レクサス LS 試乗レポート

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ようやく登場、レクサス フラッグシップモデル

昨年9月にスタートしたトヨタの新しい販売チャンネルであるレクサス店は、やや苦戦気味で1年間を終えた。その理由はクルマ揃えだった。1年目はGS、IS、SCの3車種をラインナップしていたが、フラッグシップモデルがGSというのがパンチ力不足だった。レクサス店はスタートのときから、LS=セルシオがフルチェンジしてLSになる=の投入を公表していたのだが、モデルチェンジサイクルが合わず、ようやく06年9月にデビューしたのだ。

人気モデルのセルシオがフルチェンジし、さらに高級車になって登場したことで、ディーラーもユーザーにも関心度は高かった。9月の正式デビュー前にすでに7000台以上の予約が入り、デビュー後も人気は上昇、1万台以上の受注になったのだ。

トヨタが技術の総力を集結させた高級車はLS460。さらに来春にはハイブリッドのLS600hとロングホイールベースハイブリッドのLS600hLも加わる。

世界の高級車のなかでも、つくりの良さ/ち密さはベスト3

LS460のボディデザインイメージは、セルシオとオーバーラップする。ただし、塗装面やモールとボディの密着性などは、これまでのトヨタ車とは、明らかに違いがある。いかにもお金をかけてつくりました、という感じがする。このつくりの良さ、ち密さは世界の高級車のなかでもベスト3に入る。

ボディサイズは旧セルシオと比較すると全長15mm、全幅45mm大きく、全高は5mmだけ低い。ホイールベースは45mm長いというプロポーション。かなりリッパに見える。ただし、町中を走ってみると、スタイリングコンセプトが似ているためか、あまり目立たなかった。

インテリアはデザイン、カラーコーディネート、素材ともにトヨタの最高級にふさわしい内容だ。4色用意された室内色のセンスも悪くない。ただし、ナビ画面周囲の各種スイッチ類をはじめ、室内にスイッチが多すぎるのが、時代の先端をいくクルマとしての違和感がある。ダイヤル式にするなどの工夫がほしいところだ。

18年ぶりに新開発したエンジンに、世界初の8速ATの組み合わせ

LS460のエンジンはV8の4.6L。トヨタとして18年ぶりに新開発したエンジンは385馬力、51.0kg-mという強大なパワー/トルクを発生する。ミッションは世界初の8速AT。マニュアルシフトモードも付いている。サスペンションも前後にマルチリンクを新開発し、エアサスペンションと組み合わせた。サスペンションはコンソールのスイッチでコンフォート/ノーマル/スポーツの3段階に切り替えることができる。

新V8エンジンは静粛性、振動、トルク感のどれをとっても高級車にふさわしいレベルだ。静粛性は5000回転でもエンジン音はほとんど室内に入ってこない。Dレンジで6300回転まで上昇しても振動もない。トルクは1800回転あたりから、アクセルレスポンスがよくなり、一気に上昇する。0→100km/h加速は公道上でも6秒台。かなり速いのだが、乗っている人が不快になる動きはない。その点でも高級車らしい仕上がりだ

日本の高級車のフラッグシップとなるか

LS460を予約した人たちの多くは、旧セルシオからの乗り替えユーザーだ。車両価格で100万円以上のアップになっているが、クルマの出来栄えや内容を考えると、むしろ割安感さえある。安全装備としては、世界初の追突に対する後続車への警告や、乗員保護まで行なうプリクラッシュシステム、世界初の8速AT、アクセサリーでは19スピーカーのオーディオなど、高級車にふさわしい内容だ。

このような最新装備や電子制御技術をふんだんに使っているところが、ドイツ車などにはない日本の高級車としての行き方なのだ。

確かにハンドルを握ったときにワクワクすることも少ないし、運転する楽しさが大きいかといえば、そうでもない。その代わり、安心感や快適さは、他の国の高級車に負けないものがある。信頼性もかなり高い。メンテナンスに対する反応も早いはずだ。このようなホスピタリティのよさが、日本の高級車ブランドの特徴と考えたい。

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石川 真禧照
筆者石川 真禧照

1947年東京都生まれ。1970年日刊自動車新聞社入社。翌年同社退社後、フリーの自動車評論家となる。1982年「I.W.OFFICE」を設立し、自動車を中心としたメディア活動を開始。「自動車生活探検家」として、『GORO』『DIME』(小学館)、『HOT DOG PRESS』(講談社)、『カーセンサー』(リクルート)など多数のメディアで活躍、現在に至る。日本モータースポーツ記者会会員。日本自動車ジャーナリスト協会副会長。記事一覧を見る

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