ユーザーから見た自動車メーカーの通信簿/日産編

ユーザーから見た自動車メーカーの通信簿/日産編
日産自動車株式会社 日産・三菱 提携に関する共同記者会見にて 日産自動車株式会社 代表取締役会長 カルロス ゴーン氏 日産 デイズ 日産 ジューク 日産 エクストレイル 日産 GT-R 日産 セレナ 日産 エルグランド 日産 ノート e-POWER プロパイロット作動中の日産 セレナ 画像ギャラリーはこちら
日産・三菱 提携に関する共同記者会見にて

かつての日産は、トヨタとライバル争いを展開する自動車メーカーであった。

だが、1990年代に入ると日産の業績が目立って下がり始め、1999年にはルノーと業務提携を締結。カルロス・ゴーン氏が日産の最高執行責任者に就任して、業績を立て直している。

そして2016年、日産は三菱とも提携し、3メーカーの協力体制が築かれた。

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商品編

日産 GT-R
日産 デイズ日産 エクストレイル

・商品の充実度は日本の市場に合っているか

日産の品ぞろえは幅広い。三菱と共同開発した軽自動車のデイズやデイズルークス、コンパクトカーではマーチやキューブ、SUVならジュークとエクストレイル、さらに高性能スポーツカーのGT-R、電気自動車のリーフなどを豊富に用意している。

幅広いユーザーニーズに応えられる品ぞろえがある。

[ 評価:優 ]

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日産 セレナ日産 エルグランド

・新型車のラインナップと今後の動向はどうか

車種数は多いが、好調に売れているのはセレナ/エクストレイル/ノート/デイズ/デイズルークス程度だ。この5車種で今の国内で販売される日産車の73%を占める(2016年2月)。

エルグランド、フーガ、ラフェスタハイウェイスターなどは大幅に落ち込んだ。設計の古い車種も目立ち、キューブは発売後8年、フーガは7年、マーチは6年以上を経過する。目立ったテコ入れをしておらず、商品力が下がった。また、人気の高かったティーダ、デュアリスなどは既に廃止された。

2017年に日本国内で発売が予想される新型車も、現時点ではリーフのモデルチェンジくらい。車種のラインナップは整っているが、魅力のある売れ筋モデルは少ない。

[ 評価:良 ]

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日産 ノート e-POWER

・環境&燃費性能の先進性

ハイブリッド車はエクストレイル、販売は低調ながらフーガやスカイラインにも設定されている。

これにノートe-POWERが加わった。電気自動車のリーフも選べる。セレナやノートなどの売れ筋の5車種は、環境&燃費性能にも配慮されている。

その一方でティアナ、フーガ、エルグランドなどが搭載する排気量が2リッターを超えるエンジンには、アイドリングストップの非装着が目立つ。車種によるバラツキが大きい。

[ 評価:良 ]

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・安全装備の充実度

軽自動車のデイズとデイズルークスの緊急自動ブレーキは、時速30kmを上限に作動する赤外線レーザー方式だ。市街地の追突防止には役立つが、歩行者の検知機能はない。

セレナ、エクストレイル、ノートなどの売れ筋車種は、単眼カメラ方式を採用する。作動速度の上限は車両に対しては時速80km、歩行者は時速60kmが上限になる。

スカイラインやフーガはミリ波レーダーを使って2台先の車両を検知。早期に緊急自動ブレーキを作動させ、カメラによって車線逸脱の警報なども行うが、歩行者には対応していない。機能が中途半端で国内向けの安全装備とはいえない。

またキューブ、マーチ、ラフェスタハイウェイスターなどは、緊急自動ブレーキを用意していない。

プロパイロット作動中の日産 セレナ

セレナのプロパイロットは、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールに加えてハンドルの操舵支援も行うが、カーブに差し掛かって操舵角が大きくなると制御を中断する。

日産では「自動運転技術」と呼んでいるが、一般的な認識の自動運転とは制御がかなり異なる。そしてプロパイロットは採用したものの、緊急自動ブレーキを含めた安全機能は基本的に先代型から進化していない。

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[ 評価:良 ]

・価格は割安か

セレナやノートの価格は、ライバル車の動向も考慮して相応に割安になっている。

[ 評価:良 ]

販売編

・ディーラー網の充実度

もともと日産は販売規模が大きく、全国に2100店舗を展開している。以前は系列化があったが、今では実質的に撤廃された。販売会社の屋号には今でもプリンスなどの系列名が残るが、取り扱い車種の区分はない。

そして全店が全車を扱うようになり、高価格車の売れ行きが下がってきた。売れ筋が安いクルマに移るのは当然の成り行きだ。軽自動車を採用してからは、低価格化が一層顕著になった。店舗数はトヨタの半数以下だが、それでも充実した部類に入る。

[ 評価:優 ]

・ユーザーサービスのメリット

決算期などには年率1.9%の低金利ローンを実施することが多い。リーフには残価設定ローンに以前から0.1%を適用してきた。また販売会社によっては、独自の個人向けカーリースを実施している。

ユーザーから見た日産の結論

・メリット

電気自動車のリーフ、軽自動車のデイズ&ルークス、スーパースポーツカーのGT-Rまで、さまざまな性格の車種をそろえるのが日産の特徴だ。

ノートe-POWERも加わり、売れ筋車種の燃費性能が向上してきた。

・注意点

一番の問題点は新型車の発売が滞っていること。2014年の初頭にデイズルークスとティアナを発売した後、2016年8月にセレナをフルモデルチェンジするまで、約2年半にわたり日産から新型車が投入されなかった。

キューブやマーチなど、以前は多くのユーザーに愛用された車種が、ほとんど改良を受けずに今では売れ行きを落としている。

日産の業績は回復したが、それは海外の話で、日本国内では沈んだ状態が続く。直近はセレナの一新とノートe-POWERの追加で少し持ち直したが、2016年の国内販売順位は、トヨタ/ホンダ/スズキ/ダイハツに次ぐ5位であった。

日本の市場環境を考えれば、キューブやジュークのフルモデルチェンジ、コンパクトミニバンの投入などが期待される。これが無理なら、セレナやノートにSUV風のクロスオーバーモデルを設定するなど、低予算で開発可能な車種の追加が必要だ。

このままでは国内の販売会社が疲弊して店舗の閉鎖などが進み、日産車のユーザーに迷惑を掛けてしまう。もう少し国内市場に目を向けて、元気な日産に戻って欲しい。今の自動車メーカーではグローバル化がトレンドだが、それに反して国内に力を入れてこそ、「やっちゃえ日産」が共感を呼ぶと思う。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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