ホンダ フィット EV 試乗レポート/大谷達也(2/2)

  • 筆者: 大谷 達也
  • カメラマン:本田技研工業株式会社/大谷達也
ホンダ フィット EV 試乗レポート/大谷達也
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ユーザーライクな降坂回生制御機能

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もうひとつ、フィットEVで目新しいのが降坂回生制御と呼ばれる機能である。

これは、坂を下っていることをフィットEV自身が認識すると、アクセルペダルから足を離してもスピードが一定になるように回生量を自動的に調整してくれるのだ。

実際に使ってみると、スピードの出し過ぎをクルマが勝手にコントロールしてくれるのでとても便利だった。しかも、速度が上がってはブレーキを踏み、また速度が上がってはブレーキといったことを繰り返す必要がないから、そのたびに乗員の首が前後にガクガクすることもない。便利で快適、しかも安全な装備といえる。

回生といえば、フィットではブレーキを操作部と動作部で分離した一種の「バイワイア構造」を採用。このうち、動作部に応答性能の優れた電動サーボブレーキシステムを用いることで、よりきめ細かい回生制御を実現し、電費性能の改善に役立てている。

もう少しわかりやすく説明すると、EVのブレーキはハイブリッド車などと同じで、機械ブレーキと回生ブレーキを組み合わせた協調ブレーキ制御を行なっている。

ただし、従来はブレーキシステム全体の反応が鈍かったため、ブレーキの立ち上がり時などでは機械ブレーキに頼る割合が大きかった。これを、フィットEVではレスポンスのいい電動サーボブレーキに置き換えることにより、回生ブレーキが作動する領域を拡大。回生量を増やしてエネルギー効率を高めたのである。

このブレーキは、一定の力でブレーキを踏んでいるのに制動力が変化する協調ブレーキ制御にありがちな悪癖がなく、しかも踏み応えがカッチリとしているなど、フィーリング面でも好印象だった。

技術者の“いい自動車作り”が快適な乗り心地を生み出す

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フィットEVは、前述の電動サーボブレーキシステムによって回生量を増やしたことに加え、車載充電器の効率改善、パワートレイン全般の効率向上、バッテリーの進化による充放電損失の低減、さらには空力抵抗や転がり抵抗の低減を図り、現時点で世界最高となる106Wh/kmの電費性能を実現している。

ただし、12月に発売されるトヨタeQの電費性能は104Wh/kmでフィットEVを上回る。もっとも、eQは航続距離が100kmと短いのが難点。これに対し、フィットEVは225kmの航続距離と106Wh/kmの電費性能を両立している点が立派だ。

でも、フィットEVでいちばんよかったのは、その乗り心地だった。

車重が重いせいもあるのだろうが、普通のフィットのようにポンポン弾むような傾向がなく、どっしりと落ち着いた乗り心地が味わえる。しかも、路面からの突き上げ感がなく、ソフトで快適。

実は、車重が重くなったことに対応してリアサスペンションがダブルウィッシュボーン式に格上げされているけれど、乗り心地をここまで改良したところにも、技術者たちが「まずはいい自動車を作りたい」と考えていたことが伝わってくる。

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これほど乗り手の気持ちを考え尽くして開発されたフィットEVだけれども、残念ながら一般には市販されず、自治体や企業向けに200台がリース販売されるだけ。

その理由に関する明確な説明はなかったものの、現状の充電インフラでは、大量のEVをまだ支えきれないという思いがホンダにはあるようだ。

EVと充電インフラは「にわとりが先か、たまごが先か」の関係にあるような気もするが、ホンダなりの見解として少量のリース販売に絞ったことも、自動車メーカーの責任感のあり方として理解できるような気がする。

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大谷 達也
筆者大谷 達也

1961年、神奈川県生まれ。エンジニア職を経験後、1990年二玄社に就職し、CG編集部に配属となる。以来、20年間にわたり同誌の新車情報、モータースポーツに関する記事を企画・編集・執筆。2010年3月フリーランスとなる。現在もCGの編集・執筆業務に携わる傍ら、ENGINE、GENROQ、東京中日スポーツ新聞、レーシングオンなどにも寄稿。日本モータースポーツ記者会会員。記事一覧を見る

なかの たくみ (MOTA編集長)
監修者なかの たくみ (MOTA編集長)

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