トヨタ エスティマハイブリッド 試乗レポート

トヨタ エスティマハイブリッド 試乗レポート
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動力性能と燃費性能をさらに向上 --- 新型エスティマハイブリッド

ホンダのオデッセイと共に、今へと続く日本のミニバンシーンを牽引してきたトヨタ エスティマ。現行3代目モデルは2005年の東京モーターショーへの“プロトタイプ・モデル”の出展を経て、2006年1月から発売されている。

そんな最新のエスティマに予想通り追加となったのが、6月発売のハイブリッド・モデル。エスティマHV(ハイブリッド)としては2代目となる新型は、当然のごとく動力性能と燃費性能のさらなる向上を目指した事がまずは特徴だ。

最高出力280psという強力な6気筒エンジン車もバリエーションに加えられた新しいエスティマ。が、ハイブリッド・モデルに組み合わされるエンジンは従来同様の2.4リッター・ガソリンユニットに据え置きだ。その主な理由を、トヨタでは「モード燃費で20km/リッターをマークしたかった事や、価格面の問題から」と説明。「ハリアーHVでは“世界戦略車”としてより大きな8気筒エンジンを積んだ他社モデルまでをライバルと考えたが、日本専用ミニバンのエスティマHVではそうした考え方は無かった」とも言う。既存の2.4リッター4気筒モデルと3.5リッター6気筒モデルの間を埋めるモデルとして“過剰なプラスアルファ”までは望まなかったのが、新型エスティマHVのキャラクターと言っても良さそうだ。

従来型から大きく進化したハイブリッドと先進技術

搭載エンジンは2.4リッターで、後輪をモーター駆動する4WD方式……と、そんなスペックを一見する限り従来型と同様のアウトラインの持ち主であるようにも思える新しいエスティマHV。が、実際にはハイブリッド・システムそのものは従来型から大きく変更をされた。ハードウェア的には、「従来型よりも、エンジンは除いたハリアーHVのそれにより近い」と担当エンジニア氏がそう述べるのが、新型エスティマのハイブリッド・システムだ。

すなわち、最高で143psを発生可能なフロントモーターにはハリアー同様のリダクション機構を採用。トルク増幅による効率良い駆動力伝達とモーターの小型化を、このメカが実現。と同時に、昇圧回路により245Vの駆動用バッテリー電圧を650Vへと高電圧化。前出フロントモーターと後ろのアクスルに置かれるリアモーターの高出力化を図っている。

バイワイヤ式のブレーキや“VDIM”(車両運動性能統合制御)など、ハイブリッド・システムの特徴を生かしたメカニズムを標準装備とする他、レーダー式クルーズコントロールやプリ・クラッシュセーフティ・システム、レーン・キーピングアシストなどの先進アイテムをオプション設定するのも、このモデルの大きな特徴だ。

ハイブリッドならではの高い静粛性

実はこのところ、ヨーロッパのメーカーが作った試作段階のハイブリッド車に乗る機会が多かった。中には「コストの問題さえ解決出来れば、このまま売り出してもきちんと商品になるのでは」と思えるモデルも存在はしたが、そのいずれもが“アイドリング・ストップ”を行うがゆえに、頻繁に発声するエンジン始動時の音とショックにはとても苦労をしている様子だった。

が、その点すでにトヨタが発売済の各ハイブリッド車は圧倒的な優等生だ。そしてもちろん、この新型エスティマHVも例外ではない。うっかりしていると気付かぬうちにエンジンが掛かっているというこのテクノロジーは、実は物凄い苦労の産物であるに違いない。

絶対加速力ではハリアーHVやレクサスGS HVのように「驚くべきもの」という印象までは行かないエスティマHVだが、それでもアクセルペダルを相当深く踏み込まない限りは高い静粛性のままにスルスルとさしたるエンジン振動もないままに速度を増して行くのは、明らかに“ガソリン車”とは異なる「快感」に近い感覚。一方で、一層の加速力を求めてアクセルペダルを深く踏み込むと、以前の静かさからの“落差”で逆にノイズが目立つ、といった課題もある。ハイブリッド・システムの重さによるものか、その乗り味が全般にブルブルとした振動感が目立ちがちな点にも、今後のリファインを望みたい。

ミニバンの燃費としては優秀

カタログ記載値で20km/リッターを目指したという今度のエスティマHVの燃費性能は、実は「エアコンやライトなどを通常通り使用しながら、様々な現実の道を通年で計測する社内規定による『実用モード』で計測すると、従来型比20%ほども向上している」のも大きな売り物であるという。実際、トヨタのハイブリッド車としては初めて採用をした、エンジンの暖気時間を短縮して素早く“アイドリング・ストップ”を行う目的の排気熱再循環システムも、カタログ燃費の測定時には冷間時からの測定を行わないためにその効果は現れないのだと言う。が、それでも「実用燃費上では効果が大きいから」と敢えての採用を行ったのは、まさに“トヨタの良心”と言っても良いのではないだろうか。

今回のテストドライブでは限られた時間とシチュエーションのため、それをこのクルマの標準的な実用燃費として公表するのははばかれるが、参考までに明らかにすれば車載の平均燃費計は9.9km/リッターという数値を表示した。ちなみに、テストのための頻繁な加減速やハンドリングのチェックを交えたこの区間での燃費は、経験値からすれば「2.4リッターのガソリン・モデルであったら恐らく6km/リッター台だろうな」と想像の付くもの。車両重量が2トンに迫るミニバンの燃費としては、エスティマHVのネンピはまず文句のないものと言って良いはずだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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