ヘッドランプの進化がクルマの品格を下げた!? ドヤ顔の歴史を振り返る

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上品な表現ではないが「ドヤ顔」という言葉がある。「ドヤ、凄いやろっ!」と、自慢するような、あるいは威張るような顔立ちという意味だ。

最近はこの表現がさまざまな場面で使われ、クルマのフロントマスクも、車種によっては「ドヤ顔」と呼ばれる。

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目次[開く][閉じる]
  1. “ドヤ顔”が生まれた背景に迫る
  2. ドヤ顔のパイオニアは初代エルグランドだった!?
  3. 現在でも“反ドヤ顔”のホンダの行く末に期待したい

“ドヤ顔”が生まれた背景に迫る

どんなクルマがドヤ顔に該当するかといえば、トヨタ アルファード&ヴェルファイア、トヨタヴォクシー/ノア/エスクァイア、マイナーチェンジを受けた日産 セレナハイウェイスターなど、もともとグリルが大きい上に、メッキなどを多用して迫力を持たせたフロントマスクを持つクルマが「ドヤ顔」になるようだ。

形容の仕方はともかく、昔からクルマの顔立ちには存在感が求められた。大人しい表情では周囲のクルマに埋もれてしまい、売れ行きも伸ばせない。

ただし昔は、デザインの自由度が乏しかった。ヘッドランプはフィラメントが発光するシールドビームで、丸型の2灯式か4灯式だ。1960年代の後半には角型も登場したが、顔に例えると相当するヘッドランプがサイズの大きな丸型や角型では、「ドヤ顔」にはなりにくい。現行車種でも、スズキのジムニーやハスラー、日産 マーチ、ホンダ N-BOXの標準ボディなどは「ドヤ顔」とは呼ばないだろう。

輸入車も同様だ。メルセデス・ベンツやロールスロイスは、第二次世界大戦前から、シルバーやメッキの大きなグリルを装着していた。その強い存在感は、高級なブランドイメージにも結び付いたが、今日の「ドヤ顔」とは違う。ここでもヘッドランプのサイズと形が影響している。

ドヤ顔のパイオニアは初代エルグランドだった!?

流れが変わったのは1980年代の後半だ。1988年に世界初の4灯式プロジェクターヘッドランプを備えた日産 S13型シルビアが発売され、この後、ディスチャージヘッドランプ、LEDヘッドランプと進化を重ねていく。ヘッドランプが進化することで薄型も可能になり、多彩な表情をデザインできるようになった。そこから「ドヤ顔」も生まれている。

「ドヤ顔」を最初に採用したのは、一般的には1997年に発売された日産 初代エルグランドあたりとされるが、改めて眺めると意外に穏やかな表情をしている。初代エルグランドはボディが大きく存在感も強かったが、今の「ドヤ顔」とは違うだろう。

最初に「ドヤ顔」を意識させたのは、2002年に発売されたトヨタ 初代アルファードあたりであった。トヨタは1995年にグランビアを発売して、姉妹車のグランドハイエースなども追加したが、売れ行きを伸ばせなかった。その一方で、日産の初代エルグランドは価格の割に好調に売れた。

ドヤ顔ブームに拍車をかけた初代アルファード

そこで「打倒! エルグランド」を目標に開発されたのがトヨタの初代アルファードだから、存在感と迫力を高めることが求められた。吊り目状のヘッドランプ(当時は異型ヘッドランプと呼ばれた)と大型メッキグリルを装着することで、フロントマスクを際立たせている。

この頃から急速に「ドヤ顔」が増え始めた。2003年に発売されたホンダ3代目オデッセイは、ディスチャージヘッドランプを薄型にデザインして、ランプの部分にブルーメタリックのカラーリングを施した。切れ長の目が前方を睨むような精悍な印象だ。

2004年には3代目のアウディ A6が日本国内で発売され、これが大型のシングルフレームグリルを備えていた。今改めて眺めると普通の顔立ちだが、それ以前のアウディは穏やかな表情に特徴があったから、豹変ぶりに驚かされた。このデザインも、その後のフロントマスクの発展に大きな影響を与えている。

ドヤ顔の流れを確率させた初代ヴェルファイア

軽自動車でも2007年にスズキ 3代目ワゴンRがスティングレーを追加して、ディスチャージヘッドランプを薄型に配置した。

2008年にはアルファードの姉妹車としてヴェルファイアが加わり、これもプロジェクタータイプのディスチャージヘッドランプを薄型にして、ランプをパネルで上下に二分割したような形状に特徴があった。フロントグリルはミニバンの上下方向の厚みを生かして大きくデザインされ、明確な「ドヤ顔」を完成させている。

初代ヴェルファイアは2009年の月販平均が4000台を超えるなど好調に売れたから、ミニバンや軽自動車のエアロ仕様を中心に、薄型ヘッドランプと厚みのあるメッキグリルがトレンドになっていく。

現在でも“反ドヤ顔”のホンダの行く末に期待したい

こうなるとフロントマスクを穏やかに仕上げれば、販売合戦で負けてしまう。例えばホンダ ステップワゴンは、フルモデルチェンジする度に、エアロパーツを備えたスパーダまで含めて比較的大人しい(あるいは個性的な)表情で登場する。開発者に理由を尋ねると「派手なほかの車種とは異なる表現したいから」と返答する。しかし売れ行きは低迷して、結局はマイナーチェンジで「ドヤ顔」に改めるのだ。

こうなるともはや「ドヤ顔」からは抜けられない。街中の雰囲気も、トゲトゲしい苛立ったものになっていくばかりだ。ホンダ フリードは先ごろのマイナーチェンジで、標準ボディの顔立ちを少し穏やかな方向へ改めた。開発者は「派手なメッキグリルとエアロパーツはもはや見飽きた」という。ここまで「ドヤ顔」に反発すると、ホンダを応援したくなる。

[筆者:渡辺 陽一郎]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

監修トクダ トオル (MOTA編集長)

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