が2010年に行った「新商品提案企画」と題されるコンテストであった。

このコンテストで大賞を受賞したのが、手軽に乗れる“軽オープンスポーツ”であった。その軽オープンスポーツを提案したのが当時22歳で入社4年目のクレイモデラー、椋本陵氏。その軽オープンスポーツは走行可能なように実車化され、当時の伊東社長をはじめとする役員が試乗、開発にゴーサインが出たという経緯を持つ。

さらにホンダ社内でLPL(ラージプロジェクトリーダー。一般的には開発責任者、チーフエンジニア)には提案者ということでそのまま椋本氏が就任。

今後もおそらく破られることがない自動車業界最年少の現在26歳のLPLの指揮の下、開発メンバーも社内公募で集まった非常に若いメンバーを中心に2011年、2013年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカーを経てS660は産まれたのである。

良好なカタログ燃費、果たして実燃費は!?

ホンダ S660 透過イメージホンダ S660 ロールトップ

S660の成り立ちはミッドシップであるだけに専用ボディ、軽自動車としては過去を振り返っても希少な独立懸架となる専用の四輪ストラットサスペンション、ルーフはロータス エリーゼのようなソフトトップを巻き取るタイプ(オープンにした場合、ソフトトップはフロントフード内のユーテリィボックスに収納できる。しかしオープン状態で2名乗車した場合には荷物を置くスペースは皆無となる)と、贅沢かつ考えようによってはシンプルなものだ。

エンジン、トランスミッションといったパワートレーン関係は、エンジンは基本的にはホンダの軽自動車の3気筒660ccと共通だが、レスポンスを重視した専用のターボチャージャーに変更され、トランスミッションもS660専用となる新開発の6速MTとCVTが設定されている。なお、CVTにはアイドリングストップも装備される。

この種の車は乗用車に比べれば燃費はそれほど重視されるものではないが、カタログに載るJC08モード燃費はCVTが「24.2km/L」、6速MTが「21.2km/L」という数値で、今年4月から基準が厳しくなったエコカー減税ではCVTのみ取得税40%、重量税25%軽減が適応となる。

グレード体系は上級のα(218万円)と標準のβ(198万円)の2つ。2つのグレードの違いは主にホイールやシートといった見た目で、装備内容的にはβでも十分。しかし、βだとボディカラー がS660全体で6色選べるうちの比較的地味なパールホワイト、ブラック、グレーの3つしか選べないため、有彩色のレッド、イエロー、ブルーを選びたい場合には自ずとαを選ぶことになる。

ということを考えると、S660のグレードを選ぶ際には筆者個人としてはボディカラーから考えた方がいいようにも感じる。

またS660は特殊な車であるだけに、生産はホンダ社内の工場ではなく過去にホンダの軽自動車の生産を行い、現在は軽トラックのアクティや軽1BOXのバモスなどの生産を行っているホンダ社外の八千代工業が担当する。

加えてS660は車の性格上生産台数が月800台程度と限られていることに加え発売当初から大人気で、今から注文すると納期はほぼ1年先となる来年6月以降の見通しとなっている。

今回の燃費テストでは、αの6速MT(218万円、JC08モード燃費21.2km/L)を起用。

テストは7月24日(金)の早朝に出発し、午後4時過ぎに帰京するというスケジュールで行った。天候は晴れ時々曇り、最高気温は35度という猛暑で、交通の流れは平均的なものだった。

なおS660はオープンカーであるため、道のりの半分程度の距離をオープンにして走行した。

燃費測定の基本ルール

・燃費の測定は、車両に純正搭載されている車載燃費計を使用

・スピードは流れに乗ったごく一般的なペースで走行

・車両の状態もエアコンは快適に過ごせる温度(オートエアコンなら25度)に設定

・走行モードが選択できる場合にはノーマルモードを選んで走行

試乗ルート1「高速道路」

試乗ルート1「高速道路」

首都高速都心環状線芝公園ランプから首都高湾岸線を経由し、東京湾アクアラインから最近開通した圏央道の茂原長南インターに向かうというルート。

道路にアップダウンは少なく、流れは区間全体を通しおおよそ80km/h程度。道のりは約70km。

試乗ルート2「郊外路」

試乗ルート2「郊外路」

茂原長南インターを降り、国道409号線を西に進み、交差する国道297号線を北上し、東京湾に近い千葉県市原市内の国道16号線まで向かうルート。

道路にアップダウンは少なく信号があまりない上に走行中の流れも良く、好燃費が期待できる区間と言える。道のりは約30km。

試乗ルート3「市街地」

試乗ルート3「市街地」

千葉県市原市の国道16号線から国道357号線、途中から片側1車線になる国道14号線、都県境から蔵前橋通りを経由し、オートックワン編集部に戻るルート。スムースに流れることは少なく、渋滞路が多くを占める区間だ。

平均時速は15~18km/h程度で、イメージとしては混んだ東京都内の道に近い。道のりは約55km。

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永田 恵一
筆者永田 恵一

1979年生まれ。26歳の時に本サイトでも活躍する国沢光宏氏に弟子入り。3年間の修業期間後フリーランスのライターとして独立した。豊富なクルマの知識を武器に、自動車メディア業界には貴重な若手世代として活躍してきたが、気付けば中堅と呼ばれる年齢に突入中。愛車はGRヤリスと86、過去には日本自動車史上最初で最後と思われるV12エンジンを搭載した先代センチュリーを所有していたことも。記事一覧を見る

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