シビック タイプRユーロ 試乗レポート(3/3)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
セダンにひけを取らない高回転の気持ちよさ
エンジンは、基本的な構成要素は同じで、NSX製法と呼ぶヘッドポート処理など、高度な手法はセダンと共通だが、細部が微妙に異なり、スペック的にはセダンよりも若干ダウンしている。センタータンクのため、排気系の取り回しにおいてセダンよりも若干ハンデがあることも影響している。
また、車両重量はセダンよりも60kg重い。これらに対し、エアクリーナー内にレゾネーターを配置したり、VTECのハイバルタイへの切り替わりポイントを低めたほか、ギア比については、1、2、3速をローに振り、立ち上がり加速を4、5、6速のハイに振って高速での伸び感を得るなど、動力性能を最適に味付けしている。
また、エンジン2次バランサーにより、騒音や2次振動の低減を図っている。こうして、持ち前の高回転型のキャラクターを損なうことなく、実用域でも扱いやすいレスポンスを確保している。自然吸気エンジンとしては、世界最高峰の気持ちよさを誇っており、セダンにまったくひけをとらない。
ちなみに、筑波サーキットでのラップタイムは、素の状態ではセダンのほうが3秒ほど速いとのこと。ところが、そのうち2秒はRE070を履くタイヤのおかげで、それをユーロに履かせるだけで、2秒もタイム短縮できるそうだ。
つまり、エンジンスペックで劣り、足まわりに現実的なセットアップを施しているにもかかわらず、その差はわずか1秒というわけだ。これはユーロのもともとの素性のよさを物語る一面でもある。
NSXもS2000も生産中止になり、F1も撤退してしまったホンダだが、持ち前のスポーティな走りにかけるスピリッツが萎えていないことは、このクルマに触れて改めて実感させられた次第。
もっとも、このクルマが日本で販売されるに至って一番喜んでいるのは、むしろホンダの開発陣かもしれない・・・。こうしたクルマながら、車両価格が300万円を切ったことも画期的だと思う。そして、セダンのタイプRでは、乗り心地が固すぎて購入を躊躇していた人にとっても、こちらなら大丈夫だろう。
また、下世話な話だが、将来的にプレミアが付くことも予想される。気に入った人は、あれこれ考えるまでもなく、まだ数に余裕があるうちにオーダーを入れておくことをお勧めする。
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