燃費性能を大幅に向上させた軽自動車の売れ筋3モデルを徹底比較チェック(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
ボディを徹底的に軽量化して発電機の減速時制御も行い、JC08モード燃費は28.8km/Lの優れた数値を達成
ワゴンRは背の高い軽自動車の定番車種。初代モデルは1993年に登場して、軽自動車の流れを変えた。95年以降にムーヴ、ライフ、eKワゴンなどのライバル車が相次いで投入され、売れ筋のジャンルを築いている。
新型ワゴンRは2012年9月の登場とあって設計が新しく、低燃費技術も詰め込まれている。特に注目されるのが“軽量化”だ。先代ワゴンRのFXリミテッド・アイドリングストップの車両重量は860kg。新型ワゴンRのFXリミテッドは790kgだから70kgも軽い。比率に置き換えれば8%の軽量化となった。
オルタネーターによる発電は、減速時を中心に行うことでエンジンの負担を軽減。アイドリングストップは時速13km以下で作動し、エンジンの停止時間を長引かせている。エアコンには蓄冷材が備わっており、アイドリングストップ中でも冷却効果が損なわれにくい。
リチウムイオン電池の採用にも注目したい。エンジンの始動、エアコン、ヘッドランプなどは従来の鉛電池が担当し、オーディオやメーター類などの電装品は助手席の下側に装着された小さなリチウムイオン電池でまかなう。リチウムイオン電池は、空間効率の向上と軽量化にも貢献している。
グレードは標準ボディと内外装を上級化したスティングレーに区分され、前者には低価格のFXとエアロパーツなどを備えたFXリミテッドを設定。後者にはノーマルエンジン搭載のXと、ターボのTが用意される。ノーマルエンジンのJC08モード燃費は28.8km/Lと優秀で、ターボのTも26.8km/Lと立派な数値だ。全高が1,640mmの直線基調のボディは、ワゴンRの伝統を受け継いだ空間効率の高いデザイン。フェンダーの周辺にはボリューム感があり、存在感の強い外観に仕上げられた。
両側スライドドアに、背の高いボディと燃料タンクをフロントシート下に搭載した広大な車内空間を持つ
N BOXは「軽自動車のミニバン」といった機能が特徴。全高が1,770mmに達するボディは存在感の強いデザインで、両側にスライドドアを装着する。開口幅は640mmだからパレットを60mm上まわり、床を低く抑えたから乗降性も良い。
機能的に最も注目すべき特徴は、フィットと同様に燃料タンクをフロントシート下に搭載して車内後部の床を低く抑えたことだ。新たに開発されたプラットフォームで、N ONEにも用いられている。
エンジンも新開発された。実用回転域の駆動力が高められ、ノーマルエンジンの最大トルクは6.6kg・m。3,500回転で発生するため、市街地での使い勝手が良い。ターボエンジンも新たに開発されたもので、最高出力は64馬力(6,000回転)、最大トルクは10.6kg-m(2,600回転)。実用回転域の駆動トルクを高めている。
設計の新しい軽自動車とあって、エンジンやCVTの摩擦損失も低減されている。ノーマルエンジンにはアイドリングストップも用いられ、標準ボディのJC08モード燃費は22.2km/L。スライドドアなどの装着によって車両重量が930kgに達することを考えれば、立派な燃費数値といえる。
グレードは標準ボディと内外装を上級化したカスタムに大別される。標準ボディには、ベーシックなGと左側スライドドアの電動機能などを備えたG・Lパッケージを設定。上級のカスタムは、G、G・Lパッケージ、さらにGターボパッケージの3種類がラインナップされている。
軽量ボディと低燃費技術を投入したことで、燃費は30km/Lと優秀な数値を達成
「第3のエコカー」と銘打って登場し、一躍話題のクルマとなったのがミライース。ミライースで最も注目されるのは燃費性能で、JC08モード燃費が30km/Lに達する。30.2km/Lのスズキ アルトエコと並び、モーター駆動を用いていないガソリンエンジン車では最高峰の燃費値だ。
優れた燃費性能には、エクステリアも深く関係している。全高は1,500mmだからワゴンRと比べて140mm、N BOXとの比較では270mmも背が低い。そのため軽量化もし易く、車両重量は730kg(2WD)と軽い。渾身の軽量化を図ったワゴンRのFXリミテッドと比べても60kg、N BOX G・Lパッケージより200kgも軽い。背が低ければ空気抵抗も軽減され、燃料消費量を抑える上ではさらに有利となる。
低燃費技術も数多く投入。アイドリングストップを備え、エンジンやCVTの効率も向上させた。外観はオーソドックスな5ドアハッチバックだが、空気抵抗を重視してデザインされている。軽量化も徹底しており、シートなどは新規に開発。ムダを省くことに力を注いだ。
ボディが軽いので、ターボエンジン仕様は用意されていない。全グレードがノーマルエンジンで、最高出力は52馬力(6,800回転)、最大トルクは6.1kg・m(5,200回転)。軽自動車では平均的な動力性能だ。
グレードは豊富で、2WDだけでもD/L/X/Gと4種類存在する。この内、Dは装備を徹底的に省いた低価格仕様で、車両価格は79.5万円。売れ筋はX。電動格納式ドアミラーやキーレスエントリーシステムを装着して99.5万円になる。アイドリングストップなど低燃費技術の採用も考えれば、割安といえるだろう。
デザイン・スペックの総評
ここで取り上げた車種は、前述のように軽自動車の販売トップ3。興味深いのは、各車の性格がそれぞれ異なることだ。N BOXの全高は1,770mmで車内の広さを優先させ、スライドドアも装備。ワゴンRは十分な室内空間を備えた上で、N BOXよりも130mm背が低く、燃費の向上も図られた。さらにミライースは、全高がワゴンRを140mm下まわる1,500mm。軽量化も徹底され「燃費スペシャル」的な位置付けだ。
この3車を並べると、今の軽自動車が130~140mm刻みの「背の高さ」で性格を区分していることが分かる。背が低いほど「低燃費&低価格」の性格が強く、全高が高まるにつれ、居住空間や荷室が広がって機能や装備も充実していく。同時に価格も高まる。
従って軽自動車を選ぶ時は、使用目的と予算に応じた全高を決めてから車種を選ぼう。ちなみに、N BOXのライバル車はタントやパレット、ワゴンRならムーヴやライフ、ミライースはアルトだ。
そして、ここで取り上げる各ジャンルの売れ筋3車は、燃費性能にも力を入れている。最も優れているのは背が低く軽量なミライースだが、ワゴンRの28.8km/Lも、多彩な機能を考えれば効率はきわめて高い。
この記事にコメントする