ジャガーがあえてクロスオーバー車を造る意義とは/新型 SUV「ジャガー F-PACE」海外試乗レポート(1/5)
- 筆者: 金子 浩久
- カメラマン:ジャガー・ランドローバー・ジャパン
「F-PACE」は形を変えた現代のシューティングブレイクだった
知人が「ジャガー XJ-S シューティングブレイク」を持っていたことがあった。
シューティングブレイクとは、スポーツカーやGTなどの速いクルマの後部をステーションワゴンに改造したボディを持つクルマのことで、主にイギリスで小規模なコーチビルダーによってごく限られた数だけが造られていた。アストンマーチンの「DB5」や「DB6」をベースにしたものもあった。
名前の由来は、狩猟を行うハンターが撃ち落とした獲物を一刻も早くピックアップするためだと聞いているが、半分は眉唾だろう。そんなに遠くに照準を合わせることがあるとは思えないし、そもそも獲物のピックアップは猟犬の役目だ。
信憑性があるとすれば、猟場に速く駆け付け、獲物が痛まないうちに早く帰宅するために速いクルマが必要になるという説明だろう。実際、日本で最初の初代レンジローバーのオーナーはハンターで、それまで乗っていたランドローバーよりも格段に早く帰宅して獲物をさばくために、わざわざイギリスから個人輸入したレンジローバーに乗っていた。
名前はともかく、シューティングブレイクという存在は大いに魅力的だ。ただ速く走るためだけでなく、速く走る目的を持っているという点が豊かなライフスタイルを想像させるからだ。目的は、もちろん狩猟だけとは限らない。スキーやキャンプなどのアウトドアスポーツだって構わない。別荘への往復だとしても運ぶ荷物は多くなってくる。人間だけが速く移動するのならば、クーペボディのスポーツカーやGTなどで事足りるけれども、道具や荷物が多くなるアクティビティでは、シューティングブレイクのワゴンボディが必要になってくる。
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