スズキ エブリイワゴン 試乗レポート
- 筆者: 松下 宏
- カメラマン:原田淳
人気上昇中、5ナンバーの軽ワンボックスカー
軽自動車の1BOXカーは従来はライトバン仕様(4ナンバー)のみの設定だったが、平成10年からの新規格に対応して平成11年にフルモデルチェンジして登場したモデルから、各社がワゴン(5ナンバー)仕様を設定するようになった。そして今年からは新規格になって2代目のモデルが次々に登場している。
最近の軽1BOXカーの売れ行きは、新規格以降は基本的にホンダのバモスの好調を維持していたが、今年になってアトレーワゴンがフルモデルチェンジしたことでアトレーが販売を伸ばしており、今回のエブリイの登場でさらに混戦模様になると見られる。
これまでのエブリイはライトバン仕様に重点が置かれ、ワゴンに対してあまり力が入っていなかったような印象があり、そのために売れ行きが鈍かったが、今回のモデルでは本格的なワゴン作りに取り組んでいる。軽自動車のミニバンを標榜し、軽1BOXカーとして初めて電動スライドドアを採用したことなどはそれを象徴している。
先に登場したアトレーワゴンがターボ車のみの設定だったのに対し、エブリイでは自然吸気エンジンの搭載車も設定しており、幅広いバリエーションを持つ。
アルミホイールやエアロパーツなどを装飾
エブリイのボディはフロントに小さなノーズを持つ1BOXタイプで、主要モデルは標準ルーフ仕様となる。ハイルーフが設定されるのは廉価モデルのみだ。外観デザインはボクシーな感覚を強調した角張ったもの。見るからに1BOXワゴンをイメージさせるものに仕上げられている。
主要グレードには前後左右のスポイラーなどエアロパーツが装着され、さらにメッキ処理を施したのフロントグリルやフードを採用することで、ワゴンらしさを表現している。主要グレードにはアルミホイールも標準で用意される。
インテリアは後席にもしっかりしたシートを採用した十分な空間が確保されるだけでなく、ワゴンらしい快適な室内空間が作られている。さまざまな収納スペースによる使い勝手の良さも上々だ。アルミ調のパネルを採用したインテリアは、ライトバンとは違うクオリティが表現されている。
走行面については素晴らしい改善ぶり
試乗したのはPZターボスペシャルだが、エブリイワゴンに乗るときにうれしく感じるのは何といってもリヤの左右に電動スライドドアが装備されることによる乗降性の良さ。これは見逃せないポイントだ。
搭載されるターボ仕様のエンジンは、トルクの向上などの改良を受けているが、基本部分は従来のものと変わらない。ただ、大幅な改良を受けた4速ATによって滑らかな走りが実現されていて、走りのフィールは格段に良くなった。加速時にも余分なショックを感じさせることなく変速していくので、滑らかで気持ちの良い走りが得られる。
軽1BOXとはいえ車両重量は1t近いが、ターボ仕様のエンジンを搭載するモデルなら走りに不満は感じない。試乗していないので断言はできないが、自然吸気エンジンの走りはやや辛いかも知れない。
もうひとつのポイントは足回りが格段に良くなったこと。ワゴンを意識してプラットホームから新しくすると同時に、足回りの仕様を新しくすることで、操縦安定性のレベルは大きく向上した。ロードノイズが低減されたことなどもワゴンらしい部分だ。
電動スライドドアなど、使い勝手も向上
今回のエブリイワゴンの最大のウリは電動スライドドアだ。PZターボには左側だけが設定され、PZターボスペシャルでは両側に電動スライドドアが付くと同時に電動オートステップも装備される。スライドドアのクローザーはターボ車全車に標準だ。
スペシャルでは左側の電動スライドドアが開くときに、ステップが自動的に出てくるので、子供が乗り込むときや老人が降りるときにとても便利。これはユニバーサルデザインにもつながる仕様である。
軽自動車とはいえ、ワゴンとして家族が乗ることを考えたら乗降性の良さは大きなポイント。エブリイにとって当面はこれが大きなアドバンテージになるが、そうである分だけほかの車種も電動スライドドアで追従してくると思う。
快適性を高めると同時に、ワゴンらしい走りのフィールが与えられたエブリイワゴンは、軽1BOXカーの市場でこれまで以上の支持を集めそう。一家のファーストカーとして乗れるクルマだ。
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