米国も待ち望む日本車、トヨタ新型スープラが15年ぶりの表舞台へ登場間近(1/2)
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:トヨタ自動車
分岐点は「60スープラ」
私は本稿を、アメリカ西海岸のサンノゼ市内で執筆している。この周辺は、いわゆるシリコンバレーと呼ばれるIT産業の集積地であり、関連企業の従業員は高給取りが多く、路上では高級スポーツカーの姿を数多く見かける。なかでも目立つのはテスラ「モデルS」だ。
バブル期に日本でブームとなったメルセデス190Eが「六本木のカローラ」と呼ばれたが、「モデルS」はいま「シリコンバレーのカローラ」のような存在になっている。
そんなシリコンバレーの住人たちが発売開始を待ち望んでいる日本車がある。それがトヨタ新型スープラだ。
最近、日米の自動車メディアでスパイフォトが頻繁に掲載されている、新型「スープラ」。今年10月開催の東京モーターショーの目玉として日本でも期待が高まっている。スープラは2002年に生産と販売が終了しており、15年ぶりに表舞台に帰ってくる。
トヨタとしては近年、『86』の投入でスポーツカー市場に本格復帰。ユーザー参加型のレースやラリーなどを積極的に展開するなど、スポーツカーの王道であるフロントエンジン・リア駆動(FR)の市場を再構築してきた。
そうした中、86の兄貴分がそろそろ欲しい、という声がトヨタの社内外から高まってきたのは当然の流れである。現状では、86の上のスポーツカーは事実上、レクサスRCや新型LCといった日本車としては超高級車の部類まで価格が一気に跳ね上がってしまい、庶民の感覚では手が出せないのだから。
とはいえ、世界へ目を向けた場合、スープラを取り巻く市場環境は、歴代の「40スープラ」「50スープラ」(1978年~1981年:日本名「セリカXX」)、「60スープラ」(1981年~1986年:日本名「セリカXX」)、「70スープラ」(1986年~1993年)、そして「80スープラ(1993年~2002年)が活躍した時代とは大きく違い、新型スープラに対する一抹の不安の感じる。
補足すると、これら「40」「50」といった数字は、車両型式番号の「A40」「A50」を意味し、呼び方は「ヨンマル」「ゴーマル」。特に、チューニングカーのベース車両として人気を博した、「70(ナナマル)」と「80(ハチマル)」は自動車ファンの間では今でも一般名詞として通用する。
そのため、本稿ではあえて、新型を「90(キューマル)」と呼ぶこととする。
80~90年代と違う、米スポーツカー市場
1978年、私は自宅近くの横浜市内のトヨタディーラーで「40スープラ」こと、トヨタ「セリカXX(ダブルエックス)」の実車を見た。その時の第一印象は「アメ車」だった。デザインフォルムが、シボレー「モンツァ」を彷彿させ、同じくGM系のビュイックのようなブランドイメージを感じた。
当時、トヨタの主力スポーツカーは「セリカ」であったが、「セリカ」の兄貴分という印象はなく、その後に登場する「ソアラ」へと続く、トヨタのスペシャリティカー路線の起点だった。
そうした雰囲気が60スープラで一変した。当時の日本車としては極めて珍しい、リトラクタブルライトを採用したハッチバックとなり、スープラはスポーツカーとして生まれ変わった。この変化が、アメリカ市場で大いにウケた。
このアメリカでのスープラブームが日本に飛び火し、北米仕様スープラの純正パーツが日本で人気となった。当時、私は同部品を日本に輸入する東京の渋谷区内の企業の業務を手伝っていた。日本ではちょうど、ドアミラーが解禁となる時期と重なり、北米仕様の電動式の純正ミラーが飛ぶように売れた。
また、リアハッチを横にまたぐような大型の純正スポイラーや、エンブレム、そしてリアハッチ後部に張る大きなサイズのスープラステッカーなど、スープラと名がつけばどんな純正パーツでもよく売れた。アメリカではXXといった文字列は、成人向け映画を意味する表記をイメージさせるため、アメリカでは『スープラ』と呼称しており、日本人はその名前に憧れを抱いたのだ。
そして、「70」からは日本でも車名を『スープラ』とし、世界市場での名称が統一された。
その後、90年代末に米西海岸を震源として全米に広がった、「ジャパニーズ・チューニングカー」ブームでも、「スープラ」は「GT-R」「ランエボ」「WRX STI」と共に、日本を代表するスポーツカーとして名声を高めた。
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