走行距離課税(走行税)はいつから? どうやって調べる? 気になる仕組みや事例を徹底解説

  • 筆者: MOTA編集部
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走行距離課税(走行税)は、走行距離に応じて課税することで、公平性と安定的な税収確保を実現する新しい税制として注目されています。今後、電気自動車の普及によって税収減が懸念されているためです。

この記事では、走行距離課税(走行税)のメリットやデメリット、仕組みや導入時期などを解説します。

目次[開く][閉じる]
  1. 走行距離課税(走行税)とは?仕組みや導入時期を分かりやすく解説
  2. なぜ今、走行距離課税(走行税)を導入するの?
  3. 走行距離課税(走行税)導入のメリット
  4. 走行距離課税(走行税)導入のデメリット
  5. 走行距離課税(走行税)を導入している国や地域
  6. 現在の自動車関連の税金は?
  7. まとめ

走行距離課税(走行税)とは?仕組みや導入時期を分かりやすく解説

走行距離課税(走行税)とは、車の種類にかかわらず実際に走行した距離に応じて課税する、新しい自動車税の考え方です。

電気自動車(EV)の普及によりガソリン税の税収が減ることへの対策として、2022年頃から政府の税制調査会で本格的に検討が始まりました。「道路を使った分だけ公平に負担する」という考え方に基づいています。

ただし、正確な走行距離をどう測るのか、地方在住者や運送業の負担が重くなりすぎないか、プライバシーの問題など、導入には多くの課題も残されています。

ここでは、そんな走行距離課税(走行税)の仕組みやメリット・デメリットを分かりやすく解説します。

走行距離課税(走行税)の仕組みは?

走行距離課税(走行税)の基本的な仕組みは、「車の走行距離が長ければ長いほど、税金が高くなる」というシンプルなものです。

これにより、車をあまり運転しない人(サンデードライバーなど)は税負担が軽くなり、毎日の通勤や仕事で長距離を走る人ほど多くの税金を負担することになります。道路という公共インフラを使った分だけ支払う、という点で公平な税制度だと考えられています。

また、むやみに車を運転することを抑制する効果も期待されており、CO2排出量削減といった環境保護の観点からも注目されています。

走行距離課税(走行税)はいくら?

2025年8月現在、導入はまだ決まっていないため、具体的な課税額も未定です。

しかし、仮に導入されれば、これまでエコカー減税などで優遇されてきた電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)も、走行した分だけ課税されることになります。

また、公共交通機関が少なく、日常的に車での長距離移動が欠かせない地方在住者にとっては、税金の負担が増える可能性が指摘されています。

走行距離課税(走行税)はいつから始まる?

具体的な開始時期は決まっていません。

政府は2035年までに新車販売をすべて電動車にする目標を掲げており、それに伴うガソリン税収の減少を補うため、早ければ2030年頃の導入も検討されています。

しかし、後述する多くの課題を解決する必要があるため、導入にはまだ時間がかかると予想されます。

走行距離課税(走行税)はどうやって調べる?

走行距離をどうやって正確に把握するかが、この制度の大きな課題です。

車のオドメーター(走行距離計)の数値を自己申告する方法では、改ざんのリスクがあります。そのため、海外ではGPS技術を用いた距離計測が主流となっています。

GPSを使えば、走行距離を正確かつ公正に把握できるだけでなく、走行ルートや時間帯などの詳細なデータも収集可能です。

しかし、GPSによるデータ収集は常に誰かに監視されている状態とも言え、個人のプライバシー保護が大きな課題となります。適切なセキュリティ対策や法整備が不可欠です。

なぜ今、走行距離課税(走行税)を導入するの?

走行距離課税(走行税)の導入が議論される背景には、大きく2つの理由があります。

一つは、電気自動車(EV)やハイブリッド車の普及です。これまでの自動車関連の税収は、ガソリンの購入時に課される「ガソリン税」が大きな割合を占めていました。しかし、ガソリンを使わないEVや、燃費の良いハイブリッド車が増えることで、ガソリン税の税収が大幅に減少することが確実視されています。

もう一つは、若者を中心とした「車離れ」の傾向です。カーシェアリングなどが普及し、車を所有しないライフスタイルが広がっています。

このままでは道路のメンテナンスなどに使われる財源が不足してしまうため、車の所有や燃料の種類にかかわらず、公平に税収を確保できる走行距離課税(走行税)が、新しい財源として検討されているのです。

すぐに導入できないのはなぜ?

走行距離課税(走行税)の導入には、解決すべき多くの課題があります。

走行距離課税(走行税)の主な課題

  • 物流・運送業のコストが大幅に増加する
  • 車が必須な地方住民の負担が重くなる
  • ガソリン車ユーザーの「二重課税」問題
  • 走行距離をどう正確に、プライバシーを守りつつ把握するか

長距離を走る運送業のコストが増えれば、最終的に物価の上昇につながる恐れがあります。また、車社会である地方住民にとって、不公平な負担増となる可能性も無視できません。

さらに、ガソリン車に乗り続ける人にとっては、ガソリン税を払いながら走行距離課税(走行税)も課される「二重課税」になるのではないかという強い懸念も示されています。

走行距離課税(走行税)導入のメリット

走行距離課税(走行税)が導入された場合の、主なメリットは以下の3つです。

走行距離課税(走行税)導入のメリット

  • ガソリン車とEVの税負担が公平になる
  • あまり車に乗らない人の税金が安くなる
  • 排気量による課税がなくなる可能性がある

ガソリン車と電気自動車の不公平感がなくなる

現在の税制では、ガソリン車のオーナーは給油のたびにガソリン税を支払い、道路の維持費などを負担しています。

一方、EVのオーナーはガソリン税を支払わないため、「道路を使っているのに負担が軽いのは不公平だ」という意見がありました。

走行距離課税(走行税)が導入されれば、ガソリン車もEVも走行距離に応じて公平に税金を支払うことになるため、この不公平感が解消されます。

走行距離の短い人が得をする

従来の自動車税は、排気量に応じて「所有」しているだけで一律に課税されていました。そのため、ほとんど乗らない人も、毎日乗る人と同じ税金を払う必要がありました。

走行距離課税(走行税)では、実際に道路を利用した分だけ課税されるため、週末しか運転しない人や近所の買い物にしか使わない人など、走行距離が短い人の税負担は軽くなります。

排気量別の課税が撤廃される

走行距離課税(走行税)が導入された場合、現在の排気量に応じた自動車税が撤廃される可能性があります。

現在の税制度では、シボレー コルベットやメルセデスAMG S65のような6,000ccを超える大排気量車には、年間11万円もの自動車税が課されます。

もしこの制度がなくなれば、普段はあまり乗らないクラシックカーやスーパーカーのオーナーにとっては、維持費が大幅に下がるという大きなメリットが生まれます。

走行距離課税(走行税)導入のデメリット

一方で、走行距離課税には社会全体に影響を与えかねない、深刻なデメリットも指摘されています。

走行距離課税(走行税)導入のデメリット

  • 物流コスト増による、物価全体の値上げ
  • ガソリン税との「二重課税」の可能性
  • カーシェアやレンタカー料金の値上げ
  • バスやタクシーなど公共交通機関の運賃値上げ

物流業界の負担増により物価が高騰する

走行距離に応じて課税されるため、トラックなどで長距離を移動する物流業界のコストは大幅に増加することが予想されます。

このコスト増は、配送料の上昇を通じてあらゆる商品の価格に転嫁され、結果的に私たちの生活を直撃する物価高騰の一因となる恐れがあります。

ガソリン税に走行税が加わる可能性がある

走行距離課税(走行税)が導入されても、ガソリン税が廃止されるとは限りません。アメリカのオレゴン州のように、ガソリン税と走行税を併用している例もあります。

もし日本で併用されることになれば、ガソリン車ユーザーにとっては事実上の「二重課税」となり、大きな負担増となります。

カーシェアリングやレンタカー、バスやタクシーの値上げ

走行距離が伸びやすいカーシェアやレンタカー、そしてバスやタクシーといった公共交通機関も、走行距離課税(走行税)によるコスト増の影響を免れません。

その結果、これらのサービスの利用料金や運賃が値上げされる可能性があります。これは、車を所有していない人や、公共交通に頼らざるを得ない高齢者・地方在住者の生活を圧迫する要因となり得ます。

公共交通の利用者や社会的弱者に与える影響を鑑みると、慎重に検討されるべきでしょう。

走行距離課税(走行税)を導入している国や地域

世界では、すでに走行距離課税(走行税)を導入、または検討した国や地域があります。

ニュージーランド

世界で最も早く走行距離課税(RUC)を導入した国の一つです。主にガソリン税のかからないディーゼル車や大型トラックを対象とし、走行距離分のライセンスを事前に購入するというユニークな制度で、道路の維持管理費を公平に賄っています。

アメリカ(オレゴン州)

「OReGO」という制度を導入し、ガソリン税と走行距離課税を併用しています。走行距離に応じて課税しつつ、支払ったガソリン税分をそこから差し引くという、公平性を目指した複雑な仕組みを採用しています。

ドイツ

7.5トン以上の大型トラックを対象に、GPS付きの専用車載器で走行距離を測定し、課税しています。道路インフラ維持のための効果的な資金確保策と見なされています。

フランス

過去に大型トラックへの走行距離課税「エコタックス」の導入が検討されましたが、運送業界からの激しい反対を受け、最終的に廃案となりました。

この事例は、走行距離課税(走行税)の導入には社会的な合意形成がいかに重要であるかを示しています。

現在の自動車関連の税金は?

現在、日本のドライバーはすでに様々な税金を負担しています。走行距離課税(走行税)が導入されると、これらの税金との関係が大きな焦点となります。

現在の主な税金には、年に一度支払う「自動車税(種別割)」、車検ごとに支払う「自動車重量税」、車の購入時にかかる「環境性能割」、そして給油のたびに支払っている「ガソリン税」や「消費税」などがあります。

これらの税金は、それぞれ目的や課税の仕組みが異なります。

現在の自動車にかかる税金の詳しい仕組みについては、以下の記事で解説しています。

まとめ

今回は、新しい自動車税の形として注目される「走行距離課税(走行税)」について、その仕組みからメリット・デメリットまで詳しく解説しました。最後に、この記事の要点をまとめます。

走行距離課税(走行税)とは?

EVの普及などによるガソリン税の税収減を補うため、走行距離に応じて課税する新しい税金の考え方。

ドライバーへの影響は?

メリット

あまり乗らない人の税負担が軽くなる。

EVとガソリン車の税負担が公平になる。

デメリット

地方在住者や運送業の負担が増加し、物価上昇につながる可能性がある。

ガソリン車は「二重課税」になる懸念も。

いつから始まる?

導入時期は未定。プライバシー保護やコスト負担の問題など、解決すべき課題が多く残されています。

走行距離課税(走行税)は、私たちのカーライフや社会全体に大きな影響を与える可能性を秘めています。導入されるかどうかも含め、今後の政府の議論に注目していく必要がありそうです。

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