【DESIGNER’S ROOM】スズキ「ハスラー」デザイナーインタビュー／スズキ株式会社 四輪製品・技術企画部 製品技術推進課 課長 服部 守悦(3/4)

細かいところまで気を遣ったインテリア

AO：ではインテリアに移りましょう。まずインパネですが、ここは最初からフラットなカラーパネルというプランだったのでしょうか。

H：広い面積でカラーパネルを採用することは考えていました。中身がワゴンRと共通とは思えないような、楽しくてタフなデザインにしたかったんです。センターパネルをパイプでつないだような造形も、クロスオーバーらしさの演出です。色はボディカラーに合わせて何色も検討しましたが、オレンジが女性からも高い評価を受けたので採用しました。このパネルも材着です。

AO：メーターは大きな丸型がひとつだけですが。

スポーツ用(アウトドア用)腕時計のイメージです。水平基調で横長のインパネをシンプルに見せたいという気持ちもあります。ちなみにこのメーターとエアコンのルーバーリング、スピーカーリングには、ヘッドランプと同じモチーフを入れています。国産車ではあまりやらない手法です。担当が分かれているので、僕みたいなまとめ役が提案しないと実現しないんです。でもその結果、まとまりが出たんじゃないかと自負しています。もちろんコストとの兼ね合いで「他のクルマで使えるのか？」と言われもしましたが、最終的に採用できました。

AO：インテリアの色もボディ並みに増やしたいとは思いませんでしたか。

H：内装色はクロスオーバーであることと、カラーパネルに合わせやすく、スポーティで締まるので黒にしました。カラーパネルやシートは、全面オレンジやピンクも考えました。ところが試しに作って、若い女性が集まる社内組織、通称「女子改」(女子会にあらず！)に提案したら敬遠されてしまって(笑)。その代わりパイピング(玉縁)でコーディネイトしました。パイピングはけっこう手間が掛かるんですが、女性にはそれが伝わっているようで、細かい点までに気を遣っていると好評です。

AO：荷室や収納スペースにもデザイナーが関わっているのでしょうか。

H：グローブボックスのリッドがテーブルになるのはデザイナーからの提案です。それ以外の収納関係も、デザイナーと企画部門が共同で進めていきました。たとえばリアドアポケットにはペットボトルが2本入りますが、仕切りを途中までとしたのでノートなども収まるし、アームレストを貫通して長モノも入るようにしました。荷室はシボを新開発しました。テトラポットをイメージした三角模様です。タフな感じを出しつつ傷つき対策にも配慮しました。

思わず口に出た「ここまでやっていいの？」

AO：ここまでデザインに凝っていくと、コストとのバランスを取るのが大変だったような気がするんですが。

H：ワゴンRと比べてだいたいプラス5万円という感覚で進めていきました。ベースがワゴンRという、数多く出ているクルマなので、その部分でコストを圧縮できました。その点では他車より自由度があったかもしれません。ふだんからコスト管理を叩き込まれている意識があるのか、「こんなことしてもいいんですか？」とチーフエンジニアに聞いたことがあるぐらいです。