輸入車コンパクトハッチバック 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
キープコンセプトかつ大幅に上級移行
サイズアップし3ナンバーボディとなった207は、206の後継モデルであるが、307に近いサイズ感となった。
Bセグとして考えると、日本の交通環境下での使い勝手を考えると、大きすぎる気がしなくもないところだが、クルマとしてはすべていい方向に作用している。206よりも一気に2ランクほど上がったといっても過言ではない。
エクステリアは、前身の206においても、デビュー当時は個性的なフロントマスクがかなり奇抜に感じられたものだが、ライバル各車もより自社の個性を強調する方向にシフトした中に登場した207は、またしても「ここまでやるか!」と唸らせるほどの仕上がり。
フロントオーバーハングを長くし、ボンネットの高さを感じさせないようにした上で、個性的なヘッドライト、バンパー、グリルなどを組み合わせ、大胆にマスクを作り込んでいる。
フロントと上手くバンラスを図り、大きくスラントしたリアの造形も特徴的。さらに、ウエストラインを前下がり&後ろ上がりとして前進感を演出。ボディサイズの拡大が上手くデザインにも活かされている。さらに、各部にモールを配することで、全体に隙間のないデザイン処理がなされている。けっこうな力作だと思う。
BMWと共同開発であり、後述のMINIにも搭載される1.6Lエンジンもなかなかの実力。緻密な回転フィールを示し、振動感が小さく静粛性も高い。
自社開発というATの制御は、従来のプジョー車に比べるとまずまずの完成度で、あえてショックを残しダイレクト感を演出したというが、結果的には、ややスムーズさに欠けるように感じられなくもない。とはいえ、動力性能の全体の仕上がりは、いいところに落ち着いているのでないかと思う。
比較的スローレシオのステアリングは、切り始めから大舵角にいたるまでいたってリニアで、途中でアシスト力や接地性が変わるような印象はほとんどない。ハンドリングは、安定したリアに支えられつつニュートラルにまとめられており、リニアなライントレース性を示す。操縦安定性は極めて高い。
プジョーに期待される「猫足」ぶりは、タウンスピードでは少し固さ感があるものの健在で、速度を増すにつれて路面をなめるように走る。それでいて姿勢を乱しそうな入力はしっかり減衰し、クルマの重さをあまり感じさせない。街乗りの一般走行ではまったく不快な部分が顔を出さない仕上がりだ。
剛性の高いボディと巧みなサスペンションチューニングにより、あまりタイヤに頼り過ぎないセッティングが実現しているようにも感じられた。全体として、現時点での世界のBセグ車でベストではないかと思える仕上がりである。
こちらは正常進化のキープコンセプト
BMW傘下となって2代目となるMINIは、エクステリアはまったくのキープコンセプトだが、ルーフ以外のボディパネルが新しくなり、微妙にボディサイズが拡大された。
新世代のMINIは、欧州もさることながら日本での大ヒットが印象深いモデルである。今回のモデルチェンジにおいても、日本市場をかなり重視した印象が強い。
わずかなボディサイズの拡大により得られるものは、それほど大きいと思えないが、5ナンバー枠を守ったのは、日本市場を重視したことによる見識だったのだろう。
エクステリアデザインについて、「先代のラインが崩れた」などといろいろな言われ方をしているようだが、いずれこちらのほうが明らかに新しく、よりMINIらしく個性的に見えるようになるはずだと思っている。
クーパーでは白いルーフが与えられるが、ボディカラーと白と黒の織り成すカラーコーディネートには好感を抱く。また、個人的にはもっとメッキパーツが多用されていてもいいと思う。
走りについては、全体のチューニングの方向性がいくぶん快適性重視となり、趣味のクルマとしての側面よりも、実用車としての素性を追求したように感じられる。
ただし、今回の試乗車にはオプションのスポーツサスペンションが装着されていたが、正直、街乗り主体のユーザーには不向きだろう。サスペンションストロークをかなり規制しており、突き上げ感が大きくなっているのだ。逆に、高速巡航時のスタビリティは、ボディサイズからイメージするよりもずっと高くなっている。また、従来の同サス車は過度のカート感覚を演出しているきらいがあったが、新型ではいくらかマイルドになり、適度な味付けとなっている。
プジョー207と基本的に同じく、BMW主導により開発された1.6Lエンジンを搭載。クーパーの自然吸気エンジンはバルブトロニックを採用し、不評だったCVTをやめてATに変更されている。悪い部分をなくす方向での改良であるのだが、全体の仕上がりとしてはいまだもう一歩。動力性能自体にまったく不満はないのだが、ペダル操作量と実際の加速感があまりリニアではないのだ。また、ブレーキフィールもスイッチ的で、全体としてストップ&ゴーのスムーズネスにやや欠けるところが気になってしまった。
期待される質実剛健ぶりは健在
もともとゴルフの弟分として本国でラインアップされていたモデルで、日本に導入されるようになったのは2002年登場の3代目から。これまで何度かマイナーチェンジしており、2005年夏にフェイスリフトし、2006年夏には1.6Lエンジンと6速ATが与えられた。
かつて日本でゴルフがもてはやされたときに通じるオシャレな雰囲気を持っているのだが、ライバル各車がここまで個性的になると、ビジュアル的に埋没した感があるのも否めない。
走りには、さすがはフォエルクスワーゲンといえるものがあり、コンフォートとスタビリティの実に上手いバランスをついている。普通に走るぶんには何の不満もない仕上がりだ。100km/hで走行しても、それだけの速度が出ているという感覚は、いい意味で希薄である。
6速化されたATは、マニュアルシフト操作のレスポンスもよろしく、シフトチェンジ時のショックも小さい。この完成度の高さには唸らされる。6400rpmよりレッドゾーンとなるが、けっこうな高回転域でもシフトダウン操作を受け付ける。今回の3台の中では、結果的にポロのATが一番完成度が高かったと感じている。
ただし、1.6Lエンジンを得てずいぶん不満が小さくなったことには違いないが、動力性能面ではもう少し欲しいところではある。
ハンドリングは、なぜか見た目から想像するよりも重心が高めの感覚があるが、コーナリング時のロールは小さくまとめられており、高速巡航時の安定性も高い。ブレーキフィールもナチュラルで扱いやすい。ノーズダイブ感は小さく、前後バランス的にも優れ、コントロールしやすい。シンプルに「運転しやすい」という意味では、結果的にポロがもっとも優れることを再確認した。
デザイン・スペックの総評
メジャーであり個性的であるクルマという切り口では、MINIを超えるモデルというと簡単には見つからない。しいて挙げるとニュービートルぐらいだろうか。そのMINIは、より個性的になり、かつ実用性を向上させて登場。日本でもすっかりメジャーなブランドに成長したプジョーの事実上のエントリーモデルである207は、206よりも大きく上級移行し、価格、デザイン、走行性能、使い勝手など、すべてにおいて商品力を高めて登場したことを歓迎したい。ただし、走りやクルマ全体のまとまりにおいて、そつないまとまりを見せるのはポロだった。MINIや207も、もちろん良い部分はたくさんあるが、一方で気になる部分も見受けられた。
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