ニュルブルクリンクって何がスゴいの?|自動車メーカーがニュルを使う理由とは(2/2)
- 筆者: 山本 シンヤ
安心して走るための性能のすべてが丸裸に
そんなニュルではクルマの何が解るのか?
それは走る/曲がる/止まると言った“基本性能”である。ニュルでは上下左右のみならず三次元的なGが連続して掛かるため、ボディの動的な剛性が問われる。ステアリングは正確なライントレース性が求められるし、サスペンションも無駄な姿勢変化を抑えつつ、タイヤを路面から離さないしなやかさとストロークが必要となる。
ブレーキも単純な性能能力だけではダメで、踏力コントロールや緻密なABS制御も重要となる。更には、ステアリング/シートの性能やメーターやスイッチ類の見やすさや使いやすさ、更には視界性能に至るまで、「安心して走る」ための性能の全てが、過酷なコースを通じて丸裸になってしまうのだ。つまり、一つの性能が良ければ何とかなるのではなく、クルマの本質やトータルバランスが問われるコースなのだ。
中には、「日本のユーザーはそのクルマでニュルは走らない。そんな性能が本当に必要なの?」と言う人もいる。しかし過酷な場所で誰もが安心して走れるクルマ作りをすること=日常域での楽しさや気持ち良さ、そしてクルマへの信頼や安全に繋がる……と言うわけだ。
生きた道を走らなければ”いいクルマ”にはならない
ニュルでは春から秋の平日に開発テストのための「インダストリアルプール」と呼ばれるメーカー占有枠が設けられ、複数のメーカーが一堂にテストを行なう。当然、お互い機密があるのでジロジロ見ることはないのだが、エンジニアなら何をやっているのかが一目瞭然。更にコース上で発売前にも関わらず相対比較もできてしまう。そう、ニュルでは「他のメーカーが何を考えてテストをしているのか?」、「他メーカーの本気度やこだわり」、「自分たちの立ち位置」までも見えてしまう。
恐らく現在の技術をフルに活用すれば、クルマはデータ/シミュレーションのみで開発することも可能である。しかし、リアルワールドで生きた道を走らせなければ“いいクルマ”にはならない事を自動車メーカーはよく解っている。だから「ニュル詣」を続けるのだ。
[筆者:山本 シンヤ]
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