車いすでもっと乗りやすく“カイゼン”|トヨタ、ジャパンタクシーを一部改良
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
- カメラマン:オートックワン編集部
デビュー1年強で登録台数1万台を超えたトヨタ JPN TAXI
2017年10月、華々しくデビューを飾ったトヨタの新型タクシー専用車両「JPN TAXI」(ジャパンタクシー)。
タクシー専用車として開発されたJPN TAXIは、従来のセダン型タクシー車両から大きく進歩したことで話題を呼んだ。室内高を大幅に上げ、乗車空間を大幅に拡大。乗車ドアもスライド式とし、狭い場所でも乗降性を向上している。またLPGハイブリッドとしたことで燃費性能も格段に進歩させた。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、東京都では「次世代タクシーの普及促進事業」として「環境性能の高いUDタクシー」※に補助金を出していることもあり、JPN TAXIは特に東京都心を中心に急激に台数を増やしている。トヨタ自動車の調べによると、2018年12月末までにJPN TAXIは10,598台が登録されているという。
※UD:ユニバーサルデザイン・・・障がい者や高齢者、健常者に関わらず全ての人にとって使いやすいデザイン
※環境性能の高いUDタクシー・・・電気自動車・プラグインハイブリッド自動車・ハイブリッド自動車であって、車いすのまま乗降できるスロープ又はリフトを初度登録時に装備しているタクシー車両[東京都地球温暖化防止活動推進センター Webサイトより]
JPN TAXIは「車いす乗車が困難」!?|乗車拒否された例も
UDタクシーを標榜するJPN TAXIだが、実際に公共交通として普及が始まると、ドライバーや事業者、そしてユーザーからも様々な声が寄せられた。
中でも新聞記事にも取り上げられるニュースになったのが、車いすユーザーからの「スロープ設置に時間がかかり乗車に手間取った」「車いすを理由に乗車拒否された」といった悲痛な声だった。インターネット上で改善要求の署名も集められ、車いすユーザーのほかタクシードライバーらも賛同。集められた署名は1万1千人を超えた。
トヨタらしい“カイゼン”の積み重ねで車いすの乗降性を大幅改良
トヨタではこの状況を受け、2019年2月4日に「JPN TAXIの車いす乗降改善対応」を公式に発表。2019年3月に車いす乗降スロープ構造の見直しや車両側の改善を含むJPN TAXIの一部改良実施を明らかにした。
さらに既に納車済み、もしくは2019年2月までに生産する約1万1千台のJPN TAXIについても、改善部品への無償交換や作業手順を記したラベル表示の追加、タクシー事業者向けの実車研修強化を図っていく。
今回の一部改良で作業を簡略化することで、これまで68工程も必要だったスロープ設置・車いす固定について24工程まで減らすことに成功し、車いすの乗車を3分程度まで大幅に短縮させた。
さらにイラストで図式化したラベルも作業工程毎に追加したことで、不慣れなドライバーが容易に作業出来るよう配慮を加えている。
なお既存モデルについても、新型車に準じた対策部品の無償提供などで、68工程を38工程まで減らし、作業時間を4分程度に短縮した。
地道だが、いかにもまさにトヨタらしい生真面目な“カイゼン”と言えるだろう。
スライドドアの閉時間を短縮/料金トレイの位置変更|ユーザーからの声を反映
2019年3月のJPN TAXI一部改良では、乗務員の意見からさらに幾つかの改善も反映されている。
まずはスライドドアの閉時間だ。これまでの6.5秒から1.5秒短縮し5秒とした。混みあう路上で素早く乗降を済ませたいドライバーにとって、このわずかな差も歓迎されることだろう。
また、運転席の左サイドに取り付けられた料金トレイの高さを10cm低くした。これは従来型だと、ドライバーが振り返って料金を授受する際、少し高過ぎるとの意見を受けてのことだという。
さらにリアウィンドウのワイパーに間欠機能を追加した。ハイブリッド化で室内の騒音も大幅に改善されたJPN TAXIでは、リアワイパーが常時動くと動作音が結構気になるのだとか。一日中乗務するドライバーならではの意見だ。
このほか、プリクラッシュセーフティ/レーンディパーチャーアラート/オートマチックハイビーム/先行車発進告知機能などを備える予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」(トヨタセーフティセンス)には、従来までの機能に加えて、昼間の歩行者検知機能を追加している。
[筆者:トクダ トオル(オートックワン編集部)/撮影:オートックワン編集部]
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