ビアンテvsステップワゴン、デリカD:5 徹底比較(4/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
このクルマでしか得られない数々の個性
現時点で最後発のミニバンであるビアンテは、このクルマでしか手に入らない個性をたくさん持って出てきた。走りのテイストはさておいても、このスタイリングや、室内の広さ、2列目シートの使い勝手など、どれかひとつでも非常に気に入ってこれが欲しいと思うのであれば、積極的に選択すべきクルマだろう。その期待には十分に応えてくれるはずだ。ステップワゴンと並べると、3年分のアイデアが詰め込まれており、より大胆にいろいろな要素を盛り込んでいる。
ただし、売れているのは圧倒的に2L車とのことだが、そこには一考の余地がある。自動車税額の違いはあるが、このクルマは2.3L車に乗るべき。理由はいうまでもなく動力性能。2L車を購入して、ずっと「遅い」と感じながら乗るのは、ビアンテにとっても不本意なはず。これまで遅いと感じていたステップワゴンの2L車に比べても遅いので、ここはひとつ、ぜひ23Sを選んで欲しい。あとは、横滑り防止装置の設定に期待したい。
ちなみに、マツダの発表によると発売1か月後に6,000台超の受注をマークし、うち9割が2L車で、「20S」が最も人気で全体の65%とのこと。オプションでは、9割が「電動スライドドア+本革ステアリング&シフトノブ」を、さらに、7割が「クリーンエアパッケージ」(価格5万2,500円)を、6割が「コンフォートパッケージ」(価格5万5,650円)を選んでいるという。
オールラウンドなミニバン
このクルマに触れて、非常にオールラウンドなクルマであることをあらためて痛感した。取り回し、走行性能、乗り心地、ユーティリティ全般と、いずれも大きな不満がない。
シートアレンジの操作には大きな力を要し、女性がひとりで行なうのが難しい点など、改善されたとはいえ残された課題もあるが、概ねまとまりはよい。
デビュー当初は、従来モデルからの変わり様をとやかくいわれた一方で、新しい価値を見出し、とくに走りのよさへの評価は高かった。それはいまでも健在である。
販売的には、デビュー時からしのぎを削っていた日産セレナにはだいぶ水を開けられているが、自社内にライバルが増えたこともあり、デビューから3年が経過したことを考えると、十分に健闘しているといえるだろう。
このサイズであれば、ミニバンは大きくておっくうだという女性でもとっつきやすいだろう。反面、ハイルーフミニバンとしての、目線が高いことによる見晴らしのよさや広々感は、今回のほかの2台もそうだし、ライバルに比べても若干劣るわけだが、どちらを取るか、それはユーザーの好み次第だろう。
また、ステップワゴンの国内累計販売台数100万台を記念して、両側パワースライドドアやスマートキーシステム、上級装備を組み合わせた「Lパッケージ」などを装備した特別仕様車「スマートスタイル エディション」と、同インターナビシステム装備車が発売中である。買い得感の高いモデルであり、購入検討者はぜひ知っておいてほしい。
1台のミニバンとして非常に完成度が高い
デリカD:5はオーソドックスなミニバンにSUVの部分をプラスしたところが持ち味のクルマであり、そこに期待するのであれば、現時点ではこのクルマ以外に選択肢はない。
のちに2WD(FF)車やエアロ仕様モデルも追加されたものの、デリカD:5の本命は、今回持ち込んだ、スタンダードモデルの4WD車に違いない。今回のビアンテやステップワゴンでも4WD車を選ぶことはできるが、デリカの場合、4WDがデフォルトで、4WDを躊躇せず選べるところも強みである。
SUVとの融合とはいいながら、一般道を普通に流す上でも、乗り心地の快適性が高いことも特筆できる。スポーティなミニバンとは一線を画するゆったりとしたドライブフィールもデリカD:5の持ち味だ。2.4L MIVECエンジンと効率のよいCVTにより動力性能にも不満はない。
オフロードの走破性とオンロードの安定性と快適性を併せ持った「オールラウンドパフォーマンス」を謳うクルマだが、そうはいっても、何も特殊なクルマではない。SUVとの関連性を考える以前に、1台のミニバンとしても非常に完成度が高いのがデリカD:5である。もっと多くのユーザーが目を向けて、見直されるべきクルマだといえるだろう。
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