TRDチューンのGRスープラ&無限が煮詰めたシビック タイプRを中谷明彦が斬る!|ワークスチューニンググループ合同試乗会 後編
- 筆者: 中谷 明彦
- カメラマン:大西 靖
メーカー系ワークスチューナーが手掛けるチューニングカーの一斉試乗会レポート。前編の「NISMO」「STI」に続き、後編ではGRスープラからアルファード/ヴェルファイアなどのトヨタ車、さらには救急車などの特装車までを手掛ける「TRD」。それに加え、ホンダ車のチューンアップやレース用エンジンを手掛ける「無限」の2メーカーを紹介。果たして、中谷明彦の評価はいかに?
GRスープラをTRD流にアレンジ!
トヨタ自動車系ワークスチューンはTRD(トヨタレーシングデヴェロップメント)が主軸だ。今回は登場から間もなくも人気が高いSUVのトヨタ RAV4をマッド系のドレスアップしたモデルと、プリウスの「アグレッシブスタイル」「エアロダイナミクススタイル」という2つのスタイリングアイテムを展示していた。
だが一番気になるのは、やはりトヨタ GRスープラだろう。独・BMWと共同開発しハイパワー直6ターボエンジンを搭載するFRのスープラをTRDがどうチューニングしているのか大いに気になるところだ。
空力特性アップ&見た目もよりレーシーに
試乗用に用意されたのはイエローが鮮やかなトヨタ GRスープラに各種パーツを纏わせた、SZ-RとRZの2グレードだ。両車に共通しているのはエアロパーツをメインに装着し、空力特性を高めていること。
まずフロントにはチンスポイラーがバンパー下部に装着され、ダウンフォースを強める効果と視覚的な低重心効果を狙っている。ボディサイドはスカート状のエアロパーツで武装され、前後ホイールハウス手前でせり上がり、“レーシー”な雰囲気を演出している。
またドアパネルの特徴的なキャラクターラインをさらに際立たせながら、空気の流れをスムーズにする“サイドドアガーニッシュ”が強烈なアクセントを効かせているのだ。
リヤまわりはホイールハウス後方にサイドスポイラーを備え、トランク後端にもスポイラーを装着。これらの相乗効果で空力性能が高まり高速直進性、旋回性能も向上。また19インチの鍛造アルミホイールが専用開発され、足もとを引き締めつつハンドリングの正確性にも貢献させている。
低速域では2Lターボのほうが早い?
残念なのは今回サーキット内の限界走行が試せなかったことだ。エンジンやブレーキなどはノーマルのままなので一般道領域でのインプレッションを求められた。
もともとスープラはBMW製の上質な乗り心地で、一般道ではジェントルな走行フィールだが、短いホイールベースを活かしてタイトターンでは身のこなしが軽快だ。それがエアロ効果を得たうえで、ハイスピード領域でいかに接地性を高められるか興味深かったが、そのインプレッションは別の機会を探ることにしよう。
上級グレードのRZはハイパワーの3L直6ターボを搭載するためフロント重量が大きい。一方SZ-Rグレードは2L直4ターボエンジンを搭載するため、フロント重量が軽い。低速域での運動性能はともすると軽いSZ-Rの方が勝ってしまう。
ヤマハが開発したサスで接地性と安心感を向上!
そこでTRDはYAMAHAが開発した新技術である「TRAS(Through Rod Advanced ショックアブソーバー)」を採用したサスペンションキットを開発。今回その試作品をパフォーマンスダンパーと共にRZに装着させいる。このTRASは従来ダンパーが押し込むと反力で伸び側に戻ってくるのに対し、引っ張ると反力で縮み側に戻る特殊な構造となっていて、路面の突き上げをいなしながらロードホールディングも高める効果を狙っている。
実際連続してマンホールの凹凸がある路面を通過する際にクルマが跳ねず、常にタイヤの接地感が正確に得られていることを確認した。タイヤが接地していればステアリング操作が反映され、軽量なSZ-Rと同等に回頭レスポンスが得られるというわけだ。RZ 専用というわけではないようだが、個別にチューニングしてTRDチューンによるGRスープラ全体の走りに質を高めてくれるのは間違いないだろう。
シビック タイプRがニュルのラップタイムを更に更新?
続いてホンダ車をチューニングする「無限」。無限はドレスアップをテーマにエアロ系パーツを豊富にラインアップし、インサイト、CR-V、N-WGNとジャンルやクラスを問わず幅広いカテゴリーに対応させている。
その中で今回試乗したのはシビック タイプRだ。先代が独・ニュルブルクリンクサーキットでFF(フロントエンジン前輪駆動車)世界最速ラップタイムを刻んだのは記憶に新しいが、現行モデルはさらに速く安定性も高まっているという。
弱点を改善! 激速マシンにレベルアップ!?
早速コースインする。先代はタイヤが冷えている間はハイパワーFFゆえトルクステアに注意しなければならなかったが、現行はいきなりパワーを掛けていっても直進性を大きく乱さない。若干駆動スリップを引き起こすことで前輪は早くウォームアップし、最初のコーナーはオーバーステアになるほどだ。
だが、このリヤタイヤのスキッドで後輪も暖まり、次のコーナーでは安定した旋回姿勢に持ち込めた。こうなるとシビック・タイプRは鬼のように速い。もてぎ北コースは最高速度が低いため空力効果は薄いハズだが、路面に吸い付くようにコーナリングし、パワーも有効にトラクションとして伝えられているのが分かる。
新登場のクイックシフターは中谷明彦も絶賛
今回採用されたクイックシフターもシフトストロークをショートストローク化させ、煩雑な操作を素早くこなさせてくれるのでミニサーキットでは必須のアイテムになる。空力効果による安定感の高さも奏功し、ハイスピードで連続アタックが可能だった。シビック・タイプRを開発した研究所のエンジニアが無限パーツ開発にも関っているとあって、まさにメーカー直系のワークスチューニンモデルとなっているのである。
【筆者:中谷 明彦/写真:大西 靖】
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