【DESIGNER’S ROOM】マツダ 新型「アクセラ」デザイナーインタビュー/マツダ デザイン本部 チーフデザイナー 田畑 孝司(1/5)
- 筆者: 森口 将之
- カメラマン:オートックワン編集部・MAZDA
魂動デザインの世界の中で、新型アクセラが目指したもの
オートックワン(以下AO):新型アクセラのデザインは、アクセラらしさを受け継ごうとしたのか、ゼロから構築しようとしたのか、どちらなのでしょうか。
田畑(以下T):これまでアクセラが築いてきたこと、具体的にはスポーティなCセグメントのハッチバックという立ち位置は大切にしました。ただ初代が、佇まい、質感、スポーティさ、使い勝手などのバランスが良かったのに対し、2代目は個性が強すぎたため、ファミリーカーとして見ると少しバランスが悪くなったと考えています。
そこで今回は、全てを高いレベルで整理する方向でデザインしました。個性的だけれどベーシックな部分でのバランスの良さを持っていて、だれもが見てカッコいいというカタチを目指しました。
AO:アテンザに似ているという声も聞かれますが。
T:アテンザに似せようという決まりがあったわけではありません。魂動デザインを追求し、エモーショナルなカタチを目指しただけです。それ以外に縛りはありませんでした。まわりの声は、アテンザと同じでつまらないという人と、アテンザと同じデザインがCセグメントで表現できたことはスゴいという人の、2通りに分かれているのですが、6:4ぐらいでポジティブに捉えてくれた方が多いようです。よく見ると違うけれど、魂動という方向性は同じであると褒めてくれる声もあって、うれしい限りです。
AO:アテンザと違う部分は具体的にどこなのでしょうか。
T:アテンザは大きいクルマなので、バランスとして低くスリークに見えるプロポーションです。アクセラも最初はその方向で展開したのですが、同じテイストを実現するには全高を約50㎜下げる必要がありました。それではファミリーカーとして成り立ちません。そこでゼロからやり直しました。スリークにしなくてもいいデザインはないかと悩んでいる中で、前後のフェンダーに上下の動きを持ったテンション(緊張感)を与えることでスピード感を表現し、タイヤに重心を乗せるという、「凝縮とスピード感」という考えが出てきたのです。たとえば前後フェンダーの峰は、タイヤの中心よりもドライバー側に寄せ、より安定感を出すようにしています。
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