ポルシェ 911GT2 海外試乗レポート(1/3)
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:ポルシェ・ジャパン株式会社
他の911シリーズとは“別格”といっても過言ではないデータ値
今の時代、排気ガスをクリーン化し、燃費を向上させてCO2を削減させる事も、もちろん重要なクルマの“性能”の一部だろう。が、少なくとも自動車が人々のパーソナルな移動手段として使う事を許されている間は、そこに「スピードのあくなき探究」という一項目が加わる事も間違いないはずだ。そんな人間が生まれもった欲望に応えるかのようなモデルがポルシェから発売された。2007年秋のフランクフルト・モーターショーでお披露目をされた『911 GT2』がそれである。
水平対向デザインの6気筒エンジンを、後方に向かうにしたがってまるで滑り台のような下降ラインを描く特徴的なルーフラインを備えるボディの後端に低くマウントする・・・という40余年にも及ぶポルシェ911シリーズならではのパッケージングを踏襲したこのモデルは、しかし出力でも最高速度でも価格でも、もはや「特別な911」と呼ぶに相応しい1台。何故なら500psを遥かにオーバーする最高出力も、330km/hに届かんとする最高速度も、2,600万円超というプライスも、他の911シリーズとはまるで“別格”と称しても良さそうなほどにそれぞれ「とびきり」のデータであるからだ。
ポルシェのいう「ターボ」の意味
現存する911シリーズの中にも、際立ったスピード性能の持ち主はすでに存在していた。例えばそれは『ターボ』であり、例えばそれは『GT3』。いずれも300km/hを超える最高速を誇り、加速もGT2に肉薄をするデータを発表。常識的に考えれば「同じようなポテンシャルの持ち主をシリーズ内に3種類も揃えてどうするのか?」という事になりそうだが、実はそこにこそ昨今のポルシェが得意とする綿密なるマーケティングの戦略が秘められている。
高度なスピード性能と共にシリーズきってのラグジュアリー性もアピールし、「誰もが使える超高性能」を目指すのが『ターボ』。それは、4WDシャシーを備えると同時に“ティプトロニック”(=トルコンAT)仕様もラインナップに加えている点に端的に表現をされている。このモデルは「誰にとっても最高の911」というコンセプトで開発された1台。ポルシェ社にとって“最高の911”とは、常に『ターボ』でなければならないのだ。
一方の『GT3』はと言えばこれはもう明らかに、ポルシェ社きっての高回転・高出力テクノロジーを用いて開発されたエンジンにこそ、そのフォーカスが最も色濃く当てられるべきモデル。価格のうちの半分はパワーパックのために費やされた・・・といったデータが存在するわけではもちろんないが、しかし仮にそう言われても思わず納得をしてしまいそうな官能的パワーフィールをその心臓は味わわせてくれる。
一方、そんな“先輩”が存在する所にリリースされた『GT2』ならではの価値はと言えば、これはそんな2モデルをも確実に凌ぐ絶対的なさらなるスピード性能の高さと言えるだろう。すなわち、このモデルが狙った明確なるターゲットは「911史上、最強・最速の1台」というタイトル。そして、実際に姿を現した新しいGT2は見事にそうしたフレーズを手中に収めている。あとわずか1km/hで“スーパーカー”であるカレラGTと同数値となる329km/hという最高速データには、このモデルのそんなキャラクターが無言の内に語られているのだ。
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