「仕事専用」と思ったら大間違い! アトレーデッキバンが「趣味用」にこそ最強な理由と走りの意外な実力とは
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂 幸正/MOTA編集部
「バンとトラックの融合」という、他にないスタイルを持つダイハツ「アトレーデッキバン」。「一体どんな人が、何のために?」と、その使い道に疑問を持つ方も多いかもしれません。
しかし、その一見すると中途半端に見える独自の構造こそが、アウトドアや専門的な仕事で使う人々にとって、他に代えがたい唯一無二の魅力となっています。
本記事では、カーライフ・ジャーナリストの渡辺陽一郎さんが、開発者に直接取材したからこそ書ける開発秘話から、リアルな使用例までを徹底解説。多くの人を惹きつける、その奥深い世界の扉を開きます。
軽商用車の王者が“本気で遊んだ”一台! ダイハツ「アトレーデッキバン」とは
ダイハツは長年、軽商用車の分野で強さを発揮してきました。その影響力は、軽自動車全体の販売台数でスズキに次ぐ2位となっている現在でも揺るぎません。
近年のデータを見ても軽商用車の販売台数では、ダイハツがスズキを大きく上回っています。
その原動力となっているのが、軽商用バン「ダイハツ ハイゼットカーゴ」と、その上級仕様にあたる「ダイハツ アトレー」です。その人気はすさまじく、両車を合わせた販売台数はライバル「スズキ エブリイ」の約1.4倍も売れています。月平均で約7000台という数字は、大人気の軽SUV「スズキ ハスラー」に匹敵します。
この人気シリーズの中に、極めてユニークなモデルが存在します。それが、今回ご紹介する「アトレーデッキバン」です。
唯一無二の相棒! アトレーデッキバンのユニークな構造とは?
濡れたウェットスーツや泥だらけのキャンプ用品、釣った魚のクーラーボックス。「室内には積みたいくないけど、かといって軽トラやピックアップトラックは必要ない」そんなアウトドア好きの絶妙なニーズに応えるのが、アトレーデッキバンのユニークな構造です。
アトレーデッキバンは、4ドア軽商用バン「アトレー」の車体後部を大胆にカットし、オープンな荷台(デッキ)を設けたモデルです。一般的なバンでは後席の後ろが室内荷室ですが、デッキバンでは後席と荷台の間に窓付きの仕切りが設けられています。
後席ドアは通常のバンと同じスライド式で、4人がしっかり乗れる「軽トラック」と表現するのが最も分かりやすいでしょう。
荷台の寸法は、長さ880mm、幅1360mm、あおり(荷台の囲い)の高さは610mm。本格的な軽トラックである「ハイゼットトラック」に比べれば長さは半分以下ですが、この“広すぎない”スペースこそがポイント。
泥だらけになったキャンプギアや、釣った魚を入れたクーラーボックスなどを、室内の汚れや匂いなどを一切気にせず放り込める。この荷台は、まさに「タフな屋外収納」として機能するのです。このユニークな成り立ちが、アトレーデッキバンだけの特別な価値を生み出しています。
プロと趣味の達人はこう使う! アトレーデッキバンの驚きの活用術
一見すると中途半端にも思える荷台スペースですが、実はこの構造こそがアトレーデッキバンの真骨頂です。どのようなユーザーに支持されているのか、開発者と販売店に話を聞きました。
電気屋さんも猟師も指名買いする“現場で磨かれた実用性”
開発者によると、そのユニークな構造のルーツは、意外にも「街の電気屋さん」の現場の声にあったといいます。
「背の高い冷蔵庫を運びたいけれど、高価な工具は雨風をしのげる鍵付きの場所に置きたい。その両方を一台で解決できるクルマが求められていたんです」と語ります。
さらに、近年では全く異なる分野のプロからも支持されているそうです。それが、狩猟を楽しむハンターたちです。
「獲物を室内に載せると、どうしても臭いが気になります。かといって、高価で危険な猟銃を無防備な荷台に置くわけにはいかない。そこで『獲物は外の荷台へ、猟銃は中の客席へ』と明確に分けられるデッキバンが、最高の相棒として選ばれているのです」。
“仲間も乗れて、汚れ物もOK” まさに「最強の趣味車」
販売店の話では、購入者のほとんどが仕事用ではなく、完全に「趣味の相棒」としてアトレーデッキバンを選んでいるといいます。
「例えば、釣り好きのお客様がよくおっしゃいますね。『繊細な釣り竿は鍵のかかる後席に、釣った魚や氷で濡れたクーラーボックスは気兼ねなく荷台に、と完璧に使い分けられる』と。汚れたキャンプ用品なども、室内を汚す心配なく積めるのが最大の魅力です」。
さらに、軽トラックにはない決定的なメリットとして、「4人乗れる」点を挙げています。
「仲間と一緒に釣りやキャンプに出かけられるのは、軽トラックにはない大きな強み。趣味の楽しさが何倍にも広がりますよ」。
「どうせ“軽バン”の走りでしょ?」は大きな誤解! 想像以上にキビキビ走る実力派
ここでは、アトレーデッキバンの心臓部であるターボエンジンの実力や、ユニークなボディ形状がもたらす運転のしやすさについて詳しく解説します。
ストレスフリーな力強さ! 全車標準装備の「ターボ」がもたらす余裕の走り
アトレーデッキバンは上級グレードという位置づけのため、パワーユニットはノーマルエンジンの約1.5倍もの力を発揮するターボエンジンが標準装備されます。
このターボの真骨頂は、エンジンを回さなくても力強く走ってくれることです。
例えば、重たいキャンプ道具を満載にした状態での高速道路の合流や、急な登り坂でも、アクセルに軽く足を乗せるだけで「グッ」と前に進んでくれる頼もしさがあります。常にエンジンが唸っているような苦しさがなく、長距離移動も快適です。
しかも、その力を実用的な2800回転という軽自動車にとっては低い回転数で発生させるため、街中でも非常に運転しやすく感じます。
狭い林道もUターンも楽々! 驚くほどの小回りと見晴らしの良さ
運転席から後方を振り返ると、通常のバンよりも後席との仕切り壁(リヤウィンドウ)が近いため、後方視界が非常に良好です。最小回転半径は、驚きの4.2m。人気のスーパーハイトワゴンであるタント(4.4m)よりもさらにキュッと曲がれることを意味します。キャンプ場の狭い通路や、林道の先のUターンも、これなら安心です。
最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は160mm確保されており、未舗装路など多少の悪路も安心して走行できます。
4WDも設定されており、アウトドアのツールとして最適な一台です。
200万円超えは高い? 安い? 気になる価格と、タントに迫る充実装備を徹底検証
軽自動車としては高価に感じられるアトレーデッキバンですが、その価格は果たして妥当なのでしょうか。人気車種との比較や、充実した標準装備の内容からその価値を検証します。
価格は「タントカスタムRS」とほぼ同等! 支払うのは“機能性”への価値
アトレーデッキバン(2WD)の車両本体価格(税込)は200万2000円です。軽自動車としては高価に感じられますが、例えば人気モデル「ダイハツ タント」のターボエンジン搭載グレード「カスタムRS」(196万3500円)とほぼ同価格帯です。
「4人乗れる軽トラック」という唯一無二の機能性を考えれば、十分に納得できる価格設定と言えるでしょう。
つまり、タントカスタムRSが持つ「上質な内外装と快適な移動空間」に代わり、アトレーデッキバンは「汚れた荷物を気兼ねなく積める屋外デッキ」と「アウトドアで頼れる悪路走破性(4WD選択時)」という、唯一無二の価値を提供してくれます。
この価格でその特別な価値が手に入ると考えれば、むしろ“お買い得”だと感じる人も多いのではないでしょうか。
※記事中の価格は2025年8月時点のものです。最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
追加の出費は不要? 安全装備も快適装備も“全部入り”
アトレーデッキバンは装備も充実しています。
衝突被害を軽減するブレーキシステムや、高速道路で車間距離を自動制御するクルーズコントロールといった運転支援機能に加え、両側パワースライドドア、オートエアコン、TFTカラーマルチインフォメーションディスプレイなどが標準で装備されます。
まとめ:ダイハツ アトレーデッキバンの採点評価・おすすめはどんな人
最後に、本記事の結論としてアトレーデッキバンの総合評価を採点形式でまとめました。どのような方にこのユニークなクルマがおすすめなのか、具体的なユーザー像とともにご紹介します。
専門家によるアトレーデッキバンの評価
| 外観 | 4.0 | ★★★★☆ |
|---|---|---|
| 居住性・使い勝手 | 5.0 | ★★★★★ |
| 走行性能 | 3.0 | ★★★☆☆ |
| 運転のしやすさ | 4.0 | ★★★★☆ |
| 乗り心地 | 2.0 | ★★☆☆☆ |
| 燃費 | 2.0 | ★★☆☆☆ |
| 価格の割安度 | 3.0 | ★★★☆☆ |
〇アトレーデッキバンの良い点
・バンとトラックの機能を両立し、趣味や仕事での実用性が高い
・他にない独特の外観デザインで、個性を表現できる
・ターボエンジン搭載で、街乗りから高速まで動力性能は十分
×アトレーデッキバンの気になる点
・軽商用車がベースのため、後席は「タント」などに比べて狭い
・本格的な運搬用途としては、荷台の広さが中途半端
・WLTCモード燃費は14.7km/L(2WD車)で、最近の乗用車と比べると物足りなさを感じる場合も
アトレーデッキバンは誰におすすめ?
バンとトラックの機能を併せ持つ、唯一無二の軽商用車「アトレーデッキバン」。そのユニークな成り立ちは、特定のニーズを持つユーザーにとって最高の相棒となり得ます。記事の内容から、このクルマは特に以下のような方におすすめです。
趣味を全力で楽しみたいアウトドア派の人
釣りやキャンプなどで汚れたり濡れたりした道具は気兼ねなく荷台へ、一方で高価な道具や着替えはロックのかかる後席へ、といった完璧な使い分けが可能です。仲間と一緒に4人まで乗れるのも軽トラックにはない大きな魅力です。
仕事や活動で「汚れたモノ」と「守りたいモノ」を同時に運びたい人
記事で紹介したように、「獲物と猟銃」「屋外で使う道具と屋内で使う精密機器」など、性質の異なる荷物を明確に分けて積みたい場合に真価を発揮します。バンやトラック単体では解決しにくい、プロの現場ならではの悩みに応えてくれます。
ありきたりなクルマでは満足できず、自分だけのスタイルを表現したい人
その独特な外観は、街中でもアウトドアでも人とは違う個性を際立たせます。「どうやって使おうか?」と考える時間そのものを楽しめる、クリエイティブな発想を持った方にぴったりの一台です。
この記事を読んで、あなたの趣味や仕事のシーンで「こう使ったら、絶対面白い!」というアイデアが少しでも浮かんだなら、その直感はきっと正しいはずです。
ぜひ一度、お近くの販売店でこの“移動できる秘密基地”に触れ、あなたの可能性をさらに広げてみてください。
【筆者:渡辺 陽一郎 カメラマン:茂呂 幸正/MOTA編集部】
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