ダイハツ タント/タントカスタム 試乗│着実に進化を続ける人気軽ハイトワゴン(3/3)

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ターボは、1Lエンジン並みの性能

パワー不足を効果的に解決するのがターボの装着になる。今回はタントカスタムRSトップエディションSAIIIで試した。動力性能をノーマルエンジンと比べると、低回転域から明らかに力強い。ターボはアクセルペダルを軽く踏んだ時でも過給効果が生じて速度を滑らかに高めていく。タントの場合、回転上昇に応じて吹き上がりが鋭さを増すターボのクセを少し感じるが、運転がしにくくなるほどではない。

最高出力が64馬力(6400回転)、最大トルクは9.4kg-m(3200回転)だから、性能は1Lのノーマルエンジンに近い。パワフルとはいえないが、加速を続けると4000回転付近から速度上昇が活発になり、少しスポーティな印象も受けた。

軽自動車のターボは販売比率が20%程度と少ないが、車両重量が900kgを超える背の高い車種の中では加速性能が良い。ターボの最大トルクは、ノーマルエンジンの154%に達するからだ。

しかもJC08モード燃費は、タントのノーマルエンジンが28km/L、ターボは26km/Lだ。ターボの数値はノーマルエンジンの93%で、動力性能が1.5倍に高まる割に燃費は悪化率が小さい。

ターボは価格の安さにも注目される。タントカスタムの場合、ノーマルエンジンのXトップエディションSAIII(165万2400円)と、ターボのRSトップエディションSAIII(174万9600円)では、ターボが9万7200円高い。しかしRSトップエディションSAIIIには右側スライドドアの電動機能(ノーマルエンジンは4万8600円でオプション設定)、ハンドルとATレバーの本革巻き(1万2000円相当)も加わり、高効率のターボが3万7000円前後で装着される。

標準ボディで同様の計算をすると、ターボの換算額が6万円前後に高まるが、ボディの重いタントでは、高効率なターボ車を積極的に検討したい。

操舵に対する鈍目の反応は、ライバルよりも少し顕著

操舵感はどうだろうか。峠道などを走ると、RSトップエディションSAIIIを含めて、操舵に対する反応が鈍めだ。無理な走り方をすれば旋回軌跡が拡大して、曲がりにくい印象になる。背の高い軽自動車だから、後輪の接地性と車両全体の安定性を優先させて、動きが少し鈍いセッティングにした。

ライバル車のN-BOXとスペーシアにも同様の傾向が見られるが、タントは設計が古いこともあってこの性格が少し顕著だ。街中ではほとんど気にならないが、自宅付近の生活圏内に峠道のあるユーザーは、動力性能を含めて慎重に試乗すると良い。

乗り心地は燃費を重視したこともあり、低速域では少し硬い。これも軽自動車に多く見られる特徴で、タントの乗り心地は平均的だが、不満を感じないか試乗した時に確認しておきたい。

相変わらずの乗降性・荷物の積み下ろしの良さ、収納設備の豊富さ

タント/N-BOX/スペーシア/日産 デイズルークスという、全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた軽自動車の中でタントをとらえると、一番のメリットは左側に装着されたワイドに開くミラクルオープンドアだ。乗降性が良いだけでなく、助手席を前側にスライドさせると、ボディ側面の広い開口部から荷物を車内に積むこともできる。

また助手席の背面に装着されたレバーで、運転席や車外からも助手席のスライド操作が行える。畳めば背面がテーブルになって使い勝手も良い。トレイなどの収納設備が比較的豊富なこともタントの特徴だ。

逆に動力性能、操舵に対する反応の仕方は、N-BOXやスペーシアに比べて見劣りする。後席の座り心地は全高が1700mmを超える軽自動車の中では最下位だ。緊急自動ブレーキを作動できる安全装備と運転支援の機能は、ミリ波レーダーと単眼カメラを使うN-BOXには負けるが、スペーシアに近く、デイズルークスには勝る。

価格はライバル車同士の競争が激しいこともあって横並びだ。特に標準ボディの買い得グレードは、全車が140~150万円に収まる。

現行タントは発売から4年以上を経過しており、設計の古さも散見されるが、子供を抱えた状態での乗降性とシートアレンジでは優位性がある。後席にチャイルドシートを装着する使い方なら、座り心地の悪さもデメリットにならない。全高が1700mmを超える軽自動車は、どの車種も子育て世代に適した機能を備えるが、タントは特にこの傾向が強い。

ファミリーユーザーを大切に考えたクルマ造りは、このカテゴリーのパイオニアであるタントの意地、老舗ならではのこだわりかも知れない。

[Text:渡辺 陽一郎/Photo:島村 栄二]

ダイハツ タント/タントカスタム 主要諸元

車種名タントタントカスタム

グレード

X“SA3”

RS“トップエディションSA3”

駆動方式

2WD

2WD

トランスミッション

CVT

CVT

価格(消費税込)

1,420,200円

1,749,600円

JC08モード燃費

28.0km/L

26.0km/L

全長

3,395mm

3,395mm

全幅(車幅)

1,475mm

1,475mm

全高(車高)

1,750mm

1,750mm

ホイールベース

2,455mm

2,455mm

乗車定員

4人

4人

車両重量(車重)

930kg

960kg

エンジン

直列3気筒12バルブDOHC

直列3気筒12バルブDOHC インタークーラーターボ

排気量

658cc

658cc

エンジン最高出力

38kW(52PS)/6,800rpm

47kW(64PS)/6,400rpm

エンジン最大トルク

60N・m(6.1kgf・m)/5,200rpm

92N・m(9.4kgf・m)/3,200rpm

燃料

無鉛レギュラーガソリン

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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