アウディ 新型 R8・R8スパイダー 試乗レポート/松田秀士(2/3)
- 筆者: 松田 秀士
- カメラマン:茂呂幸正
内側から外側へとLED光が流れるターンシグナル
ではリアに回ってみよう。レッドダイヤモンドと呼ばれるR8の新しいエンブレムが施され、LEDのライトストリップが内側から外側に流れるように点灯するターンシグナル(方向指示灯)が新しい。これは実際、認可を取るのに苦労したそうだ。また、リヤエンドのエア抜きのためのクロスバーも2本から3本に増えている。さらに、アンダーエアーをボディ下面から抜き去るリヤディフューザーもハイグロスブラック仕上げ。そして、デュアルエグゾーストシステムの大口径左右クロームトリムはこれまで楕円形だったのだが、新しく真円に変更されている。しっかり見ないと気付かないが、細かな改良が施されているのだ。
ところで、ハイグロスブラック仕上げのカーボンパーツが多用されるインテリアには大きな変化を感じなかったが、アルミ素材のパドルシフトが上方に長くなり、コーナーリング中などの操作でも使いやすくなっていた。
V8・V10共にドライサンプ方式を採用
では、気になる動力性能の話をしよう。ハンガリーのジェール工場で手作業によって組み立てられるV8エンジンとV10エンジンは、環境に優しく燃費の良い直噴方式だ。しかも両エンジン共にドライサンプのオイル循環方式。ドライサンプに対して一般的なオイル循環方式をウェットサンプと呼んでいる。ウェットサンプはエンジンの最下部にオイル溜まりを設け、重力によって落ちてきたオイルをポンプでくみ上げ再びエンジンの潤滑と冷却を行う方式。この方式は安価だ。対してR8が採用するドライサンプは、オイル溜まりをなくして、その代わりにオイルタンクをエンジン外に設け、そこからポンプで強制的にオイルを循環させる。当然、コストが掛かる。
このドライサンプのメリットは、オイル溜まりがない分、エンジンを低くマウントできる。さらに、コーナーリング中などの横G下においてもオイルが偏らないのでオイル切れが起こらず、エンジン本体のトラブルを予防できるのだ。
Sトロニック新採用で、よりスムーズになったシフト
ところで、かつてF1マシンのエンジン規定が排気量以外フリーだった時代に一番効率が良いとされたのがV型10気筒エンジンだ。フォード系に直列5気筒エンジンが存在するが、これは直6のスムーズさと直4のエコ性能(コンパクトも含めた)をミックスさせるために誕生した。このことから考えれば、V10はV8とV12のいいとこ取りということになる。
V8モデルのR8のパワーは430ps/430Nmなのに対して、V10モデルは525ps/530Nmと圧倒的。そして今回新採用となったデュアルクラッチシステムの7速Sトロニックの採用により、0→100km/h加速は3.9秒から3.6秒と0.3秒速くなった。その差が感じられるか?と問われたら、きっとウサイン・ボルトなら分かるに違いないだろう。
ただし、はっきりしているのはシフトチェンジのスムーズさ。以前はアップシフトの度に瞬間的に強いショックを伴ったものだが、新しいSトロニックはどのような条件下においても非常にスムーズでシフトアップ&ダウンが速い。ちなみにV8モデルは4.6秒から4.3秒にと、こちらも0.3秒速くなっている。
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