先代の反省を踏まえて開発、ケタ違いに“魅力度”が増した新型「プリウスPHV」(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
駆動に2つのモーターを使うことで、EV走行の動力性能が大きく向上
ハイブリッドシステムは、新型プリウスPHVでは制御の仕方が大きく変わる。先代プリウスPHVでは充電された電気で走る時も駆動用モーターのみだったが、新型では駆動用モーターと併せて発電用モーターも駆動に使うようにした。
制御の方法としては、速度域や負荷に応じた使い分けはせずEV走行時は常に2つのモーターを駆動する。
駆動用モーターの最高出力は53kW(72馬力)。これに発電用モーターの23kW(31馬力)も加わり、EV走行時の動力性能が大幅に強まる。
駆動用モーターのみを使う従来型でも動力性能は十分で、時速100kmの走行も可能だった。エンジンが始動するのはアクセルペダルを深く踏み込んだ時だけだったが、新型プリウスPHVではこの限界領域がさらに高まる。
テスト上では、時速135kmくらいまでモーターのみで走れるという。
エンジン本体は直列4気筒の1.8リッターで、最高出力は72kW(98馬力)、最大トルクは142N・m(14.5kg-m)だから、ベース車のプリウスと共通。
充電された電気を使わずに、ハイブリッド車として走った時のJC08モード燃費は「37km/L」(目標値)。現行プリウスでは売れ筋グレードが「37.2km/L」、Eグレードは「40.8km/L」だから少し下がるが、車両重量が1,510kgに達してプリウスよりも150kg重くなったことを考えれば、納得できる数値だろう。
先代プリウスPHVの倍になった電池容量
低燃費対策は入念で、タイヤも専用に開発。展示車に装着されていた15インチタイヤ(195/65R15)は、銘柄はブリヂストン・エコピアEP150。指定空気圧は前輪が250kPa、後輪が240kPaで、この数値はプリウスと同じだ。市販の際には、17インチタイヤも用意される。
車両重量が150kg増えて、駆動用電池が車両の後部に搭載されて重量配分も変化したことから、足まわりに使われるスプリングのレート、ショックアブソーバーの減衰力、スタビライザーの径などはすべてプリウスPHV専用に見直しが図られた。
駆動用リチウムイオン電池の総電力量(容量)は「8.8kWh」だから、先代プリウスPHVの2倍になる。アウトランダーPHEVの12kWhには達しないが、プラグインハイブリッド車として満足できる容量だろう。
ちなみに輸入車の総電力量は、フォルクスワーゲンパサートのGTEが「9.9kWh」、ゴルフが「8.7kWh」、BMW330eが「7.7kWh」、メルセデス・ベンツ C350eが「6.28kWh」になり、プリウスPHVも世界標準に達したといえる。
大幅に伸びたEV走行距離
そして、充電された電気だけで走れる距離は「60km以上」とされている。
先代プリウスPHVはJC08モード走行で26.4km(実走行では21~22km)だったので、実用性が大幅に高まる。アウトランダーPHEVがJC08モード走行で60.8kmだから、これに近づきたいところでもあるだろう。
先代プリウスPHVと違って急速充電器に対応することも新型プリウスPHVの特徴だ。
駆動用電池が放電された状態からの充電所要時間は、100V電源が15時間、200Vが2.5時間、急速充電器(80%までの充電)が20分。急速充電は日本仕様のみの対応になる。
先進技術を盛り込んだプリウスPHV、購入するならお早めに!
先代プリウスPHVの売れ行きが伸び悩んだ背景には、家庭用の200V電源の取り付け工事とセットで売り込もうとしたこともあった。日本では総世帯数の約40%が集合住宅に住み、自宅に充電設備を持てないユーザーも多い。それなのに電源工事とセットで売れば、トヨタが自ら販路を狭めてしまう。
新型プリウスPHVではこの売り方も改め、通常はハイブリッド車として使い、必要な時だけ設備のある場所で充電して走るニーズも視野に入れる。これで価格も妥当なら、売れ行きを伸ばす余地がありそうだ。
先代型は「充電の可能なプリウス」だったが、新型にはプリウスを進化させたボディにさまざまな先進技術を盛り込んだから、トヨタのクルマ造りを象徴する存在にもなり得る。
冒頭で述べたように新型プリウスPHVの受注開始は2016年9月上旬(この時に正確な価格も分かる)、正式発表は10月26日だから、発表後に契約すると納期が長引く心配もある。
トヨタに限らず、実車を見ないで予約受注を入れさせる今のクルマの売り方は好ましくないが、欲しいなら早めにディーラーに出向いた方が良さそうだ。
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