マイナーチェンジしたばかりの新型VWゴルフ( ゴルフ7.5)を徹底解説&速攻試乗
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:小林岳夫
新型VWゴルフ7試乗レポート!
2017年5月25日、フォルクスワーゲン ゴルフ(ゴルフ7)が、マイナーチェンジを実施した。速攻で新型ゴルフ TSI ハイラインに試乗してくれたのは、自動車評論家の渡辺陽一郎さん。長く愛され続ける国民車ゴルフはどう進化を遂げたのか。車好きの間では通称”ゴルフ7.5”などと呼ばれているマイチェン版VWゴルフの改良点や新機能、走りの印象に至るまで徹底解説する。
40年以上の歴史をもつ輸入車の老舗定番ブランド ”Golf”
輸入車にはさまざまなブランドと車種があるが、この中で最も身近な存在はフォルクスワーゲン(VW) ゴルフだろう。初代VW ゴルフは1975年に日本で発売を開始したので(欧州では1974年)、すでに40年以上の歴史がある。
しかも売れ行きは今でも好調だ。2016年度(2016年4月から2017年3月)の輸入車販売ナンバーワンはMINIだったが、2017年の第1・4半期(2017年1月から3月)に限れば、順位が逆転してゴルフが1位になる。この3か月間で6406台を登録しており、日本車であればスバル レヴォーグやホンダ オデッセイと同等だ。中堅レベルの販売実績である。
それなのにブランド全体で見ると、1位がメルセデス・ベンツ、2位がBMW(ミニを除く)、3位がVWにとどまる。かつてVWは輸入車の最多販売ブランドだったが、2015年9月に北米で発生したディーゼル車排出ガス規制に関する不正問題のイメージダウンから脱し切れていない。この状況も考えれば、VWゴルフは従来型からの乗り替え需要が多いこともあり、かなり好調な売れ行きとなる。
ゴルフが高い人気を得ている理由は、優れた走行安定性、長距離を移動する時でも疲労の少ない快適な乗り心地など、ドイツ車の魅力を適度なサイズのボディと価格で得られることだ。今ではゴルフも全幅がBMW 3シリーズと同じ1800mmになって大型化されたが(VW ポロが昔のゴルフに相当するサイズになる)、全長は4265mmだからドイツ車の中ではコンパクトな部類に入る。
7代目の現行ゴルフ(ゴルフ7)は2013年に日本国内販売を開始したが、今回2017年5月25日に少し規模の大きなマイナーチェンジを受けた。この概要と、試乗した印象をお伝えしたい。
メーターパネル内に12.3インチのカラー液晶ディスプレイを表示
マイナーチェンジは5ドアハッチバックのゴルフに加えて、ステーションワゴンのゴルフ ヴァリアント、スポーツモデルのGTIやRについても行われた。
変更点で最も目立つのは外観だろう。マイナーチェンジだから基本デザインは同じだが、従来型のバイキセノン(ディスチャージ)ヘッドライトをLEDヘッドライトに変更した。5ドアハッチバックの車両後部にはダイナミックターンインジケーター(方向指示器)が装着され、光の帯が中央から外側に流れるアウディのような手法を採用する。
内装では、ゴルフ TSI ハイラインとGTIにオプション設定、ゴルフRに標準装着されるアクティブインフォディスプレイに注目したい。
ハンドルの奥側に12.3インチのディスプレイが備わり、速度計とエンジン回転計、この間にはカーナビのマップや各種の情報を表示できる。インパネの中央にもカーナビ画面が備わるが、アクティブインフォディスプレイに地図画面を表示している時は、オーディオなど別の情報を引き出して有効活用できる。アクティブインフォディスプレイは画面表示の精度が高く視認性も良いため、走行中のチェックもしやすい。
この装備はアウディに加えてVW パサートやティグアンにも採用され、インパネ周辺も高級に見せているが、ニーズはユーザーによって異なるだろう。情報表示の多機能を求めるなら欲しいが、一般的には装着しなくても不便は生じない。テクノロジーパッケージとして用意され、オプション価格は17万2800円となる。
自動ブレーキに歩行者検知機能を追加するなどマイナーチェンジで安全性がさらに向上
その一方で、多くのユーザーにとってメリットになるのが安全性の向上だ。
従来からミリ波レーダーとカメラを併用する緊急自動ブレーキのプリクラッシュブレーキシステムを備えていたが、2017年のマイナーチェンジでは、車両に加えて歩行者を検知する機能も加わった。
全車速追従機能付きのクルーズコントロールも従来型から備えていたが、マイナーチェンジではトラフィックアシストを追加している。発進と停止を繰り返す渋滞時に適したアクセルとブレーキの制御を行う。ハンドルを保持していれば、路上の白線に沿って操舵支援も行うから、渋滞時の疲労を軽減してくれる。
このほか、直列4気筒1.2リッターターボと1.4リッターターボの各TSIエンジンの動力性能は以前と同じだが、スポーティグレードのGTIは最高出力が従来の220馬力から230馬力に、ゴルフRは280馬力から310馬力に、それぞれ高められた。ゴルフRのDSG(有段式AT)は6速から7速に多段化されている。
新型ゴルフでは、LEDを用いて前後ランプに新たな演出が加わった
これらの変更点を踏まえた上で、1.4リッターのターボを搭載した新型ハイライン(Golf TSI Highline)を試乗した。
まずは外観だが、フロントマスクにはLEDポジションランプが備わり、流行に沿った上質感を演出する。この点はユーザーによって評価が分かれると思う。今のVWのフロントマスクは水平基調でシンプルな印象だが、そこにL字型のLEDポジションランプを加えたから、造形が少し繁雑に受け取られる。
ボディ後部の光が流れるダイナミックターンインジケーターも同様だ。この手法は1970年に発売された初代 日産 ローレルの2ドアハードトップなどが採用しており、フラッシャーの名称で子供用の自転車にまで使われた。当時と今では光らせ方はまったく違うが、オジサン世代としては「今さらどうして?」と思ったりする。
アクティブインフォディスプレイで高級感が高まった
アクティブインフォディスプレイを装着したインパネは、アウディに似た印象だ。インパネ中央部のデザイン処理も質感を高め「質実剛健」といわれた時代のゴルフとは見栄えが異なる。良し悪しは別にしてゴルフが高級車になった感じがする。
メッキパーツの使い方は抑制が利いていて、華美になったり、妙に光り方が気になったりはしない。以前はATレバーの部分に大きなメッキパーツを装着したが、今では廃止されている。
ハンドルはD字型だ。直進状態でハンドルの下側が平らにデザインされている。ゴルフはスポーツカーと違ってハンドルとドライバーの大腿部が離れているから、D字型にする実用的なニーズはない。デザイン性を重視した結果だが、たぐり/送りハンドルの操作をするドライバーは、違和感が生じることもあるだろう。
TSIハイラインのシート生地は、従来のアルカンターラ&ファブリックからマイクロフリースに変更された。肌触りの良さが特徴で、伸縮性も優れ、座った時に乗員の体を柔軟に受け止める。運転席の基本的な座り心地は、従来のゴルフと同じで腰をしっかりと支える長時間運転も快適なタイプ。そこに適度な柔らかさも加わり、座った印象が上質になった。
後席は従来と変わらず少し硬めで、頭上の空間を確保するために腰が落ち込むが、マイクロフリースの採用で以前に比べると座り心地が馴染みやすい。足元空間にも不足はなく、身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には握りコブシ2つ分の余裕を持たせた。ファミリーカーとして快適に使える。
カタログ燃費は21km/L→19.1km/Lへ JC08モードの数値をあえて悪化させた理由とは
内装の確認を終えて、新しいゴルフ TSI ハイラインの試乗を開始した。
すると最初に気付いたのが乗り心地の向上だ。従来からゴルフは全長が4300mm以下の5ドアハッチバックでは快適な部類だったが、低速度域で芯のある硬さを感じた。それがマイナーチェンジ後は、角が丸くなって足まわりがしなやかに伸縮する。大きめの段差を通過した時は相応のショックを伝えるが、細かなデコボコは感じにくい。
試乗車に装着されていたタイヤは17インチ(225/45R17)のブリヂストン・トランザT001で、足まわりとの相性も良い。
もともとゴルフは、操舵感から乗り心地、エンジンの性格に至るまで、ドイツ車らしく比較的高い速度域に焦点を当てたクルマ造りを行ってきた。この速度域を最近は低速側へ広げているように感じる。表現を変えれば、日本でも違和感なく使えるように洗練されてきた。
乗り心地を快適にしながら、走行安定性は従来と同様に優れている。
TSI ハイラインはリアサスペンションが4リンクになり、後輪側の接地性が高まったのを受けて、1.2リッターのTSI トレンドラインとTSI コンフォートラインに比べると回頭性を向上させた。機敏に曲がるスポーティな感覚は演出されていないが、車両の向きが操舵角に対して忠実に変わり、実用指向のクルマでありながらドライバーが車両との一体感を得やすい。そんな正確性の高い走りが、運転の楽しさに結び付いた。この持ち味に快適性を加えたのが、今回のマイナーチェンジで最も注目されるところだ。
JC08モード燃費(カタログ燃費)は、1.2リッターモデルが従来の21km/Lから19.1km/Lに、1.4リッターのTSI ハイラインは19.9km/Lから18.1km/Lに、それぞれ数値を悪化させている。今回のマイナーチェンジで実用燃費に近い計測を行ったからだ。
最近はユーザーから燃費数値と実用燃費の格差を指摘されることが多く、2018年からは新しい燃費基準のWLTPも導入される。そこでマツダ CX-5などと同様、燃費数値が後退した。
VWはそろそろ北米ディーゼル問題の総括をしないといけない時期だ
マイナーチェンジされたゴルフの価格は、1.2リッターのTSI トレンドラインが249万9000円(変更前も同額)、TSI コンフォートラインは279万9000円(変更前は280万9000円)、試乗した1.4リッターのTSI ハイラインは325万9000円(同328万9000円)とされ、上級の2グレードは少し値下げされた。TSI ハイラインの場合、ヘッドライトウォッシャーが削られたりしたが、緊急自動ブレーキの歩行者対応やLEDヘッドライトの装着を考えると実質的に割安感を強めている。
従ってゴルフは推奨度の高い輸入車だが、今後も日本でフォルクスワーゲン車を円滑に販売していくには、ディーゼル車排出ガス規制に関する不正問題の詳細な説明が必要だ。もはや遅きに失した感もあるが、この案件を避けてVWがクリーンディーゼル車の輸入に踏み出すことはできない。いつかは説明責任を果たさねばならないのだから、早い方が良い。
このあたりはドイツ本国の理解力が求められる。2015年10月に日本国内のVW販売が対前年比で半減した時、ドイツの反応は「ディーゼルを売っていない日本でなぜそこまで減るのか」という無理解であったからだ。日本のフォルクスワーゲンはヤナセの時代からブランド構築を入念に行い、上質で良心的な小型車を供給するメーカーとして定着させた。
ところがディーゼル問題でユーザーは信頼を裏切られ、売れ行きを落とした。ディーゼルを日本で売っているか否かは問題ではなく、VWのブランドイメージと、ディーゼル問題のギャップが販売を激減させた。
そして日本の場合、事の大小にかかわらず、失敗をしたことよりもその後の行動が評価を左右する。誠意のある態度を示したことで、失敗した後の方が評価を高めることもある。
日本の自動車メーカーも、海外の国民性や市場を真摯に学んで、世界各国で売れ行きを伸ばした。海外の商品を日本で継続的に売るには、日本のことを深く知っていただく必要がある。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:小林岳夫]
Volkswagen NEW Golf TSI Highline[FF] 主要諸元(スペック)
Volkswagen NEW Golf TSI Highline[FF] 主要諸元(スペック) | |
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JC08モード燃費 | 18.1km/L |
価格 | 3,259,000円 |
全長 | 4,265mm |
全幅(車幅) | 1,800mm |
全高(車高) | 1,480mm |
ホイールベース | 2,635mm |
車両重量(車重) | 1,320kg |
乗車定員 | 5人 |
エンジン種類 | 直列4気筒 DOHC インタークーラー付ターボチャージャー TSI ガソリン直噴エンジン |
総排気量 | 1,394cc |
最大出力 | 140ps(103kW)/4500-6000rpm |
最大トルク | 25.5kg-m(250Nm)/1500-3500rpm |
トランスミッション | 7速DSG(デュアルクラッチトランスミッション) |
タイヤサイズ | 225/45R17 |
サスペンション形式 | (前)マクファーソンストラット式 (後)4リンク式 |
※試乗・撮影車はオプション装着車
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