【ミニバン2列目シート比較】ライバル皆無のトヨタ アルファードとアウトドアユーザーから絶大な支持を集めるデリカD:5の乗り心地を検証

  • 筆者: 青山 尚暉
  • カメラマン:島村栄二/トヨタ自動車
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トヨタと三菱を代表する上級ミニバンが、トヨタ アルファードと三菱 デリカD:5だ。両者は同じミニバンというカテゴリーに分類されていながら、そのキャラクターはまったく別物。それゆえ、ユーザーの好みによる部分も大きいのだが、今回は両モデルの乗り心地と2列目席の居住性について比較したい。

ゆとりある室内空間を持つ3列シートの多人数乗車、ビッグサルーンとして快適性は不可欠であり、また特等席は言うまでもなく2列目席だからだ。

目次[開く][閉じる]
  1. アルファードはハイエンドミニバンを、デリカD:5はアウトドア趣味を持つ人から支持されるモデルだ
  2. きわめて静粛性の高いアルファードは車内での会話もしやすい
  3. サイズや車重感を感じず悪路でも快適なデリカD:5
  4. キャプテンシートのみの比較でも装備と快適性ではアルファードの方が高い

アルファードはハイエンドミニバンを、デリカD:5はアウトドア趣味を持つ人から支持されるモデルだ

アルファードはハイエンドミニバンを望む一般ユーザーはもちろん、その高級感、ラグジュリーを極めたファーストクラス感覚の2列目席から、VIPや芸能人御用達の移動車としても人気絶大。何しろ2021年1-6月期には国産乗用車販売台数で3位に君臨した人気ぶりなのである。

一方、デリカD:5はほかにライバルなき、SUVの皮をかぶったミニバンとして孤高の存在である。パリダカのサポートカーとして完走した経験もあるほどで、世界のミニバン最強の走破性を誇るとともに、アウトドアやキャンプユーザーの人気も絶大。

元々、2007年のデビューで、2019年のビッグチェンジで中身を一新した古参ながら、2021年1-6月期の国産乗用車販売台数では37位に甘えるものの、ヴェルファイアよりは売れている根強い人気ぶりなのである。

きわめて静粛性の高いアルファードは車内での会話もしやすい

まずはアルファードの乗り心地から紹介しよう。ズバリ言えば、2018年1月のマイナーチェンジ以降のアルファードの乗り心地は劇的に良くなったと断言できる。

なにしろ、全車のダンパーに微低速から高減衰を出せる新バルブを採用するとともに、操縦安定性を高めフラつきやビリビリした振動を低減。

Aピラー、スライドドア周りに構造接着剤を追加して剛性を高め、トヨタ最上級のハイエンドミニバンにふさわしい静粛性を確保するためダッシュボード、フェンダーライナー、スライドドアステップ内部などに吸音材を張りめぐらし、ドアミラーベースの形状を変更するなどして約4%の静粛性向上を果たしているのだ。

その結果、3列シートミニバンならではの、1-3列目席の会話が一段と容易になっている。

VIP人気絶大のエグゼクティブラウンジに至っては、フロントドア、スライドドアのガラスに防音性能に優れた合わせガラスを採用。ドアの密閉度を高め、これまでひじ掛け部の振動が気になった2列目エグゼクティブラウンジシートのシートレールの厚みを1.5倍に増し、背もたれに内蔵されている振動低減のためのダイナミックダンパーまで改良されているのだ。

約20kgもあるという多機能スイッチ内蔵の車体外側のひじ掛け部分を補強して、VIP専用席の乗り心地、快適度を改善したのである。

だから、全グレードともに(特にエグゼクティブラウンジ)乗り心地と車内の静かさの向上は明らか。今ではエアログレードでも設計基準の17インチタイヤとなっていて(以前は18インチもあった)、ハイエンドミニバンに相応しい、しっとりしなやかで安心感ある上質な乗り心地を実現している。

もちろん、16インチタイヤ装着車でも、乗り心地面で見劣りすることはない。

サイズや車重感を感じず悪路でも快適なデリカD:5

2019年のビッグチェンジでクリーンディーゼル+4WD専用車となったデリカD:5は、そのタイミングで内外装はもちろん、走り、快適性についてもフルモデルチェンジに近い劇的進化を遂げている。パワーステアリングが劇的に軽く扱いやすくなり、サイズや車重を感じさせないほど軽快感ある乗り味に大変身した。

そして、アクセルと新パワーステアリングのレスポンスの向上も走りやすさに大きく貢献。箱根の山道にあるタイトなコーナーの連続でも安定感・安心感たっぷりにスイスイ駆け抜けられるほど。

そして肝心の乗り心地はリアダンパーのサイズアップもあり、荒れた路面や段差を見事にいなし、特に2列目席の快適性は文句なしのレベルに高められている。

また車内の静粛性も向上。ボックス型スピーカーのような車体ゆえに、終始ディーゼルエンジン特有のこもり音が認められるものの、先代と比べれば、ずいぶん静かで洗練された走行空間になった印象だ。

本格的な4WD性能や走破性を持つ、くどいようだが「ミニバンの皮を被ったSUV」だと考えれば、これ以上望めない快適性の持ち主と言っていい。アルファードと乗り心地面でどちらがより快適かと言われればアルファードだが、キャラクター、目的の違いからすれば、そこを突っ込むのは無意味である。

キャプテンシートのみの比較でも装備と快適性ではアルファードの方が高い

では、両車の2列目席の居住性について比較してみたい。

ここでは人気のキャプテンシートについてのみ説明すると、アルファードは、贅沢にも3種類のシートがグレードによって用意されている。

まずはベーシックなリラックスキャプテンシート。シートスライドが前後830mmも行えると同時に、左右にもスライド可。左右のシートを中寄したスーパーリラックスモードにセットすれば、左右のシート間はくっつくものの、身長172cmの筆者のドライビングポジションを基準として(以下同)その背後に座ると、頭上に185mm(サンルーフ仕様)、膝周りに最大870mm!!ものスペースが出現する(非スーパーリラックスモードでも最大510mm)。

最初に言ってしまえば、アルファードの2列目席で膝周り空間をもっとも広くアレンジできるのは、このリラックスキャプテンシートである。

しかも、上位の本革の豪華シートより軽く、重心が低いため、シート振動面でも有利となる。アルファードとしてはベーシックな仕様だが、ファミリーユースにおいてはこれで十分すぎる居住性を備えていると言っていい。

なお、2列目キャプテンシート1座の寸法は、シートクッション長510mm×クッション幅510mm×シートバック高620mm。リクライニング角度は最大83度(垂直から/以下同)である。

左右席を中寄せするスーパーリラックスモードでなければ、2-3列目席の移動も可能である(隙間100mm/折り畳みテーブルがあるため狭い)。

エグゼクティブパワーシートはスライド量は限定されるが居心地を高めた

次は上から2番目となる、本革仕様のエグゼクティブパワーシートである。シートスライド量は前後500mmに限定されるものの、居心地の上級感は格段に向上。シート周りのビジネスクラス感覚の仕立て、装備にも感動できる。頭上空間は255mm、膝周り空間は足がゆったり組める最大510mmである。

シートの寸法はシートクッション長525mm×クッション幅505mm×シートバック高645mm。リラックスキャプテンシートより一回りゆったりとしたサイズだということだ。ただし、高めのひじ掛けが固定されているため、ダラリとは座れず、両肘が窮屈に感じることがあるかもしれない。リクライニング角度は最大89度と、リラックスキャプテンシートよりフラットになる。最上級のラウンジシートでは不可能な、2-3列目席スルー空間(隙間145mm)からの移動が可能な点も見逃せないポイントだ。

エグゼクティブラウンジシートは最上級の贅沢さを備える

最上級のエグゼクティブラウンジシートになれば、これはもう世界の乗用車最上級の贅沢な空間、居心地が約束される。シートスライド量は前後500mm。しかし左右のシートに隙間がないことからも分かるように(だから2-3列目席スルーはできない)、シートはエグゼクティブパワーよりさらに立派で、まさにファーストクラス感覚そのもの。

頭上空間は270mm、膝周り空間は足がゆったり組める最大460mmである。シートの寸法はシートクッション長510mm×クッション幅520mm×シートバック高620mmと、座面の幅がもっとも広いのが特徴だ。リクライニング角度は83度となる。

こうしてアルファードの3タイプの2列目キャプテンシートを比較すると、意外にも中間のエグゼクティブパワーシートが豪華さと使い勝手の良さのバランスに優れていることが分かる。

つまり、膝周り空間、リクライニング角度、そして車内にいるままで2-3列目席のスルー移動が可能になる点においては、エグゼクティブパワーシートより上であるということだ。つまり、一般ユーザーであれば、このエグゼクティブパワーシート仕様を、価格を含めてアルファードの上限グレードと考えてもいいと思われる。

アルファードほどではないが狭さは感じず安心感のある室内空間だ

さすがに、SUV的キャラクター、走破性にもこだわったデリカD:5の2列目席は、アルファードほどの豪華さも装備類の充実度もない。とはいえ、ファブリック、本革シートともに表皮のデザインは凝っていて、それなりのラグジュアリー感を演出。シートスライド量は180mmに限定され、中寄スライドもできないものの、頭上に210mm、膝周りに最大260mmのスペースがあるから、決して狭さなど感じさせない。

ルーフの強度を高める環状骨格をそのまま生かした天井内張のデザインは、乗るものにそこはかとない安心感を与えてくれるのもデリカD:5ならではのポイントだ。

シートの寸法はシートクッション長475mm×クッション幅515mm×シートバック高605mm。2-3列目席のスルー空間が180mmもあり、4WDにして全列フラットフロアだから、車内での移動がしやすいのも美点となる。

居住性や装備にこだわるならアルファード! アウトドア趣味を持つ人ならデリカD:5を選ぶべきだ

各シートのかけ心地そのものについては、体形、体重などによって好みが分かれるはずだが、快適度で不満を覚えるシートはここにはない。

ただ、アルファードの上位2シートに関しては、ひじ掛け部分が重く、重心が高いため、いろいろ工夫を凝らしてはいるものの、路面によって微振動の発生は完全に防ぎきれていない。どうしてもひじ掛けにひじを置く着座姿勢になりがちなので、そこだけは惜しまれる(2019年の試乗印象なので今は改善されているかもしれない)。

とはいえ、アルファードの2列目席がクルマの居住空間として最高・最上であることは間違いない(それもあってバカ売れしている)。

もし、車格や居住性(ミニバンとしての1/2/3列目席を含む)、装備などにこだわるなら、意外なほどの運転のしやすささえ合わせ持つ、アルファードにかなう多人数乗車はほかにない。

一方、アウトドアやキャンプに似合うキャラクター、使い勝手、そして悪路走破性を重視するなら、迷うことなく孤高の存在である4WDのデリカD:5である。

【筆者:青山尚暉】

トヨタ/アルファード
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新車価格:
540万円872万円
中古価格:
29.7万円2,217.4万円

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青山 尚暉
筆者青山 尚暉

学生時代はプロミュージシャン、その後自動車専門誌2誌の編集を経てフリーのモータージャーナリストに。現在は自動車業界だけでなく、愛犬のラブラドールとジャックラッセルとともに、愛犬との快適で安全なクルマ旅を提案するドッグライフプロデューサーとしても活動中。また、クルマのパッケージを寸法で比較するため、独自の計測ツールを開発。1台につき25項目以上を詳密計測。実用性の目安として、記事中で展開している。現在、自動車用純正ペット用アクセサリーの企画、開発も行う。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。記事一覧を見る

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