ホンダ 新型プレリュードはなぜ高い? 価格“617万円超”の価値をシビックタイプRと比較しながら徹底解説
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂 幸正/島村 栄二/森山 良雄/和田 清志/本田技研工業
24年ぶりに復活した新型プレリュード。その美しい姿に心躍る一方、617万9800円からという価格に驚いた方も多いでしょう。「なぜ高い?」「シビックタイプRほどの価値はある?」そんな疑問に答えるため、カーライフ・ジャーナリストの渡辺 陽一郎さんが試乗評価。
価格がどうして高くなるのかという理由から、試乗で分かった走りの特徴、装備、購入前の注意点までを徹底解説します。はたして、新型プレリュードは本当に「買い」なのでしょうか。
新型プレリュード、価格はまさかの617万9800円から! 挑戦的な価格に
24年ぶりに、あの「プレリュード」が帰ってきました。美しいクーペスタイルをまとったその姿に、往年のファンはもちろん、多くのクルマ好きが胸を躍らせたことでしょう。
しかし、その興奮と同時に、発表された価格を見て戸惑いを覚えた方も少なくないはずです。
617万9800円——。
これは、サーキット最速の称号をほしいままにするホンダの象徴、「シビックタイプR レーシングブラックパッケージ」と同じ価格です。「待望のクーペ復活は嬉しい、でもこの価格は正直驚いた…」。それが多くの方の率直な感想ではないでしょうか。
ホンダがなぜ、これほど挑戦的な価格を設定したのか。
そこには、単なるコスト計算だけでは見えてこない、今のホンダが抱える課題と、新型プレリュードに託された特別な役割が存在するのです。この記事では、価格の背景を深掘りし、この価格をあなたが許容できるかどうかの判断材料を提示します。
【3つの理由】新型プレリュードはなぜ高い? 価格の内訳を解剖
まず、この挑戦的な価格が付けられた背景を3つの理由から解き明かしていきましょう。
理由1:「少量生産の専用ボディ」という宿命
新型プレリュードの価格を理解する上で最も重要なのが、このクルマが「少量生産の専用クーペボディ」を持つという点です。比較対象となる「シビックタイプR」は、世界中で大量に生産されるシビックのボディをベースに開発されているため、生産コストを抑えることができます。
一方、プレリュードは流麗なクーペフォルムを実現するためにボディパネルのほとんどが専用設計です。少量生産のために専用の金型などを起こせば、一台あたりのコストが跳ね上がるのは避けられません。
これが、価格が割高になった直接的な理由です。
しかし、この少量生産という背景こそが、プレリュードを単なる工業製品ではない特別な存在にしていることもまた事実なのです。
理由2:実は「全部乗せ」! 標準装備から見る価値
次に、装備内容に目を向けてみましょう。新型プレリュードは、通常であれば上級グレードのオプションとして設定されるような豪華な装備が、標準で多数搭載されています。
新型プレリュードの標準装備例
これらはあくまでも例ですが、内容を見るとまさに「全部乗せ」と言える充実ぶりです。もし同等の装備を他の車種でオプションとして追加すれば、数十万円の追加費用が発生することも珍しくありません。
一見すると高価に思える価格には、こうした豪華装備の価値が予め含まれていると考えれば、実はお買い得とさえ言えるかもしれません。
理由3:シビック e:HEVとの価格差約178万円! 数々の専用技術へのコスト
新型プレリュードのパワーユニットのベースとなっているのは、ホンダ独自のハイブリッドシステム「e:HEV(イーエイチイーブイ)」です。
同じパワーユニットを積むシビック e:HEV「EX」グレード(440万3300円)と比較すると、その価格差は約178万円にもなります。この差額はどこから生まれているのでしょうか。
それは、前述の「専用ボディ」や「充実した標準装備」に加え、新型プレリュードのためだけに与えられた数々の専用技術のコストと考えられます。
新型プレリュード専用装備・技術
これらの要素が積み重なり、「シビックの兄弟車」ではなく、全く異なる思想で造られた「大人のための特別なクーペ」としての価値を形成しているのです。約178万円という価格差は、その"特別感"に対する対価と言えるでしょう。
価格以上の価値あり? 新型プレリュードが提供する3つの「体験価値」
価格の理由がある程度見えてきたところで、今度は数字だけでは測れない、新型プレリュードを所有することで得られる「体験価値」に焦点を当ててみましょう。
価値1:「速さ」とは違う軸にある、大人のための「スペシャリティ」な時間
シビックタイプRが「速さ」を追求するピュアスポーツだとすれば、新型プレリュードが提供するのは「快適さ」「上質さ」「美しさ」で彩られた特別な時間です。その価値を、デザイン、内装、そしてクーペの常識を覆す実用性に分けて、それぞれ見ていきましょう。
デザイン:誰をも魅了する、低くワイドなクーペフォルム
まず目を引くのが、低く抑えられたボンネットからリアへと滑らかに流れる美しいフォルムです。ボディサイズは全長4515mm、全幅1880mm、全高1355mm。
特に注目すべきは、シビックより80mmもワイドな全幅で、これが独特の存在感と安定感を生み出しています。
デザインと引き換えの注意点
ただし、この流麗なデザインの代償として、薄いサイドウィンドウによる側方・後方の視界は正直良くありません。ワイドな全幅の影響を把握するために、購入前には必ず車庫入れなどを試乗で確認することをおすすめします。
内装:上質な内装と、長距離でも疲れない秀逸なシート
運転席に座れば、上質な素材で仕立てられた水平基調のインパネが迎えてくれます。前方が見やすく、運転に集中できる空間です。
シートは少し硬めで、腰回りをしっかり支える絶妙な座り心地。長距離移動でも疲れにくく、スポーティな走行でも姿勢が乱れません。
前席に電動調節機能がない点は惜しいですが、それを補って余りある快適性と言えるでしょう。
実用性:クーペの常識を覆す、優れた乗降性と居住性
スペシャルティクーペと聞くと、実用面を諦めがちですが、新型プレリュードは良い意味で期待を裏切ります。試乗をして、実用性の高さを感じた部分は以下の3点です。
新型プレリュードの実用性
驚くほど良い乗降性: 着座位置がハッチバックのシビックとほぼ同じ高さのため、腰の上下移動が少なくスムーズに乗り降りできます。これはクーペに乗りたい中高年の方にも嬉しいポイントです。
同乗者への配慮: 助手席はあえてサイドサポートを抑え、リラックスできる形状に。大切な人とのドライブを考えたホンダらしい配慮が光ります。
“使える”後部座席: 広くはありませんが、足が前席下に収まりやすく大人が座ることも可能です。片道20分程度の移動なら、2名乗車も十分こなせるでしょう。
このように実用性も大事にされたクルマです。シビックタイプRなどとは異なり、サーキットのラップタイムを削るためではなく、日常の中で美しさと快適な移動を楽しむための、まさに「大人のためのクーペ」なのです。
価値2:エンジン車の高揚感を再現する「e:HEV × S+シフト」という新たな技術
ハイブリッドカーでありながら、エンジン車の高揚感を疑似的に再現する「S+シフト」。正直なところ、この機能の評価は乗り手によって大きく分かれるでしょう。
エンジンと駆動輪が繋がっていないe:HEVの特性をあえて隠し、擬似的な変速フィールを演出することに違和感を覚える方もいるはずです。
しかし、これは「モーター駆動の滑らかさと、エンジン車のような官能的なフィーリングを両立させたい」というホンダの技術的な挑戦であり、「これからの時代のスポーツカーの楽しみ方とは何か?」というユーザーへの問いかけでもあります。
開発者によれば燃費の悪化は最小限とのことですが、この新しいフィーリングを「楽しい」と感じられるかどうか。それが、このクルマの価値を判断する上で重要な鍵となります。
価値3:「変革期のホンダ」を象徴する一台を所有する満足感と希少価値
「スポーティで“カッコ良いホンダ”のブランドイメージを取り戻したい」。
開発担当者が語ったこの言葉に、新型プレリュードのすべてが込められています。実用車メーカーのイメージが定着した現状を打破し、再び人々の心をときめかせるブランドへ。新型プレリュードは、そんな変革期のホンダの熱い意志が結晶した一台です。
少量生産であるという事実は、このクルマが単なる工業製品ではなく、特別なストーリーを持つモデルであることを意味します。かつてのNSXやS2000がそうであったように、作り手の情熱が宿る少量生産のスペシャルティカーは、時を経てその価値を高めていく傾向にあります。
この一台を所有することは、将来的な希少価値へと繋がっていく可能性も秘めているのです。
専門家による採点と評価まとめ
専門家として新型プレリュードを採点し、長所と短所をまとめました。購入を検討する際の参考にしてください。
| 外観 | 4.0 | ★★★★☆ |
|---|---|---|
| 内装・居住性 | 3.0 | ★★★☆☆ |
| 走行性能 | 5.0 | ★★★★★ |
| 運転のしやすさ | 2.0 | ★★☆☆☆ |
| 乗り心地 | 4.0 | ★★★★☆ |
| 燃費 | 4.0 | ★★★★☆ |
| 価格の割安度 | 2.0 | ★★☆☆☆ |
〇新型プレリュードの良い点
卓越した走行安定性:ワインディングから高速巡航まで、あらゆる道で上質な走りを楽しめる
心地よい移動空間:高級感のある内外装と充実装備が、移動時間を特別なものに変える
優れた燃費性能:ホンダ最新のe:HEVが、走りの楽しさと経済性を両立
×新型プレリュードの気になる点
割高に感じる価格設定:充実した装備や専用ボディという背景はあるものの、絶対的な価格は多くの人が納得しにくい水準にある
特有の視界:美しいデザインと引き換えに、特に後方視界は慣れが必要
乗り手を選ぶ先進性:「S+シフト」のフィーリングは、新しい体験として楽しめるかが鍵
購入を決断する前にチェックすべき3つのポイント
ここまで読んで、新型プレリュードへの興味がさらに深まった方も多いでしょう。最後に、購入をするかしないか、後悔のない決断を下すために、実車で確認すべきポイントをリストアップします。
ポイント1:試乗で必ず確かめるべきところ
視界:デザインの代償として、特に後方視界はタイトです。車庫入れなどを実際に試してみて、ご自身が許容できる範囲か確認しましょう。
乗降性:クーペとしては良好ですが、本当にご自身の体格やライフスタイルに合っているか、何度も乗り降りして確かめてください。
S+シフトの感覚:この新しいフィーリングは、あなたにとって「楽しい」と感じられるでしょうか? ぜひご自身で体験してみてください。
質感:写真では伝わらない内外装の素材感や作り込みに、600万円超の価値を感じられるか、あなたの目でじっくりと吟味しましょう。
ポイント2:シビック タイプRどちらが合うか比較する
新型プレリュードとシビックタイプRは近い価格ですが、その価値は全く異なります。
あなたがクルマに求めるものが「サーキットも走れる刺激と速さ」であるならば、選ぶべきはシビックタイプRです。
一方で、「日常に寄り添う快適さと、心を豊かにする上質さ」を重視するならば、新型プレリュードは最高のパートナーとなるでしょう。
| 新型プレリュード | シビックタイプR | |
|---|---|---|
| コンセプト | 大人のためのスペシャリティクーペ | サーキット最速を目指すピュアスポーツ |
| パワートレイン | 2.0L e:HEV(ハイブリッド) | 2.0L VTECターボ(ガソリン) |
| 得意なステージ | 高速道路、ワインディング、市街地 | サーキット、ワインディング |
| おすすめの人 | 日常に寄り添う上質さを求める人 | 非日常の刺激と速さを求める人 |
| 価格(税込) | 617万9800円 | 499万7300円〜617万9800円 |
ポイント3:すぐには買えない抽選販売という現実
最後に、現在(2025年9月4日)の販売状況についてです。ディーラーによれば「予約受注は、8月上旬に開始され、24日に一度締め切りました。購入希望のお客様が多く、抽選で決めています。今は2回目の予約受注を行っていて、9月21日に締め切り、再び抽選を行います」とのことです。
実際に多くの購入希望者がいるのは事実でしょう。しかしこれは、熱狂的な人気だけが理由ではなく、前述した「少量生産」という前提があることも冷静に見ておく必要があります。
いずれにせよ、今すぐ乗りたいと思っても手に入らない可能性があることは、購入を検討する上で重要な現実です。
結論:新型プレリュードは「高い」のか?
新型プレリュードの617万9800円という価格は、絶対額として見れば確かに高価です。しかし、その背景には少量生産の専用ボディという宿命や、充実した装備、そして独自の体験価値といった明確な理由が存在します。
このクルマは、万人受けする実用車ではありません。
しかし、その成り立ちや開発者の想いを理解し、提供される「スペシャリティ」な時間に価値を見出すことができる人にとっては、価格以上の満足感を与えてくれる、唯一無二の一台となる可能性を秘めています。
最終的に、この価値に投資する意味があるかどうかは、あなたの価値観とライフスタイル次第です。
購入を迷われているなら、ぜひ一度、ご自身でその真価を確かめてみてください。きっと、あなただけの答えが見つかるはずです。
【筆者:渡辺 陽一郎 カメラマン:茂呂 幸正/島村 栄二/森山 良雄/和田 清志 画像提供:本田技研工業】
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