ユーザーから見た自動車メーカーの通信簿/日産編
- 筆者: 渡辺 陽一郎
かつての日産は、トヨタとライバル争いを展開する自動車メーカーであった。
だが、1990年代に入ると日産の業績が目立って下がり始め、1999年にはルノーと業務提携を締結。カルロス・ゴーン氏が日産の最高執行責任者に就任して、業績を立て直している。
そして2016年、日産は三菱とも提携し、3メーカーの協力体制が築かれた。
[関連記事] 日産17年ぶりトップ交代、ゴーン社長退任へ…三菱自再建に注力か[2017年2月23日/自動車ニュース]
[関連記事] 日産と三菱自、戦略的アライアンスを締結 ~日産が三菱自の筆頭株主に~ [2016年5月12日/自動車ニュース]
商品編
・商品の充実度は日本の市場に合っているか
日産の品ぞろえは幅広い。三菱と共同開発した軽自動車のデイズやデイズルークス、コンパクトカーではマーチやキューブ、SUVならジュークとエクストレイル、さらに高性能スポーツカーのGT-R、電気自動車のリーフなどを豊富に用意している。
幅広いユーザーニーズに応えられる品ぞろえがある。
[ 評価:優 ]
・新型車のラインナップと今後の動向はどうか
車種数は多いが、好調に売れているのはセレナ/エクストレイル/ノート/デイズ/デイズルークス程度だ。この5車種で今の国内で販売される日産車の73%を占める(2016年2月)。
エルグランド、フーガ、ラフェスタハイウェイスターなどは大幅に落ち込んだ。設計の古い車種も目立ち、キューブは発売後8年、フーガは7年、マーチは6年以上を経過する。目立ったテコ入れをしておらず、商品力が下がった。また、人気の高かったティーダ、デュアリスなどは既に廃止された。
2017年に日本国内で発売が予想される新型車も、現時点ではリーフのモデルチェンジくらい。車種のラインナップは整っているが、魅力のある売れ筋モデルは少ない。
[ 評価:良 ]
・環境&燃費性能の先進性
ハイブリッド車はエクストレイル、販売は低調ながらフーガやスカイラインにも設定されている。
これにノートe-POWERが加わった。電気自動車のリーフも選べる。セレナやノートなどの売れ筋の5車種は、環境&燃費性能にも配慮されている。
その一方でティアナ、フーガ、エルグランドなどが搭載する排気量が2リッターを超えるエンジンには、アイドリングストップの非装着が目立つ。車種によるバラツキが大きい。
[ 評価:良 ]
・安全装備の充実度
軽自動車のデイズとデイズルークスの緊急自動ブレーキは、時速30kmを上限に作動する赤外線レーザー方式だ。市街地の追突防止には役立つが、歩行者の検知機能はない。
セレナ、エクストレイル、ノートなどの売れ筋車種は、単眼カメラ方式を採用する。作動速度の上限は車両に対しては時速80km、歩行者は時速60kmが上限になる。
スカイラインやフーガはミリ波レーダーを使って2台先の車両を検知。早期に緊急自動ブレーキを作動させ、カメラによって車線逸脱の警報なども行うが、歩行者には対応していない。機能が中途半端で国内向けの安全装備とはいえない。
またキューブ、マーチ、ラフェスタハイウェイスターなどは、緊急自動ブレーキを用意していない。
セレナのプロパイロットは、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールに加えてハンドルの操舵支援も行うが、カーブに差し掛かって操舵角が大きくなると制御を中断する。
日産では「自動運転技術」と呼んでいるが、一般的な認識の自動運転とは制御がかなり異なる。そしてプロパイロットは採用したものの、緊急自動ブレーキを含めた安全機能は基本的に先代型から進化していない。
[関連記事] 日産の次期型セレナ採用「プロパイロット」は自動運転か、サポートか?評価が割れる理由
[ 評価:良 ]
・価格は割安か
セレナやノートの価格は、ライバル車の動向も考慮して相応に割安になっている。
[ 評価:良 ]
販売編
・ディーラー網の充実度
もともと日産は販売規模が大きく、全国に2100店舗を展開している。以前は系列化があったが、今では実質的に撤廃された。販売会社の屋号には今でもプリンスなどの系列名が残るが、取り扱い車種の区分はない。
そして全店が全車を扱うようになり、高価格車の売れ行きが下がってきた。売れ筋が安いクルマに移るのは当然の成り行きだ。軽自動車を採用してからは、低価格化が一層顕著になった。店舗数はトヨタの半数以下だが、それでも充実した部類に入る。
[ 評価:優 ]
・ユーザーサービスのメリット
決算期などには年率1.9%の低金利ローンを実施することが多い。リーフには残価設定ローンに以前から0.1%を適用してきた。また販売会社によっては、独自の個人向けカーリースを実施している。
ユーザーから見た日産の結論
・メリット
電気自動車のリーフ、軽自動車のデイズ&ルークス、スーパースポーツカーのGT-Rまで、さまざまな性格の車種をそろえるのが日産の特徴だ。
ノートe-POWERも加わり、売れ筋車種の燃費性能が向上してきた。
・注意点
一番の問題点は新型車の発売が滞っていること。2014年の初頭にデイズルークスとティアナを発売した後、2016年8月にセレナをフルモデルチェンジするまで、約2年半にわたり日産から新型車が投入されなかった。
キューブやマーチなど、以前は多くのユーザーに愛用された車種が、ほとんど改良を受けずに今では売れ行きを落としている。
日産の業績は回復したが、それは海外の話で、日本国内では沈んだ状態が続く。直近はセレナの一新とノートe-POWERの追加で少し持ち直したが、2016年の国内販売順位は、トヨタ/ホンダ/スズキ/ダイハツに次ぐ5位であった。
日本の市場環境を考えれば、キューブやジュークのフルモデルチェンジ、コンパクトミニバンの投入などが期待される。これが無理なら、セレナやノートにSUV風のクロスオーバーモデルを設定するなど、低予算で開発可能な車種の追加が必要だ。
このままでは国内の販売会社が疲弊して店舗の閉鎖などが進み、日産車のユーザーに迷惑を掛けてしまう。もう少し国内市場に目を向けて、元気な日産に戻って欲しい。今の自動車メーカーではグローバル化がトレンドだが、それに反して国内に力を入れてこそ、「やっちゃえ日産」が共感を呼ぶと思う。
愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!
-
一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?
これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。
-
一括査定は本当に高く売れるの?
これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は最短3時間後、最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。