ポルシェ ケイマンS 海外試乗レポート(3/3)

  • 筆者: 河村 康彦
  • カメラマン:ポルシェ・ジャパン
ポルシェ ケイマンS 海外試乗レポート
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路面の凹凸をなめるように吸収するフラット感の際立つ足回り

ポルシェの国際試乗会の通例通り(?)、多数が用意をされたテスト車の中には様々なオプション・アイテムを加えたモデルが少なくなかった。

シートのデザインやオーディオのバリエーションは別として、“走り"に影響を及ぼすオプションとしては19インチのシューズや“PASM"(電子制御可変減衰力ダンパー)、そして“PCCB"(セラミック・コンポジット・ブレーキ)などが挙げられる。そこでここからはそれらの印象も織り交ぜるカタチで走りの報告を進めて行くことにしよう。

まずはオリジナルの18インチ・シューズに“PASM"と“PCCB"を加えた仕様でスタート。すると、「全般にボクスターSよりも足回りはややかためのチューニング」とされるにもかかわらず、むしろよりしなやかで乗り心地が抜群に優れているのが何よりも印象に残る事になった。これは「『曲げ』がボクスターの2倍以上、『ねじり』もおよそ2.5倍で911クーペに匹敵」という高いボディ剛性の威力によるところが大きいはず。路面凹凸を舐めるように吸収して際立つフラット感を演じるのは、見事という他にない。

こうした仕様の中から“PASM"がリスト落ちをすると高速域での印象はほぼ変わらない一方で、低速域での上下Gが明確に強くなる。ケイマンSの最高速はMT仕様で275km/h。こうして、200km/hを大幅に超える領域での安定性までを確実にカバーするとなると、さしものポルシェの技術力を持ってしてもコンベンショナルなサスペンション・システムではやはり低速側の乗り味はある程度犠牲にならざるを得ない、という事なのであろう。

一方フロントは235、リアは265と幅のレシオでは標準の18インチの場合と同様の19インチ・シューズを履いた場合も、特に50km/h程度までの低速域で路面凹凸を拾った場合のショック吸収性が「やや物足りない」という印象の乗り味に。要は、個人的な結論を言えば「標準(18インチ)シューズの“PASM"付き」が最も好印象を受けたという事。

理屈上では“PCCB"もばね下重量の軽減には寄与をするわけだが、こちらの難点はやはりその極立った高価さ。そもそも、ポルシェ車の例に漏れずオリジナル仕様のままでもブレーキのフィーリングは大変に優れているのだから、こちらの選択は「お好みによって」程度の推奨度(?)なる。

こうして、その乗り味についてはオプション・アイテムによって多少の違いを生じるケイマンSのフットワークだが、そのハンドリングの感覚はいずれの仕様でも「自在度バツグンで極めて好印象」というものだった。路面を問わず4輪の接地感は常に濃密である一方、好むとあればアクセルワークによって積極的なコーナリング・フォームを生み出して行ける後輪駆動車らしい自在度の高さも残している。

ところで、大雑把には「ボクスターS用の3.2Lユニットに、911カレラ用のシリンダーヘッドを組み合わせた」と言える新しい3.4Lの心臓が生み出す動力性能も、一級リアルスポーツカーのそれとして満足すべきものだった。兄貴分である911シリーズに遠慮をして(?)か、最高出力が300psをちょっと欠く値にとどまった点はちょっぴりフラストレーションの残るところ。

が、それでもMT仕様にして0→100km/hが5.4秒という絶対加速力はもちろん文句ナシのレベルだし、5,200rpm付近からの魅惑的な咆哮も「お伝え出来ないのがザンネン!」という類のもの。

確かに、MT仕様で777万円という価格は絶対的にはとても安いなどとは言えないもの。が、そんなプライスタグが提げられてさえも「ぜったい欲しい!!」と思いを馳せる人は、ぼくを含めてきっと世界に少なくないはずだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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