国内から撤退したCR-VとRAV4が、なぜ今復活するのか?

国内復活を果たすCR-VとRAV4

SUVのホンダ CR-Vとトヨタ RAV4が、新たに発売される。いずれもかつて国内で売られて終了した経緯があるから、復活ともいえるだろう。

販売店によると、新型CR-Vの生産や納車を伴う「発売」は、直列4気筒1.5リッターターボエンジン搭載車が2018年8月30日、2リッターエンジンをベースにしたハイブリッドは9月末とされる。

しかし受注は7月14日に開始され、メーカーに注文を入れることも可能だ。今は生産を合理化するため、車両を一切見られない状態で受注を開始して、顧客を待たせる売り方が当たり前になった。CR-Vも同じパターンだ。

新型RAV4の発売時期は今のところ未定とされるが、一部の販売店からは「2018年の末」という話が聞かれる。

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ボディの肥大化と共に海外指向となったCR-VとRAV4

ホンダ CR-Vの初代モデルは、比較的コンパクトなシティ派SUVとして1995年に発売された。ボディサイズの割に車内が広く、ファミリーユーザーを中心に人気を得た。3ナンバー車でも視界が優れ、運転しやすいことも特徴だった。

ところがデビュー後はフルモデルチェンジの度に海外指向を強め、2006年に発売された3代目では、全幅が1800mmを超えた。2011年発売の4代目まで含めて売れ行きが下がり、2016年に生産を終えている。5代目は北米や中国で販売されているものの国内では発売されなかったのだが、急遽日本でも販売される事になった。

トヨタ RAV4の経緯も似ている。初代モデルの発売は1994年で、5ナンバーサイズのコンパクトな3ドアボディで登場した。翌年に5ドアを加えて、ファミリーユーザーの間でも人気を高めた。

それが2000年発売の2代目では3ナンバー車に拡大され、2005年の3代目では全幅が1800mmを超えてしまう。トヨタでは1997年に上級SUVのハリアー、2007年には3列シートも選べるRAV4のロング版的なヴァンガードを加えたから、RAV4はますます人気を失った。従って4代目は国内販売されなかったが、5代目は国内でも復活させることになった。

なぜ今になって国内復活なのか?その理由は2つ

5代目のCR-VとRAV4は、日本国内で売ることを想定せずに開発されたが、今の商品開発ではそれが当たり前だ。日本のことを考えるのは、販売比率が約35%を占める軽自動車と、20%のコンパクトカー、15%のミニバンだけだ。ほかはセダンを含めて大半が海外向けに開発され、国内での売れ行きを下げた。CR-VやRAV4もクルマ造りが国内を離れて北米などの海外向けになり、日本のユーザーが失望して販売不振に陥って、国内販売を終えた。

それを今になって2車種とも復活させる理由は2つある。

まずはSUVがブームの傾向にあることだ。SUVはもともと悪路の走破を視野に入れて開発され(CR-VやRAV4も最初は4WDのみで2WDは選べなかった)、大径タイヤを装着して最低地上高にも余裕があり、外観には迫力が伴う。その一方でボディの上側はワゴン風の形状だから、後席を含めて居住性が快適で、荷室も使いやすい。

この外観のカッコ良さと実用性の両立が、子育てを終えてミニバンを卒業した中年のユーザーに受けた。ミニバンを一度味わうと、天井の低いセダンやクーペには戻れない。そして若い頃はクルマ好きで、今でも興味があるから走りやデザインにはこだわりたい。このニーズにSUVがマッチした。

またクルマ好きの間では欧州車の人気が高いが、SUVは高重心で走行安定性の確保も難しいから、以前の欧州メーカーはSUVに消極的だった。それが技術的な克服と北米の需要に押され、2000年頃から欧州のプレミアムブランドもSUVを手掛け始める。これが輸入されてSUVのイメージを高めた。

いつまで続くか未知数のSUV人気にメーカーは群がる

2つ目の理由は、国内が儲からない市場になっていることだ。前述のように軽自動車が新車販売の35%、コンパクトカーが20%を占めて、しかも売れ行きが伸び悩むから、車両販売に伴う利益の確保が難しい。そこで販売会社は点検や車検、保険の誘致などを奨励するが、SUVは価格帯が高いという事で利益率も高い。今では貴重な「儲かるカテゴリー」だから、SUVに群がっている。

以上のような経緯でSUVが注目され、販売面で有望なカテゴリーになっている。そこでCR-VやRAV4の復活に至ったというわけだ。

ただしSUVの人気がいつまで続くかは未知数だ。2018年1~6月の登録台数を見ると、SUVの販売1位はトヨタ C-HRだが、売れ行きは前年の1~6月に比べて半減した。2位のホンダ ヴェゼルも14%の減少だ。トヨタ ハリアーは22%、マツダ CX-5も14%減った。

SUVの売れ方は以前のスポーツカーに似ている

SUVの売れ方は以前のスポーツカーに似ていて、発売直後は盛り上がるが、落ち込むのも早い。趣味性の強いクルマでは、欲しいユーザーは発売直後に購入するから、浮き沈みが激しいのだ。

その意味で居住空間や荷室の広い実用的なヴェゼルは、SUVの中ではコンパクトカー的に安定して売れるが、今は発売から4年以上を経て対前年比のマイナスが続く。

この状況を考えると、CR-VやRAV4を国内に導入しても、堅調に売れるとは限らない。しかもこの2車種は、販売1位のC-HRと2位のヴェゼルに比べるとボディが大柄で価格も高い。ホンダのSUVはコンパクトなヴェゼルだけだが、トヨタには上級のハリアーもあるからRAV4は埋もれる可能性がある。CR-Vも含めて「扱っていないよりはマシ」という程度の売れ行きで推移することも考えられる。

今のメーカーはユーザーや販売現場の気持ちが分からないのだろう

そしてホンダ シビック、トヨタ ハイラックスにも当てはまる話だが、国内で廃止したクルマの復活は、いかにも御都合主義的で見苦しい。一度は「日本はもう相手にしません」と見限って海外へ出ていきながら、ちゃっかり戻ってきている。

ユーザーは廃止の時点で裏切られた寂しい気分を味わい、他メーカーに乗り替えることも多い。販売現場も辛い。それが出戻るのだから、販売のモチベーションも上がらず、ユーザーにも良い影響は与えない。

今のメーカーは、こういったユーザーや販売現場の気持ちが分からないのだろう。先般もネッツトヨタ店のオーリスを廃止して、トヨタカローラ店で、事実上のオーリス後継車となる新型カローラスポーツを発売した。一部のユーザーは、わざわざ販売店を変更して、オーリスから新型カローラスポーツに乗り替えている。今は一事が万事、こんな具合だ。

[Text:渡辺陽一郎]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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