スタイリッシュインポートセダン 徹底比較(4/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:茂呂幸正
らしさと普遍性の絶妙なバランス感
このクラスのセダンが、実用性だけでなく、プレミアム性や個性が求められるようになった中で、C5は実に上手いところをついたと思う。
先に登場したC6は、相当に奇抜なクルマであった。しばらくなりをひそめていたシトロエンらしいクルマづくりが復活したことをうかがわせた。そしてC5では、シトロエンに期待される「らしさ」を匂わせつつ、適度にクルマとしての普遍性を与えることで、より多くの人にとって受け入れやすいようにした。
シトロエンというブランドは、非常に難しい立ち位置にあるのはわかる。個性を強調すればメジャーに相手にされず、普通になればマイナー=ファンにそっぽを向かれる。そんな中で、C5は絶妙なバランス感を持って生まれてきたと思う。これなら、ドイツ車を乗り継いできているようなユーザーをも十分に引き込めるであろう。
2.0か3.0エクスクルーシブを選ぶかについては、装備面での差も小さく、あまり動力性能にこだわらないのであれば、2Lモデルはたしかに買い得感が高い。しかし、前記のとおり、エンジンや4速ATだけでなく、クルマ全体から感じられる質感や雰囲気、ひいてはオーナーの充足感を考えると、3.0エクスクルーシブを強くオススメしたい。
パサートとの価格差は妥当か割安か
2.0TSIでちょうど500万円、3.6LのV6 4MOTIONで602万円という価格設定は、VWのセダンとしては、ずいぶん高価な印象がある。ベースのパサートに比べても、単純に横比較はできないが、100万円近く高くなったことになる。購入検討者は、まずこのプライスタグには少々戸惑うかもしれない。
こうなると、やはりアウディA4や、メルセデスCクラス、BMW3シリーズともバッティングするわけで、ブランドに弱い日本人にとっては、VWの好イメージはあっても、どうせなら御三家・・・という思考回路になるケースが多いようにも思う。
しかし、実車を前にし、この内外装のクオリティ感を目の当たりにすると、この価格設定にはうなずける。ベースのパサートもそこそこスペシャリティな雰囲気がある中で、パサートCCではさらにスペシャルなイメージを高めている。そして走りも前述のとおり。むしろ知れば知るほど、この価格設定は妥当というよりも、割安にすら思えてくるのである。
上記の御三家のライバルに比べても、クルマとしての完成度の高さも申し分ない。見た目にはむしろ華がある。しかも、走りの仕上がりも素晴らしく、その点でもライバルをしのぐものがある。
あとはフォルクスワーゲンというブランドを、どう認識するか次第だろう。このクルマを選べる人は、非常に選球眼の鋭い人だと思う。
セダンであることを感じさせない
近年のアルファロメオ車は、見た目ではかつてにも増してアルファらしさを強調しているが、ドライブフィールはより一般的なものとなった。
エンジンについて、2.2L直4と、3.2L V6という選択肢においては、エンジン自体の性能もさることながら、組み合わされるトランスミッションのほうが問題となるのは前記のとおり。また、ハンドリングをはじめ乗り味全体の雰囲気も大きく異なり、2.2=軽快、3.2=重厚となる。個人的には、パワートレイン以外のフットワークについては、この2.2のほうが好みで、アルファらしいドライビングプレジャーを持っていると思う。しかしセレスピードには、2ペダルの操作でMTライクな操縦感覚を味わえるという意味ではよいのだが、もう少し洗練されることを望みたい。
また、159はレッキとした4ドアセダンではあるが、セダンであることを、いい意味であまり感じさせないのである。かといってスポーツカーとも違うのだが、どちらかというとスポーツカーのほうが近い。TIとなればなおのこと。159も実車に触れると、それなりに実用性が高いにもかかわらず、あるいは乗り味も大人しくなったとはいうものの、クルマが放つ独特の空気がある。それがあるがゆえに、セダンに乗っているような気にさせないのだと思う。
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