ユニークコンパクトカー 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
名車チンクエチェントを現代的に再現
ベーシックなコンパクトワゴンであるパンダのプラットフォームやパワートレインをベースに、500=「チンクエチェント」と呼ばれた往年の名車をモチーフとしたボディを載せたという成り立ち。オリジナルに比べると駆動方式もスケールも異なり、あくまで雰囲気を重視して再現したといったところだろう。エンジンは1.2Lだが、「500」のネーミングにはこだわったようだ。
エクステリアは、いろいろな箇所にメッキをアクセントに使っているのが印象的。もしもチンクエチェントが現代に存在したら…といった感じのスタイリングである。
走りの印象もパンダに通じるが、いくらか洗練されている。乗り心地は市街地では少々跳ね気味の印象はあるが、速度が高まるにつれてフラットになっていく。また、おそらくパンダより重心が低くなっているはずであり、足まわりのセッティング自体も幾分こなれている。快適性全般については、現在の同クラスの日本車の水準から比べるといたらない印象もあるが、それには目をつむろう。
1.2Lエンジンは、排気量からイメージするよりもパワフルな印象で、高回転型である。さすがに低速トルクが薄く、後述するミッションとの組み合わせで、ゼロスタートではもたつく印象もあるが、2500rpmあたりの中速域から元気になっていく。また、ギア比が1速と2速が離れ気味で、日本の交通環境下では多用することになる2速がハイギアードすぎて、坂道では上らなくなるなど、少々扱いにくい面はある。
2ペダルMTのデュアロジックは、相変わらず変速に時間を要するし、ATのような出足のよさもなく、出来がいいとはいい難いが、パンダのものよりはずいぶん洗練されている。
ミニのストレッチバージョン
クラシックミニにも存在したストレッチバージョンが、現行ミニにおいて復活したのがこのモデルだ。ちなみに車名の「クラブマン」は、クラシックミニでは1970年代に存在した、当時としては現代的なルックスを与えたミニの名称であった。
スタンダードのミニに比べて、ホイールベースが80mm、全長が240mm拡大している。リアドアには、上下に開くハッチバックタイプではなく左右50:50に観音開きとなるドアが、また、右側スイングドアの後方にも観音開きとなるドアが与えられている。
デザイン的には単純にストレッチしているようで、横から見ると、立ち気味とはいえそれなりに角度のついたフロントウインドウに対し、ほぼ直角に切り落とされたリアとの間が、やや間延びしているように感じられなくもない。そのぶんスペースは確実に拡大しており、使い勝手を考えるとこちらのほうが向上しているのは間違いない。
走った印象では、スタンダードのミニで感じられたハンドリングのよさはそのまま受け継いでいる。「FFのBMW」と評されるフットワークは健在で、ストレッチによるボディ剛性の低下もまったく感じられない。
さらにロングホイールベース化による恩恵が見て取れる。もはやミニに乗っているという感覚は希薄で、もっと大きなクルマに乗っているような印象となっている。直進時の安定性が増し、コーナリングの感覚も、コンパクトなクルマに乗っている感覚ではない。
今回の撮影車両は1.6Lの自然吸気エンジンを積むミニクーパークラブマンだが、ごく普通の使用状況下では動力性能的にはこれで十分。ただし、ATでありながら、電制スロットルとのマッチングの問題だと思われるが、踏みこんだとき、あるいはオフにしたときの反応に、なぜかCVTのような引っかかり感がある。そのあたり、もっと洗練されてほしい部分である。
普通のクルマとして使える走り
初代は純コミューターであり、オシャレなデザインにも強烈なインパクトがあり、小さいながらもすごく存在感のあるデザインだった。
2代目は、デザイン、コンセプトを受け継ぎながらも、ボディサイズは拡大した。ライト類もあっさりとした、モダンなデザインになった。一人前のクルマとして使えるようにする上で、このサイズアップはやむなしだったのだろう。プラットフォームも全体的に一新されている。2720mmと180mmも全長が伸ばされ、ホイールベースもトレッドも広がっている。車重は40kg増加した。
初代はピッチングが激しく、高速移動はおろか、市街地を移動するコミューターとしても、乗り心地面はどうかと思うほどだった。しかし2代目は、高速道路でもピッチングが相当に抑えられている。このサイズの中でホイールベースが違うというのは、本当に効いてくるのだろう。同時に、乗り心地全般についてもよい方向に作用している。
排気量1Lまで拡大されたエンジンには、2ペダルMTが組み合わされ、段数は6速だったところ5速に変更されている。正直、フィアット同様にシフトチェンジには違和感があるので、変速の回数は少しでも少ないほうが好ましい。
クラッチの断続により変速に不自然なタイムラグが生じてしまうところがある。ただし、ひとたび効率のいい領域に入ってしまえば、けっこう速い。この車重のクルマに1Lのエンジンというのは、動力性能的にはかなり有利なのだと思わされた。
フットワークについては、世のリアエンジン車が見習うべき自然なハンドリングを持っている。しっとりとしたステアリングフィールで、コーナリングもこのサイズで車高の高いクルマとは思えないほど姿勢がよい。着座位置が高く、フロアも高くなっていて、重心的に不利なはずだが、その感覚が拭われていて、ごく普通にコーナリングできてしまうのだ。これは大幅な進化だと思う。
デザイン・スペックの総評
いずれもデザインで勝負しているクルマであって、それを楽しむクルマであるというのが本命。走りについては、全車共通してミッションとブレーキに違和感が残る。ミッションについては、日本で使うには、やはりATかCVTか、あるいはDSGのように2つクラッチのある機構を用いなければ無難な乗り味は得られないであろう。ブレーキフィールも全車改善の余地あり。キャパシティは十分だが、踏み始めが唐突に利くところが気になる。ただし、もしも左ハンドル車であれば、かなり違うのかもしれない。
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