ホンダ 新型CR-V(ガソリン/FF/5人乗り)試乗│ライバル多数! 激戦のミドルSUVクラスで復活を遂げるCR-Vに勝ち目はあるのか!?
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:和田 清志
国内でのSUV人気の流れに乗り、CR-Vが復活!
CR-Vは、ホンダのSUVとしては先駆け的な車種であった。1995年に発売された初代モデルは、適度なサイズで車内も広く、高い人気を得た。しかし、その後は海外指向を強めてボディが大柄になり、デザインも日本のユーザーの好みを離れて売れ行きを落とした。2013年に発売された同社のコンパクトSUVであるヴェゼルが好調に売れたこともあり、CR-Vの国内販売は4代目で打ち切られてしまう。2016年に発売された5代目は、当初国内では発売されなかった。
この5代目CR-Vが、2年を経て改めて国内で発売されることになった。直列4気筒1.5リッターのガソリンエンジン搭載車は2018年8月31日、ハイブリッドは11月1日に発売される。
復活の理由は、SUVが好調に売れて、ヴェゼルだけではラインナップが不足するからだ。オデッセイのようなLサイズのホンダ車からSUVに乗り替えるには、ヴェゼルでは小さいという事情もある。
そこで今回は、発売開始された新型CR-V 1.5リッターターボを搭載した2WD(前輪駆動)モデル「EXマスターピース」(5人乗り)に試乗した。
アメリカンな大柄・迫力ボディがカッコいいが、後方視界にはやや難アリ
新型CR-Vの運転席に座ると、全幅が1855mmに達するから、ボディが相応にワイドに感じる。ボンネットは着座位置を高めに設定しても、手前だけが若干見える程度だから、車幅やボディの先端位置が分かりにくい。インパネの上端部分も少し高く、小柄なドライバーが購入する時は前方の見やすさを確認したい。
サイドウインドウの下端も高めで、側方視界はあまり良くない。ボディ側面のウインドウが3分割され、荷室の左右にも備えたから斜め後方の視界を確保するが、見やすいとはいえない。真後ろのウインドウも左右が少し狭い。購入する時は、販売店の試乗車で縦列駐車や車庫入れを確認すると安心だ。
リアルなステップ変速を持つCVT+1.5ターボで運転する楽しさが得られる
新しいCR-Vの1.5リッターターボエンジンは、1800回転以下では駆動力が落ち込む。この回転域では少し耳障りなノイズも発生するが、アクセルペダルを踏み増すとCVT(無段変速AT)が即座に変速を行う。エンジン回転が2000回転付近まで高まり、パワー不足を解消する。
従って頻繁に違和感が生じるわけではないが、エンジン回転が下がった状態で素早くアクセルペダルを踏んだ時などは、反応の遅れが気になる。若干の時間を経た後にエンジンが2000回転付近に高まり、そこから本格的な加速が始まった。
この低回転域を除けば、ターボを装着しない自然吸気の2.4リッターエンジンに近い感覚で運転できる。実用回転域の駆動力に余裕があり、高回転域の吹き上がりも活発だ。
アクセルペダルをフルに踏み込むと、エンジン回転が6000回転まで高まった後、5000回転に下がり、再び上昇を開始した。Dレンジでもこのステップ変速制御が行われる。無段変速のCVTに、有段変速風のメリハリのある運転感覚を与えるのがねらいだ。
一般的にステップ変速は歯切れが悪く、余計なことはせずに加速効率が最も高い回転域を保って欲しいと感じるが(これを可能にするのがCVTのメリットでもある)、CR-Vのステップ変速はけっこうリアルだ。CVTの変速感覚が嫌いなユーザーには、相応のメリットがあるだろう。有段式の疑似変速が可能なパドルシフトも備わり、峠道などでは運転の楽しさを味わえる。
走行安定性はSUVというより少し背の高いワゴンの感覚
新型CR-Vの走行安定性は、SUVの中では高い部類に入る。最低地上高は200mm(4WDは210mm)に達するが、カーブを曲がる時に腰高な印象はない。ハンドルを切り込んだ時に、ボディが唐突に傾く違和感を抑えた。操舵に対して、鈍さを感じさせず車両の向きが変わる。このあたりはSUVというよりも、少し背の高いワゴンの感覚だ。
カーブを曲がっている時も、旋回軌跡をあまり拡大させない。危険を回避するために、曲がっている最中にアクセルペダルを戻す操作をしても、後輪を中心に4輪の接地性が高いから安心できる。このような挙動は今日の新型車では当たり前になりつつあるが、CR-Vも熟成させた。
乗り心地は、時速20~40キロの低度域では、路面の状態によって上下に揺すられる印象になる。それでも段差を乗り越えた時の突き上げ感は抑えた。速度が高まると快適性が向上する。
タイヤサイズは18インチ(235/60R18)で、銘柄はブリヂストン・デューラーH/L33であった。指定空気圧は前輪が240kPa、後輪が220kPaだ。燃費スペックが重要なエコカーの場合、往々にしてタイヤの性能のみならず空気圧を高めてまで低燃費にこだわる傾向にあり、その分乗り心地などにしわ寄せがあったりする。しかしSUVモデルの新型CR-Vはそこまで神経質な性格にはなっておらず、バランス良く仕上げられている。
悪くはないが、価格を考えるともう少し上質であってほしいインテリア
インパネの視認性と操作性はおおむね良い。中央部分が少し手前に張り出すから、左端のエアコンスイッチにも手が届きやすい。
新型CR-Vの質感も、ミドルサイズのSUVとしては悪くないほうだ。しかし、前輪駆動モデルでも359万1000円の価格に達する(4WD・7人乗り仕様は4,030,560円、ハイブリッド5人乗り・4WD仕様は4,361,040円)最上級の「EXマスターピース」グレードという、価格帯300万円台後半から400万円台のプレミアムモデルとして捉えると、もう少し上質であって欲しい。
柔軟なソフトパッドを使う箇所が少なく、インパネにはステッチを入れたように見えるが、実際はイミテーションだったりする。こういった処理は、例えばトヨタ シエンタのような価格が200万円以下のコンパクトな車種に使うなら効果的だが、300万円を大幅に超えるとむしろ逆効果だ。ステッチパターンなどは使わず、別の表現方法を採用した方が良い。
木目調パネルも光沢を抑えて「マット感」を表現したとされるが、違和感も伴う。EXマスターピースはシート生地が本革だから、使うなら本木目で、これを避けるならやはり木目調とは違う表現方法が好ましい。せっかくの本物感が下がってしまう。
前席はサイズに余裕を持たせ、肩まわりのサポート性も良い。背もたれの下側は適度に硬く仕上げられ、腰の近辺をしっかりと支える。
後席にもボリューム感があり、座り心地は満足できる。背もたれの高さ、座面も奥行も十分に確保した。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半に達する。後席に座る乗員の足が前席の下に収まりやすく、足元空間はゆったりしている。電動パノラミックサンルーフを装着するが、頭上には握りコブシ1つ分の余裕があった。
7人乗り仕様の3列目シートは片道45分程度の移動であれば乗車も可能
試乗車は2列シートの5人乗りだったが、別の車両で3列シートの7人乗り仕様の新型CR-Vもチェックした。7人乗りはハイブリッドには設定されず、1.5リッターターボのみになる。
7人乗りの2列目シートには、5人乗りには装着されないスライド機能が備わる。2列目を後端までスライドさせた時のポジションは、5人乗りの固定シートと同じで、足元空間を十分に確保できる。ただしこの状態では、3列目の足元空間が狭く、多人数乗車はできない。
そこで2列目を前方にスライドさせて3列目に足元空間を分け与えるが、この時にメリットを発揮するのが、先に述べた前席下側のタップリした空間だ。2列目を最前端までスライドさせ、膝先空間を握りコブシ1つ分まで詰めても、窮屈に感じない。床と座面の間隔が十分に確保され、2列目に座る乗員の足が1列目の下側にスッポリと収まるからだ。
この状態にすると、3列目にも大人がどうにか座れる。ミニバンと違って床と座面の間隔が不足するから、膝は大きく持ち上がるが、身長170cmの大人が多人数乗車して膝先に約35mmの余裕があった。3列目に座る乗員の足が2列目の下側に収まるように、床を少し掘り込んだから極端に窮屈ではない。3列目の座面に柔軟性を持たせたこともあり、片道45分程度の移動であれば多人数乗車が可能だ。
7人乗りの価格は、5人乗りに比べると、EXが19万1160円、EXマスターピースは本革の使用量が増えるために22万3560円高い。SUVの3列目シートは通常は7~16万円高の設定が主流だから、新型CR-Vは割高に感じられる。それでも実用性を伴うので、稀に短距離を多人数で乗車する使い方には適する。
荷室の容量は、7人乗りになるとアンダーボックスが狭まるが、実用的には十分だ。リヤゲートの角度を寝かせていないので、背の高い荷物も積みやすい。
激戦のライバルSUVと競うためには全体に高めな価格設定の見直しが必要
以上のように新型CR-Vは、動力性能、走行安定性、居住性は十分に満足できる。問題は乗り心地と内装の質感だ。特に後者は価格が300万円を大幅に超える車種としては、向上させる余地がある。
価格についていえば、仮に30万円安ければ、今の質感でも競争力が強まる。価格の最も安い2WDターボのEX(5人乗り)は、現状では323万280円だが、30万円安ければ約293万円だ。この価格で1.5リッターターボとカーナビなどが標準装着されれば、選ぶ価値が強まる。
ちなみに日産 エクストレイル、マツダ CX-5、スバル フォレスター、三菱 エクリプスクロスといった売れ筋ミドルサイズSUVの買い得グレードも、4WD仕様を含めて280~300万円の間に集中する。この価格帯に収まると、たとえ2WDでも選びやすくなるのだ。わずかな金額の違いだから、値引きまで含めれば実質負担額の順列が変わることもあるが、メーカー希望小売価格が与えるイメージの違いは大きい。
[Text:渡辺 陽一郎/Photo:和田 清志]
ホンダ 新型CR-V の主要スペック | |
---|---|
試乗車グレード | EX-Masterpiece[FF/5人乗り] |
メーカー希望小売価格(消費税込) | 3,591,000円 |
JC08モード燃費 | 15.4km/L |
WLTCモード燃費 | ーー |
市街地モード燃費 | ーー |
郊外モード燃費 | ーー |
高速モード燃費 | ーー |
全長 | 4,605mm |
全幅(車幅) | 1,855mm |
全高(車高) | 1,680mm |
ホイールベース | 2,660mm |
乗車定員 | 5人 |
車両重量(車重) | 1,560kg |
エンジン種類 | 直列4気筒DOHC ガソリン直噴ターボエンジン |
駆動方式 | FF(前輪駆動) |
排気量 | 1,496cc |
エンジン最高出力 | 140kW(190PS)/5,600rpm |
エンジン最大トルク | 240N・m(24.5kgf・m)/2,000~5,000rpm |
モーター最高出力 | ーー |
モーター最大トルク | ーー |
トランスミッション | 7スピードモード付 無段変速オートマチックトランスミッション(CVT) |
燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
タイヤサイズ | (前後)235/60R18 |
愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!
-
一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?
これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。
-
一括査定は本当に高く売れるの?
これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は最短3時間後、最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。