ポルシェ 911カレラ4&カレラ4S 海外試乗レポート(2/3)

  • 筆者: 河村 康彦
  • カメラマン:ポルシェ・ジャパン
ポルシェ 911カレラ4&カレラ4S 海外試乗レポート
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クーペモデル以上のグラマラスなスタイリング

遠目には、そろそろ目にも馴染んできた先発のカレラ/カレラSクーペと同様のエクステリアの持ち主とも感じられるカレラ4と4S。が、傍に近づくにつれてこの両モデルが、後輪駆動のクーペ・モデル以上にグラマラスで躍動感に溢れたスタイリングの持ち主であるのに気付く事になる。実は4WDモデルは、後輪駆動モデルとは異なるボディを採用。具体的にはリアのフェンダー部分の張り出しが左右に22mmずつ広いのがカレラ4/4Sのボディ。これは、現行(996型)のターボのボディに対しても22mmワイドという値。現地表記では1,852mmというのが新しいカレラ4/4Sに共通の全幅データとなっている。

こうして、新しいカレラ4/4Sがよりファットなリア・フェンダー周りの造形を採用した理由はほかでもない。「リアによりワイドなタイヤを装着するため」というのがその回答だ。

フロントが235/40の18インチ、もしくは235/35の19インチというのは後輪駆動モデルの場合と同様。が、リアには18インチの場合で295/35、19インチの場合には305/30と、後輪駆動モデルの265/40もしくは295/30に対してよりワイドなタイヤを履くのが4WDモデルだ。

こうした全幅の拡大(=前面投影面積の増大)によって空気抵抗の絶対値がある程度増す事になるのはやむを得ないが、抵抗係数(Cd値)そのものはカレラ4が0.30、カレラ4Sが0.29とわずかに0.01ずつの増加に留まるもの。ちなみに、より太いリア・タイヤを履くカレラ4Sの方が小さい値であるのは「4Sは車高が10mm低い“PASM”(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメントシステム)を標準で装備するため」というのがその理由とされる。

4WDシステムには従来通りのビスカス・カップリング方式を踏襲。歴代911カレラ4は、初代モデルである964型にのみ遊星歯車を用いたメカニカルなセンターデフを採用したものの、それに続く993型以降はより簡便なビスカス方式を採用する。「エンジントルクの5~40%が常時前輪に加わるフルタイム式」というのが今回もポルシェ側の説明。ただし、前述のような新サイズのタイヤを採用した事でフロントアクスルのファイナルレシオを設定したのが新しい。これは、ビスカス・カップリングがその両軸に加わる回転数の差によってトルクの伝達を行うメカニズムであるという特性を踏まえ、前後タイヤの周長の違いを補正するための策というわけだ。

ところで今回の4WDモデルには、先にデビューの後輪駆動モデルに対して早くも見えない部分でのリファインの手が下される事にもなっている。拡張機能としてブレーキの動作に新たなロジックを加えた“PSM”(ポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム)がそれだ。

新しい機能の一点は、ドライバーの踏力が不十分である際に油圧ポンプがそれを補い、ABSの制御範囲内で最適な制動力を発揮するといういわゆる“ブレーキ・アシスト”のロジック。そしてもう一点は、ドライバーがアクセルペダルの踏力を急激に緩めた場合、それを急制動を必要とする前兆と判断したシステムがあらかじめキャリパーへとブレーキ液を送り込み、パッドとディスク間のギャップをゼロにした上でブレーキ圧の高まりに備えるという“プレ・チャージ”というロジックだ。このスタンバイ機能によって、実際の減速開始までのタイムラグが50~80ミリセカンド短縮されると言う。もちろん、“ブレーキ・アシスト”も“プレ・チャージ”もドライビング・フィールを妨げるような事のないチューニングが施されているのは言うまでもない。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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