三菱ふそう スーパーグレート試乗&日独米トラックの豪華共演!|自動運転レベル2の実力に迫る(3/3)
- 筆者: 遠藤 イヅル
- カメラマン:茂呂 幸正
高級感は乗用車と同じ!? メルセデス・ベンツ「アクトロス」
洗練されたメルセデスの大型トラック
改めて、洗練されたデザインを持つ最新版のアクトロスを見てみることにしよう。
仕様的には「1846 LS 4×2 L Cab Stream Space」と呼ばれるモデルで、1846では「車両総重量+最高出力」を示す通り、直6・10.7Lから455PSを発生する「OM470型」エンジンを搭載。トランスミッションは12速AMTの「Mercedes Power Shift3」がチョイスされる。
アクトロスにもABA5、アクティブ・ドライブ・アシストなどスーパーグレートと同様のレベル2 自動運転技術が積まれており、同乗試乗では狭いレーン内でもさらに細かくトラックの位置を微調整できるなど、その繊細な制御の一端を垣間見ることができた。
さすが! 高級感あふれる室内空間
一目でメルセデス・ベンツとわかる凝った外観デザインだけでなく、インテリアも乗用モデルとの強い近似性を感じさせるイメージになっている。
特徴はダッシュボード正面にフードすらなく鎮座するメーターパネルで、もはや完全に「iPad横向きに置きました」的なデジタルなスタイル。大きくドライバーを向いたコンソールにもディスプレイが設けられており、それぞれ「第1ディスプレィ」「第2ディスプレイ」と呼ばれている。
どちらもタッチパッド式マルチファンクションスイッチによって様々な情報表示の切り替えや設定を行うことが可能で、第2ディスプレイはさらにタッチコントロールも可能としている。
ダッシュボード、ドア内張り、シートのしつらえなどはまさに「メルセデス・ベンツのクオリティ」。乗用モデルとまったく遜色ない高品質な仕上がりだった。
まさかの英断、「アレ」なしで走る!?
そしてアクトロスで目についたのは、トラックでは大きく目立つ“アレ”がないこと。
写真をよく見て欲しい。お気づきだろうか。
そう、アレとは、ミラー。あるのは、小さく飛び出たツノのようなパーツのみで、これは「ミラーカム」と呼ばれる世界初搭載の後方確認用カメラ。視界を遮る大型ミラーがなくなったことで視界を広げ、悪天候時や夜間でのミラー自体の見にくさも解消するという。
また、前面投影面積が大きなトラックでは、付加物による空力改善によって1%単位での涙ぐましい燃費向上を行っているが、明らかに空力的に不利なミラーを撤去することで、なんと一気に3%もの燃費向上が期待されると言うのだから、その効果はかなりのものだ。
気になる室内側では、Aピラー部分に縦長の15インチディスプレイ(解像度:720×1920ピクセル)が設けられており、ここに後方の映像が映し出される。
ミラーは、牽引しているトレーラーの最後端を示すサインが表示されたり、トラクターとトレーラーに角度が発生した時でも、画面上にはカメラの角度を変えて後方の状況を見せる(牽引する車両では避けられない「ミラーにトレーラーの側面だけが写る」といった状況に対応する)など、デジタルならではの機能も盛りだくさん。
ディスプレイは画質もよくとても見やすく、“画面”という違和感もあまりなかった。視線移動が少ないのも美点だろう。今後、大型トラックへの普及が進むかもしれない。
スケールが違いすぎる! フレイトライナー「カスケディア」
超超シャコタンでギリギリまで燃費アップ!
一方のカスケディアにも興味津々だった。持ち込まれたモデルは正しくは「126BBC/72" Raised Roof(RR)Sleeper」で、トラクター単体で全長8mを超え、全高は4mオーバーという大きさにまずびっくり。
さらに、地面とのクリアランスを4インチ(約10cm)まで縮める「超低グランドクリアランスバンパー」、被牽引車との隙間を減らす「24インチサイドエクステンダー」、サイドエクステンダーの上まで回り込む「ルーフフェアリングディフレクター」などで徹底した燃費向上を図った“エアロックスパッケージ”の迫力もすごい。日本ではこんなに地面とのクリアランスが少ないと、走れるところが限られてしまいそうだ。
ボンネット内には、400hpを誇るデトロイト・ディーゼル製の14.8Lディーゼルエンジン「DD15型」を搭載。12速AMTのトランスミッション「DT12 Direct Drive」を介して、後輪2軸を駆動する。
中はまるでキャンピングカー!?
さて、実際乗り込んでみても、何もかもスケールが違う。
カスケディアのキャブにはデイキャブ、スリーパーキャブ(XT)があり、さらに運転席上部もハイルーフ化した「Raised Roof」を用意する。スリーパーキャブ自体も長さ116インチ(約3m)と126インチ(約3.2m)の2種類があるが、後者の室内は日本のトラックの常識を大きく超えるもの。
どでかく分厚い折りたたみ式ベッド、テーブル&ソファ、TV、冷蔵庫などを備え、しかもキャブ内を立って移動ができる。これはまさに部屋!
実際、北米では、長距離ドライバーにとって大型トラックは住居のような快適性がまず求められるのだという。取材時にはダイムラー・トラック・ノースアメリカから来たドライバー、通訳、筆者、カメラマンなど5人で乗り込んでいたが、キャブ内ではそれでもまだゆとりがあった。
ボンネットトラックは運転がしづらそうな印象だが、乗り込んでしまえば思いの外コンパクトに感じられたのは意外だった…いや、それはコースが広いからに違いない。このサイズで一般道を走るのは、さぞ大変そうだ(涙)。
現代のアメリカントラック
アメリカの大型トラックといえば、天高く突き出た2本のマフラー、操作が煩雑な複数本の長いシフトバーなどのステレオタイプなイメージがあるが、それはもはや昔話。現代のアメリカントラックはセミオートマでイージードライブなのだった。
そしてもちろんカスケディアにも、フレイトライナーでは「デトロイト・アシュアランス5.0」と呼ぶ(なんだかすごくカッコイイ!)、レベル2 自動運転技術(ABA5、ACC、アクティブ・ドライブ・アシストなど)が備わる。インジケーターや空調スイッチ類にメルセデス・ベンツ&三菱ふそうとの共用化が多数見られ、一見まったく違う3台が同じグループ内に属しているのだ、という実感があったのは興味深かった。
まとめ:自動運転トラックが走る未来はすぐそこだ!
10年後の進化を楽しみに
前述のように実装が遅れていた大型トラックのレベル2 自動運転技術だが、このジャンルでは乗用車以上に先進安全装備の充実が求められることから、今後は他メーカーでの普及が予想される。
10年前には想像できなかったことが起きている現在なので、10年後にはトラックの世界がどんな進化を遂げているだろうかが楽しみだ。今後の動向をしっかりと見ていきたいと思う。
[筆者:遠藤 イヅル/撮影:茂呂 幸正]
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