ホンダの味付けを決める“マイスター”が極めたスーパーNSX! ホンダ 2代目NSXのファイナルを飾るType Sは世界最高峰のスーパースポーツだ
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
- カメラマン:島村 栄二・Honda
2代目となるホンダ NSXが、残念ながら2022年で生産を終えることになった。ホンダは、世界のNSXファンへ向けたファイナル限定車「NSX Type S」を限定350台発売する。日本向けはそのうち30台限りとなる。
新型NSX Type Sの開発を統括した本田技研工業 完成車開発統括部 車両企画管理部の水上 聡 LPL シニアチーフエンジニアに、ファイナルモデルに込めた想いについて伺った。
世界のトレンドを先取りしていた電動化スーパースポーツカー、2代目NSX
現行型のホンダ NSXは2016年、初代生産終了後10年近くが経過したタイミングで再デビューを果たした。
総アルミ製モノコックボディを持つ初代NSX(1990年~2005年)とは異なり、アルミなどの複合素材を用いた軽量・高剛性なスペースフレーム構造を採用。
ミッドシップレイアウトという基本は初代と同一ながら、2代目NSXでは3モーターハイブリッドシステムを4WDと組み合わせる独自の「SPORT HYBRID SH-AWD(Super Handling-All Wheel Drive)」を搭載。環境性能を強く意識した次世代の電動スーパースポーツを誕生させた。
ここ数年、欧州のスーパースポーツカーブランドであるポルシェ、フェラーリやマクラーレンも、ハイブリッドやEVといった電動スポーツカーを相次いでリリースしているが、ホンダはかなり早い段階でこうした世界のトレンドを先取りしていたことになる。
NSX Type Sの開発を統括したのは、ホンダ車の動的性能を統括する“マイスター”水上 聡氏
本田技研工業 完成車開発統括部 車両企画管理部の水上 聡 LPL シニアチーフエンジニアは、新型NSX Type Sについて「もともとType Sのネーミングは決まっておらず、またファイナルということでもなく、まず純粋に“NSXを極める”ことをテーマに開発を始めた」と語る。
もともとホンダの開発部門で、ダイナミック性能(動的性能)領域を専門に長く携わってきた水上氏。2014年には、ホンダのダイナミック性能統括責任者(Meister・マイスター)に任命された。
つまり水上氏は、ホンダ車の運動性能の味付けを決める総料理長。ホンダ車の走りにとって非常に重要な役割を果たす人物なのである。
そんなマイスターが、ホンダ最高峰のスーパースポーツカーであるNSX開発責任者に就任した。一部改良を実施した2019年モデル(2019年5月発売)では、NSXの動的性能やスタイリングなどを格段と進化させ、さっそく世界のスーパーカーファンを唸らせている。
今回のType Sは、その2019年モデルに込めた進化の延長線上にあると言って良いだろう。
目指したのは「最高峰のスーパーNSX」! 限界域からEVモードまで全域の性能を底上げする狙いがあった
『とにかくスペックを極めることに注力しました。システム最高出力を610psまでアップし、世界のスーパーカーと比べても恥ずかしくない性能を達成したのです』と、スペックにはゴール設定があったことを明かす。
『そしてパフォーマンスのためどれだけ軽量化するか。パフォーマンスに相応しい格好良いデザインに見合ったエアロダイナミクス(空力効果)を発揮し、体感出来るか。明確にしたかった。』とこちらも目的がはっきりしている。
しかしマイスターがこだわったのは、サーキットレベルの限界領域の話だけではない。
例えば、深夜の住宅街などで静かにEV(電気自動車)モードで走らせることが出来る「Quiet(クワイエット)モード」。ここでの、EVでの加速性能やEV領域の拡大を実施した。
低速域でも我慢せずNSXらしい走りの楽しさが味わえるよう、かなり追求したのだという。次世代のスポーツカーらしい新たな楽しみ方として、ここは譲れなかった。
このように新型NSX Type Sは、全方位でNSXのパフォーマンスを底上げする狙いがあった。
「最高峰のスーパースポーツ、スーパーNSXです」
水上氏はNSX Type Sについて『電動化技術を持った最高峰のスーパースポーツ、スーパーNSXです。カッコイイでしょ』と、実車を前にわが子のように目を細めていた。
『残念ながらディーラーで試乗できるようなクルマではない。しかしその姿を見て“おお! スゴイ! カッコイイ!”と言っていただければ、もうそれだけ最高に幸せです』と、マイスターをここまで満足させたNSX Type S。
渾身の作品を手に入れられる贅沢な人は、日本でわずか30名限り。価格は2794万円となる。
[筆者:MOTA(モータ)編集部 トクダ トオル/撮影:島村 栄二・Honda]
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