【誕生秘話/トヨタ ノア】トヨタ タウンエースノアが今のミニバンにつながるスタイリングとなった意外な理由とは?
- 筆者: 増田 真吾
- カメラマン:TOYOTA
ショートノーズに大型のキャビンといえば、ミニバンの代表的なスタイル。トヨタではタウンエースノアから採用された形だが、見た目だけでデザインされたわけではない。この形状にせざるを得なかったという、タウンエースノアの誕生秘話を紹介する。
短いボンネットは衝突時の安全性向上を目指して生まれた形
トヨタ タウンエースノアは、ミニバンブーム直前の1996年に登場。前身となるタウンエースをフルモデルチェンジする際に、サブネームとしてワゴンモデル、いわゆるミニバンにノアの名称が付加された。
タウンエースからの大きな変更点は、フロント部のデザイン。それまで多人数乗車の1BOXタイプ(キャブオーバー)では、車体の最前部に乗員が位置することになるため、衝突時の安全性が問題視されていた。
そこでトヨタの出した答えが、現在も多くのミニバンで採用されている短いボンネット(衝撃を吸収するクラッシャブルゾーン)を持ったデザインだ。この形状変更に伴って、前輪軸とエンジンは運転席の床下から前方へ移動し、現在では主流であるミニバンの形状となった。
ファミリー層向けミニバンに必要不可欠な要素を備えていた
タウンエースノアはエンジンを前方に移動したことに伴って、ミニバンとして大幅な進化を遂げることとなる。
低床化によりゆとりのある車内スペースを確保し、低重心化によって安全性と走行性能が向上。その結果、運転が楽になり乗り降りもしやすいという、現在ではファミリー層をターゲットにしたミニバンにとって、必要不可欠な要素を備えることになったのだ。
2列目にキャプテンシートと呼ばれる左右独立した1人用のシートを備えたグレードでは、運転席から3列目までのウォークスルーを実現。また、回転させることで対面式になる2列目シート、1~3列目をオールフラットにできるなど、多彩なシートアレンジも魅力的だった。
そして、立体感のあるフロントバンパーやマルチリフレクター式ヘッドライトなどを採用し、端正かつそれまでなかった斬新なエクステリアは、多くのファミリー層から注目を集めた。
トヨタ ノア/ヴォクシーの礎を築いた功労者
一時代を築くかに思えたタウンエースノアだが、1代限り5年で販売を終えてしまう。その理由は、ミニバンブームで他社が攻勢を強めるなか、ミニバンとしての立ち位置をより明確にした初代ノア/ヴォクシーの販売を前倒したためだ。
ノアとヴォクシーは、モデルチェンジを繰り返しながら現在まで続く5ナンバーサイズミニバンの代表する車種にまで成長(2022年のモデルチェンジで3ナンバー化)。技術革新によって走行性能や燃費性能は高められ、先進の安全装備も代を追うごとに進化し充実している。
タウンエースノアからくらべれば当然大幅な進化だが、上質な内外装と機能性を追求した基本コンセプトは、25年以上前に登場したタウンエースノアですでに形になっていたのだ。
[筆者:増田 真吾/撮影:TOYOTA]
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