スバル・日産の完成検査問題にみる、自動車信頼性の問題(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
印章を貸して代行押印をさせていた事実
不正に完成検査を受けた車両は前述のように25万5000台としている。日本国内で2014~2016年に登録されたスバルの登録車(小型/普通車)は、OEM車のスバルジャスティなどを含めて約38万台だから、大雑把に見ても比率は60%以上に達する。完成検査員が245名で、正規ではない習熟期間中の検査員は4名から最大でも17名という割には、リコールの台数が多い。スバルでは「登用前の検査員が検査に携わらなかった車両はリコールの対象外」としているから、習熟期間中の検査員がさまざまな検査に携わっていたことになる。
リコールに要する費用は約50億円としている。1台当たり約2万円を計上するわけだ。
記者会見では「正しい完成検査を受けていない車両を乗り続けて危険はないのか」という質問も寄せられた。これに対して吉永泰之社長は「安全といえばリコールを行う必要がなくなり、安全でないといえばさらに問題になる」としている。
客観的にいえば、完成検査を受けているから実際の走行に危険はないと判断されるが、正規の完成検査員が検査を行っていない以上、その結果を保証できない。そこでリコールを受ける。リコールを実施する日程などは未定だ。
今後スバル車を購入するユーザーに向けた対応は、従来と変わらない。10月3日に完成検査について疑義のあることが分かり、この時点で完成検査員でない人が業務に当たることを停止したからだ。
従って10月4日以降は正規の完成検査員による検査が行われ、登録や納車、新車の受注は通常どおり行われている。リコールを受けるのは、それ以前に生産されながら、3年後の初回車検を受けていない車両になる。
信頼性の問題は業界全体で取り組むべき
それにしても日産を含めて完成検査問題で驚いたのは、登用前の検査員に印章を貸して代行押印をさせていた事実だ。しかもスバルでは、運用ルールに基づいて行われていた。押印は当たり前の話だが、その名義人が契約に同意したとか、責任を持つ際に行われる。先にも述べたが、貸与による押印は状況を問わずあり得ない。
例外があるとすれば、本人が意識不明の状態にあるといった特殊なケースに限られる。スバルの場合は、文書の偽造が運用ルールに基づいて行われていたことになってしまう。明らかに善悪の判断を見失ったルールが運用されていた。
最近はスバルや日産を含めて各企業ともにコンプライアンス(法令遵守)の徹底を図っているが、印章の貸与と押印は、コンプライアンス違反の代表だろう。この件を質問した時に吉永泰之社長から聞かれた、ほかの事例を「調べる必要があるかな」という言葉も気に掛かる。
スバル側からは「スバルはマニュアルや規定がなくても、(業務を正しく)やっていける会社」というコメントも聞かれたが、それを理由に社会通年や常識、法令に背いて良いことにはならない。スバルでは「社内のさまざまな仕組みを改めて見直す」としており、常識を伴った客観的な視点から精査すべきだ。
ユーザーの立場でいえば、各メーカーの品質管理や完成検査の詳細な方法やその水準は分からない。不具合が生じてリコールが発生することもある。ユーザーとしてはメーカーをひたすらに信頼するしかない。
そして自動車はひとつ間違えば事故を誘発する商品だから、安全にかかわる信頼性は最も大切で、これが損なわれると安心して使えなくなってしまう。完成検査を含めた信頼性の問題には、業界全体で取り組むべきだ。
[Text:渡辺陽一郎]
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