30年叶わぬトヨタの夢「ル・マン24制覇」WEC年間チャンピオンよりも手に入れたい称号
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世界3大レースと言えば「F1 モナコGP」、「インディカーシリーズ インディ500」、そしてFIA 世界耐久選手権(WEC)「ル・マン24時間」だが、トヨタはその内の1つである「ル・マン24時間レース」に1985年の初参戦から17回にわたって参戦し、4度の2位(1992年、1994年、1999年、2013年)を獲得している。2014年には、中嶋一貴選手がル・マンの予選で日本人初となるポールポジション獲得し、ルマン初制覇が期待されたが結果は3位に終わっている。
新型「TS050 HYBRID」は、ル・マンのコースレイアウトに特化して開発された。村田氏は「2015年の4月から5月(最終的に決めたのはル・マンの頃)に来年すべてのコンポーネントを一新すると決めた。エンジンとリチウムイオンに関しても10ヶ月くらいで開発した」と、超短期間で新型マシンを仕上げたことを明らかにした。
その一方で、新型「TS050 HYBRID」に搭載されたリチウムイオンバッテリーに関して、かなりの自信を持っている。村田氏は「このリチウムイオンバッテリーは、市販車に持って行ったらわくわくするものです。 ル・マンで勝ちたい。そしてその先にあるのが“夢のレーシングハイブリッドカー”をできるだけ早く市販化すること。これが我々のゴールである」と力説。
これまでのTS040 HYBRIDの技術は、既に現行市販車に反映されてきた。最近のレースは、スピードが速くなるというよりは、燃費(熱効率)が良くなっているそうで、まさに市販車に搭載するハイブリッド技術の先行開発をレースで行っていることになる。
もともとトヨタのレース活動の本来の意義は「世界との競争の中で、技術活動を促進し、自動車の進歩進化に寄与すること。」ル・マンを制覇すれば村田氏が語っていた “夢のレーシングハイブリッドカー”の市販化へ大きく前進するだろう。トヨタの挑戦は終わらない。
「TS050 HYBRID」の詳細はこちら:トヨタ、ル・マン参戦の新型マシン「TS050 HYBRID」を公開!
▼2016年シーズン、トヨタの実力は?
開幕戦 シルバーストーン
4月17日、WECが開幕戦 シルバーストーン6時間レースが行われ、小林可夢偉選手とステファン・サラザン選手、マイク・コンウェイ選手が駆るTS050 HYBRID #6号車が3位でゴールしたのち、上位車両の失格により2位となった。一方で、中嶋一貴選手、アンソニー・デビッドソン選手、セバスチャン・ブエミ選手の#5号車は、タイヤのパンクにより車両後部にダメージを負い16位に終わった。
デビュー戦からいきなり表彰台を獲得した可夢偉選手の印象について村田氏は、「一貴は冷戦沈着で可夢偉君は奔放のような外見をしているが、レース後のブリーフィングでは、可夢偉君くんの分析はエンジニアにとって非常にわかりやすいんです」と見た目とのギャップに驚いたという。
そして一貴選手は「一貴どっちかと言うと、レースコンディションが厳しい状況に置かれていても、意に介さずたんたんとコンスタントなタイムを出してくれる」とこちらも好印象のようで、「2人のキャラクターは開発において戦力になっています」と付け加えた。
チームから絶大な信頼を与えられたドライバー2人はトヨタにとって大きな戦力となるだろう。
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第2戦 スパ・フランコルシャン
5月7日にベルギーで行われた「第2戦 スパ・フランコルシャン」優勝を目前にしていたトヨタだったが、2台のTS050 HYBRIDは共にエンジントラブルに見舞われ、レースからの脱落を余儀なくされてしまった。
この2台のリタイヤに関して村田氏は、 「オー・ルージュの壁に跳ね返された。エンジンが折れた。」とコメント。 急な登り坂を壁と表現したが、実際にトヨタにとって大きな壁となって襲い掛かったのだ。
しかし、トラブルに見舞われるまで#5号車は2位に1分以上の大差をつけて首位を快走していた。#6号車もレース序盤に見舞われたアクシデントの修復により周回遅れになりながらも3位を走行と、大幅にパフォーマンスが向上したことを証明する走りを見せていた。
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