日産 セレナe-POWER試乗レポート｜家族みんなに嬉しい機能満載！燃費だけじゃない、電動化が生む付加価値とは(2/2)
- 筆者： 藤島 知子
- カメラマン：茂呂 幸正
セレナe-POWERの走りは“美術館並み”の静かさだった
何より、最も気になるのは、モータードライブがもたらすセレナe-POWERの走行フィールがどうかということ。
冒頭にも記したが、e-POWERの場合、エンジンは発電役に徹し、その電力を使って、モーターでタイヤを駆動して走る仕組み。先ずはモーターのみで走り出してみると、その圧倒的な静けさに驚かされる。日産の開発者曰く「美術館並みの静粛性レベル」を実現しているとのこと。
車体側には、遮音フィルム入りのガラスやコンバーターが発する高周波のノイズを抑え込む4層構造のフロアカーペットを採用する、といった特別な対策が施されているそうだ。ただし、発電役のエンジンが掛かり始めると、まるで家の冷蔵庫のように一定の周波数の音が響いてくる。
全体としては耳障りなノイズは少ないが、アクセルペダルに連動してクルマを前に押し出す一般的なクルマのエンジンのリズムとは異なる回転の仕方なので、最初は違和感を覚えてしまうかも知れない。しかし、そうした環境と差し引きしても、モータードライブがもたらす走行フィールは、未来の乗り物に乗っている実感を与えてくれるだろう。
アクセルペダルを踏んだ瞬間から、クルマを前に押し出す力強いトルクを発揮。さらに、タイヤが地面を滑らかに、優しく捉えて走っていく。その際、これだけ大きなミニバンのボディをわずか3気筒の1.2Lエンジンで発電した電力で走らせているなんて想像が及ばないほど、十分なパワーを発揮することに驚かされてしまう。
セレナe-POWERには走行モードが備わっているが、ECOモードを選択すると、リーフやノート e-POWERと同様に“ワンペダルドライブ”が使えるようになる。
“ワンペダルドライブ”とは、アクセルペダルの操作一つで加速と減速の両方を行うものだが、加速する時はペダルを踏み込み、右足の力を緩めると徐々に減速して停止してくれる。最初はペダルの踏み加減にコツが必要だが、慣れると減速する時の車速の落ちかたが絶妙で、交差点の右左折やカーブを安定した姿勢で通過していける。
エンジンで駆動して走るクルマと比べると、モーター駆動は緻密な制御が行いやすい点で操縦安定性におけるメリットが得やすいが、セレナe-POWERは背が高いミニバンでありながら、実走行の環境に合わせ込んだチューニングが巧く決まっているし、運転に不慣れなドライバーでも安心してドライブすることができそうだ。車両のふらつきも少ないので、同乗者も快適に移動できるだろう。
今の日産が持つ最先端技術をひとつにまとめたセレナe-POWER
新技術を投入し、互いが切磋琢磨しながら熾烈な争いを繰り広げているミニバン勢。そうした中でも、将来的な自動運転化に向けた道筋を一足早くユーザーに体験させようとしているのも、今の日産の戦略だ。
現行型のセレナに採用されてきた同一車線自動運転化技術「プロパイロット」は、高速走行時にハンドル上のスイッチで機能をオンにして、車速を設定すると、前走車との車間を維持しながら追従し、操舵をクルマが行うことによって車線の中央付近を維持しながら走ることができる。ミニバンとして使って嬉しい機能性に、未来を先取りする先進機能、そこに、新たにe-POWERならではの新感覚の走行体験が加わることで、またひとつ積極的にセレナを選びたくなる理由がプラスされた。
先代モデルはこのクラスのミニバンでNo.1の売上げを誇っていたセレナだけに、今の日産の技術を総動員した一台に仕上がっている。
[Text:藤島知子 Photo：茂呂幸正]
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通称「藤トモ」。スーパー耐久のレースクイーンを経験後、軽自動車レースに参戦したことがきっかけで様々なレースに参戦。レースで培った技術と女性ならではの視点が魅力の女性モータージャーナリスト。記事一覧を見る
自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。
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