盤石な売れ行きを維持するN-BOX! 200万台達成の理由はカスタムとノーマル版の対等な強さにあり
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
- カメラマン:Honda・DAIHATSU
ホンダの軽スーパーハイトワゴン「N-BOX」が売れ続けている。ホンダ車最短記録で累計200万台の販売記録を達成するなど、その勢いは今なお続いている。スズキやダイハツ、日産などからも対抗車が登場する中、ホンダが強い理由とは。また今後の展望に死角はないのだろうか。あらためてホンダ N-BOXの人気を探ってみよう。
ホンダ史上最速! 発表後9年あまりで累計200万台を販売したN-BOX
ホンダの軽自動車「N-BOX」が売れ続けている。その安定した人気ぶりは驚異的で、2011年12月に初代N-BOXがデビューして以来、わずか9年5ヶ月で累計200万台を販売したほどだ。これはホンダでも過去最高の記録だという。
軽自動車の販売ランキングにおいても、2015年から2020年の5年連続で年間1位を獲得し続け「最も売れている軽自動車」の地位を守り続けている。
現行型のN-BOXは、2017年9月にフルモデルチェンジした2代目。既にデビューから丸4年が経過する。各社からも競合モデルが多数登場している中、今なお人気を維持し続けている理由と、将来の動向について探ってみよう。
軽スーパーハイトワゴンに必須の“カスタム”と“ノーマル”、N-BOXだけはちょっと傾向が違っていた
ホンダ N-BOXが属するのは、軽スーパーハイトワゴンのカテゴリーだ。背を高くしたことで広い室内空間を持ち、後席左右にスライドドアを装着することで実用性も向上させた。ミニバンのような使い勝手の良さから、ファミリー層を中心に支持を集めている。
2003年、「タント」でこの市場を真っ先に開拓したのはダイハツだ。その後スズキは「スペーシア」を、日産は「ルークス」を導入するなど、各社から対抗車が登場している。
そんな中でホンダが強い理由は何だろう。
ベーシック版とカスタム版の販売比率、N-BOXだけは5:5の理由
軽自動車では、ベーシック版に加え、エアロパーツなどで内外装をドレスアップした上級版(多くは“カスタム”と呼ばれる)が設定されるのが一般的だ。N-BOXの場合もベーシック版「N-BOX」に加え、上級版の「N-BOXカスタム」が用意され、幅広いユーザーの需要に応えている。
他社も同様の傾向にあるが、N-BOXが少し違うのはその販売比率だ。
近年、小型車などから軽自動車へ移行してくるユーザーが多い。そのため簡素なベーシック版よりも、質感の高いカスタム版が好まれる傾向にある。多くの場合、6:4や7:3で“カスタム”が支持されている。
しかしN-BOXは5:5でノーマルもしっかり売れている。これはなかなか珍しいことだ。もちろんカスタムが売れていない訳ではないので、ノーマルの販売増が販売台数全体の底上げに貢献していることになる。
軽スーパーハイトワゴンのノーマル版は、若いママユーザーを強く意識するあまり、かわいらしさを強調したデザインやカラーが与えられることも多い。
それに対しホンダ N-BOXのノーマル版は至ってプレーンなデザインが特徴。愛嬌を感じさせつつも過剰ではないから、老若男女問わず受け入れやすい。質感も上々だから、カスタム版にひけ目を感じることがないのも嬉しい。結果として、ノーマル版が非常に選びやすいのだ。
背の低いスライドドア車「ムーヴキャンバス」の台頭が、軽の勢力図を変える契機になる!?
他の軽メーカーでは、社内の競合車が勢力を伸ばしているケースも
他の軽自動車メーカー、特にダイハツやスズキの場合には、直接のライバルとなる軽スーパーハイトワゴンの他にも、数多くの軽自動車ラインナップが用意されている。これがライバル車の販売台数に影響を及ぼすケースも少なくない。
例えばダイハツの場合、タント購入検討者が同じダイハツの「ムーヴキャンバス」と迷うケースが多くなってきたという。
ムーヴキャンバスは、タントよりも少し背が低いハイトワゴンだが、他社にはない後席両側にスライドドアを備えたことで、十分な実用性を確保した。
この動向は、軽スーパーハイトワゴンの巨大な空間は過剰だと判断するユーザーが、少しずつ増えている証拠なののかもしれない。
N-BOX一強の状況は、いっぽうでリスクもはらんでいる
いっぽうでホンダの軽は、N-BOXだけがダントツで売れている。ホンダの販売店で軽を求める購入者の多くは、N-BOXの指名買いという状況にあるのだ。N-BOX以外のホンダ軽の販促は大きな課題ではあるが、ひとまずN-BOX一強の状況はしばらく維持出来るだろう。
しかしムーヴキャンバスの人気ぶりは、軽スーパーハイトワゴンの需要を落ち着かせ、ハイトワゴン系の勢力拡大へ移行する可能性を示唆しているようにも映る。杞憂かもしれないが、N-BOX一強のホンダにとっては逆に大きなリスクともなり得る話だ。
今後の市場動向を注意深く見守っていく必要があるだろう。
[筆者:MOTA(モータ)編集部 トクダトオル/撮影:Honda・DAIHATSU]
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